特集:電子デバイスファシリティの新展開![]() |
デジタルカメラ,デジタルハイビジョンテレビ,DVDハードディスクレコーダ・・・・・・。 私たちの暮らしを囲む家電製品は,この数年で大きく変化している。 いわゆるデジタル家電の台頭である。 活況な市場に対して,生産体制も呼応し,かつてないほどのめまぐるしい動向を見せる。 電子デバイスと呼ばれる精密かつ大量のパーツ群を生産するメーカーは,既存の施設をフル稼働させつつ,次のシーンに向けたさらなる設備投資を進めているのである。 日本の景気回復のもっとも強力な推進役と目され,進化しつづけるデジタル家電市場を支える生産施設とは,どのようなものなのか――。 今月の特集では,時代のニーズに技術力で応える鹿島の電子デバイス施設づくりを紹介する。 |
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世代交代のとき――デジタル家電の台頭 デジタル時代の三種の神器 戦後に売上げを伸ばしたことから「三種の神器」と呼ばれたテレビ,冷蔵庫,洗濯機――。電化製品が家庭に普及しはじめた時代に,これらはまさに生活の神器ともいえる役目を果たしたのだろう。 一方で,デジタル時代と言われる現在にも新三種の神器がある。現代人が選んだのはDVDレコーダ,フラットパネルディスプレイ*,デジタルスチールカメラである。 これらはすべて「デジタル形式に変換された情報の入出力が可能」なことから,デジタル家電と呼ばれている。映像や音声といったコンテンツをデジタル形式で扱うことで,家電同士が相互にコンテンツを共有でき,だれもが便利で簡単に大量の情報を扱うことができる。 電化製品がデジタル形式にとって代わりつつあるのは,デジタル化によってより快適な生活を望む家庭が増えていることの表れでもあると言えるだろう。 |
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市場の現在とこれから ある民間調査によると,2004年夏のボーナスの使い道として,「もっとも欲しい家電製品」はDVDレコーダだったという。液晶テレビも2004年の国内出荷台数は約260万台に達し,全世界の液晶テレビ市場の約3分の1を占めるまでになった(IDC Japan調べ)。 また,デジタル家電の売上げは世界的にも順調に推移しており,JEITA(電子情報技術産業協会)によると,液晶テレビとPDP*テレビを合計した薄型テレビの出荷台数は前年比147.3%増となり,液晶テレビだけでも今後5年間に平均49.2%の高成長率で伸びるとの見方を示した。 以上のデータを見ても,デジタル家電は世界的に普及が進む,もっとも活発な市場と言えるだろう。そして,この競争に勝ち残るべく,生産分野の施設整備も日進月歩の勢いで行われている。 |
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フラットパネルディスプレイ(FPD:Flat Panel Display) 筐体(きょうたい)が板状で画面が平面になっているディスプレイ機器。従来型のCRT(ブラウン管)ディスプレイの筐体は,ブラウン管が奥に大きく突き出し,画面も丸みを帯びていた。近年の技術革新によって生み出されたFPDは省スペースで画面が平たいことが注目を集めている。FPDを実現する技術は液晶のほかにも,有機EL(Electro Luminescence),PDP(Plasma Display Panel),リアプロ(Rear Projection),SED(Surface-condition Electron Emitter Display)などがある。 PDP(Plasma Display Panel) 2枚のガラス基板の間にヘリウムやネオンなどの高圧ガスを封入し,そこに電圧をかけることで発光させる表示装置。蛍光灯をプラズマ放電で光らせて映像を表示させる方式で,他の方式に比べてコントラストが強く,視野角が広いことが特徴。高電圧で表示させるためノートパソコンには向かないが,大型化しやすく壁掛けテレビなどへの応用が期待されている。 |
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電子デバイスと施設づくりの関係 デジタル家電は製品一台のなかに,数十,数百の半導体*や液晶などの表示装置が組み込まれる。電子デバイスとはこれらの部品の総称である。精密かつ多品種の電子デバイスを生産するメーカーは,電子・電機メーカーのほか,印刷業,ガラス製造業など多くの分野が参入し,一言で“部品”と括るにはその裾野はあまりにも広い。 そして,電子デバイス生産分野の最大の特徴は,何と言っても技術革新のスピードにある。すでに見たようにデジタル家電市場は日々刻々と変化している。今日の技術が明日には古くなるという言い回しも過言ではないのである。こうした状況に遅れをとらないためにも,次なる施設の設計・建設には特別な能力が求められる。 |
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何よりもスピード 建設にあたって,まず最も必要とされるのがスピードである。新技術の早期実用化が勝負の決め手となる生産現場では,生産者と設計・施工が一体となって施設建設に取り組んでいる。ときには超短工期という命題を課されながら,これ以上ないベストの生産施設づくりをめざし,技術と市場のニーズの急進な変化に対応しながら,設計と施工が進められるのである。 物理・化学と建築のコラボレーション 生産施設は,最先端技術を扱うため,施設の品質管理も極めて厳格だ。肉眼では見えにくいが,製造ラインが入るクリーンルームの性能確保はもちろん,微振動制御,分子汚染防止,静電気対策,電磁対策など,高レベルの性能を求められる。 生産者の要求する性能への対応が迫られる建設現場はさながら,物理・化学と建築のコラボレーションの場となる。 次代の生産施設と建設コストの関係 さらに,スピードと品質管理に並んで重要なのが,ローコストであること。電子デバイス生産分野では,新工場への投資額の6〜8割は製造設備に当てられると言われている。つまり,高性能な製造設備を入れる分,必然的に建設コストは抑えられる。 これらすべての要求に対し,一体的に対応できる手法が,建設側に問われるのである。 |
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半導体(LSI:Large Scale Integration Circuit) 半導体とは電気を通しやすい「導体」と電気を通さない「絶縁体」との中間の性質をもつ物質を指すが,ここでは,IC(集積回路)の総称,あるいは,ICのなかでも素子の集積度が1,000個〜10万個程度のものを指す。日本は一時,アメリカや韓国,台湾にシェアを奪われたものの,ゲーム機や携帯電話市場の活発化にともない,カスタムLSIの需要が増え,徐々に巻き返しを図っている。 フックアップ 生産ライン装置に建屋側の各種配管を接続すること。配管には,電源,純水,圧縮空気,薬液,特殊ガスなどがある。 ムーブイン 装置搬入のこと。生産開始日から逆算して,決められるのが一般的。その日までにクリーンルームを構築し,要求条件を満たすことが求められる。建家の工程を決めるうえで,最重要項目となる。 |
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