特集:いよいよ始まるW杯サッカー

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宮城スタジアム

試合日程
メキシコvsエクアドル   6月09日(日)15:30
スウェーデンvsアルゼンチン 6月12日(水)15:30
決勝トーナメント1回戦
H組1位vsC組2位 6月18日(火)15:30
宮城スタジアム
伊達正宗の兜の飾りをイメージさせる三日月状の屋根

宮城MAP

開かれたスタジアムを目指して
 宮城スタジアムは,一昨年9月に開かれたみやぎ国体での使用を考え,他のW杯新設スタジアムに先駆けて完成した。仙台市の中心部から北東10km。緑豊かな丘陵地に宮城県総合運動公園が広がっている。スタジアムは,この公園の中にあり,地域のスポーツ,レクリエーションの拠点として位置づけられている。146haの敷地には,屋内プールや体育館,テニスコートなどの競技施設やレクリエーション施設,宿泊施設が配置されており,スタジアムはひときわ目立つシンボル的な存在となっている。
 スタジアム建設にあたり,設計コンペでは公園の西側から東側にかけて緩やかな勾配となっている地形を活かした案が採用された。デザインコンセプトは「開かれた競技場」。バックスタンドを丘の上に載せることで,屋根を丘の延長と捉え,また,メインスタンドの屋根に大きな弧を描かせ丘の地形に呼応させた。これにより本来,閉鎖性が必要なスタジアムに開放性も同時に持たせている。

3,000tの力で引かれているメインスタンド屋根
 当初設計コンペでは,屋根はメインスタンド上のみに架ける予定であった。その後,W杯での使用を視野に入れ,屋根の大きさをW杯の規定にもとづく「観客席の3分の2以上」まで増やすことが計画された。バックスタンドにも屋根を設け,メインスタンドの屋根自体の大きさも見直された。完成したメインスタンド屋根は,スタンド最上階から地盤レベルまで大きく弓なりに曲線を描く斬新なフォルムが印象的となった。そして,三日月状となったこの屋根は,上空から見下ろすと仙台藩祖,伊達正宗の兜の飾りをイメージさせるものと話題を集めている。一方,バックスタンド屋根はコンパクトにまとめられた。
 メインスタンドの屋根の長さは360m。この骨組みとなる鉄骨トラスは2,500tもある。この弓なりとなった屋根は,スタンド上部と細い鉄骨柱で軽く結ばれただけで,一見するとそのまま広がって潰れてしまいそうだ。ところが地中にはコンクリート製の巨大な梁(プレストレストタイビーム)が埋め込まれており,屋根の両端を3,000tの力でスタンド中央に引っ張り,形状を安定させている。このプレストレストタイビームは,ちょうど弓を支える弦と同じ役割をしている。
 一方,バックスタンドはパイプトラスによる片持ち梁で,片方を根元部分でしっかりと固定し,中央部では最大40mもの張り出しが可能となった。

打ち放しコンクリートでできたスタジアム

 最近のスタジアム工事では,スタンドをできる限り容易に構築するためにPca化を積極的に進めている。この工法は,基本的にはプレハブのコンクリート部材を積み上げていくことで,工期短縮や工事の安全性などを図ることができる。しかし,宮城スタジアムでは,打ち放しコンクリートの荒々しく,シンプルで重量感のある肌合いを前面に出すため,ほとんどのコンクリートを現場打ちとした。スタンドを支える柱など意匠的にも趣向を凝らしており,複雑な構造となった外周部の柱群は見事なフォルムを演出している。これらの構築には,3年という工事期間の大半を,10万m3もの膨大なコンクリート工事に費やして成し得たものである。

アバットのコンクリート打設 コンクリート製のアバット
アバットのコンクリート打設   メインスタンド屋根とプレストレストタイビームをつなぐコンクリート製のアバット

メインスタンド大屋根
メインスタンド大屋根は,客席を包みながら大きく弓状にカーブしている。屋根両端をスクリーン奥のアバットで固定し, 3,000tの力で緊張している

スタンド外周の柱
斜めとなったスタンド外周の柱も角度が少しずつ変わっており,同じデザインがほとんどない。

工事概要
場所:宮城県宮城郡利府町
発注者:宮城県
設計:針生・阿部共同アトリエ
建築面積:36,684m2
延べ床面積:57,564m2
収容人数:49,133人
工期:1996年10月〜2000年5月(東北支店JV施工)



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