特集:21世紀の社会資本整備

Chapter1 民間の力を活用した社会資本整備


民間活力によるコスト縮減
 従来,建設会社によるコスト低減は,直接工事費の低減を目指した施工技術の開発など,技術面での検討が主であった。近年では,技術にとどまらず,民間の資金や経営ノウハウも活用して,総合的にコストを縮減する新しい取組みが始まっている。これは,公共事業に求められる効率性や透明性をより高めることにも繋がるものである。
 最近では,事業を行う発注方法の仕組みを変え,建設会社の技術力を活かす機会をつくり,コストを縮減する試みが国土交通省などの直轄工事で行われている。その発注方法には,技術提案の内容を加味して落札者を決める「総合評価落札方式」,施工者に設計の一部も任せる「設計・施工一括発注方式」,設計・施工一括発注方式の派生型である「性能規定発注方式」,入札時に代案を求める「入札時VE方式」,「マネジメント技術活用方式」など,様々なバ リエーションがある。こうした工事では,建設業者の技術力が直接受注につながってくる。
 2002年10月に着工した秋田県の森吉山ダムでは,マネジメント技術活用方式が採用された。施工調整に建設会社のマネジメント技術を活用するのは大規模ダムでは全国初であり,当社は,分割で発注されたダム堤体の盛立工事など,全体の施工調整を行い,コスト縮減,品質確保などを進める。
 また,インフラ整備の手法として,技術だけでなく,資金,経営ノウハウを活用し,コスト縮減を行うPFIも注目されている。PFIは,公共サービスを効率的に提供するために,公共施設等の建設,維持管理,運営等を,民間の資金,経営能力及び技術的能力を活用して行うものである。事業コストの縮減はもとより,より高い公共サービスを提供する新しい手法として,今後の社会資本整備にも活用することが期待されている。


CASE1

完成後の坑内  愛知県春日井市を通る国道19号線の直下で,当社は中部電力・NTTのケーブルを収容する共同溝を,シールド工法により建設している。この工事では,「入札時VE(設計・施工提案型)方式」という新しい発注方式が導入され,民間の最新の技術力を活用した長距離・高速施工が実践されている。ここでは1台のシールドマシンで6,800mのトンネルを掘進することが要求されている。マシン本体には,リレービット工法やウレコンシール,セグメント組立作業には,世界最小径でのセグメント自動供給・全自動組立工法や,クイックブロック(QB)セグメント,坑内自動搬送システムなど,工期短縮と品質,安全性向上のために当社が開発した新技術が投入されている。

シールドマシン セグメント自動供給装置

CASE2

完成予想  和歌山県新宮市で建設中の那智勝浦道路・木ノ川高架橋は,「設計・施工一括発注方式(デザインビルド方式)」が橋梁として全国で初めて導入された。当社は,入札に先立ち上部工の側壁をコンクリートから鋼製トラス材に変え,下部工のスリム化を含めて施工の合理化,省力化,工期短縮を実現する「鋼・コンクリート複合トラス橋」を提案した。この橋梁の構造では,上下のコンクリート床版と鋼製トラス材が結合される格点部が,力学的にも重要な部位となる。当社では,鋼板を溶接して製作する鋼製ボックスを独自に開発し,トラス斜材と鋼製ボックスをコンクリートで一体化させることを行った。そして実物大のモデルを製作し,施工性を確認するとともに,200万回の繰り返し載荷実験による疲労性能を確認した。なお,上部工と下部工とが−括発注されたことで,一層のコスト縮減につながる合理的な施工が可能となっている。
木ノ川高架橋は,完成すると橋長268mの4径間連続鋼・コンクリート複合トラス橋となる
当社技術研究所での格点部の実験
鋼トラス斜材。鋼材の厚みを5段階に分けている
格点部の構造




|Chapter0 これからの社会資本整備
|Chapter1 民間の力を活用した社会資本整備
|Chapter2 次代に使い継ぐ社会資本
|Chapter3 「都市再生」を促す社会資本
|Chapter4 環境と共生する社会資本