特集:「現場の知恵」のポテンシャル![]() |
Creativity -1 土を捨てない |
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常識にとらわれない発想 本工事の総延床面積は9万m2を超える。そのうち地下部が過半数を占めるという特性があった。一方,現場周辺では環境アセスメントによる制約があり,月間3,960台という工事車両の通行制限を課せられた。 この条件をクリアするために,現場担当者が真っ先に目をつけたのが掘削土の処理法だった。従来の方法であれば,掘削土を場外に搬出した後に,改めて埋戻し土を調達するのが一般的だ。都心の限られたスペースでの現場の施工計画としては,この方法は定式化されている。 しかし,本現場では約2万m3以上の掘削土を現場内にストックする方法をあえて選び,あらかじめそれを見込んだ工区割りを行った。 また,土砂搬出車両を根切り底まで進入できるように車両用スロープを土砂で築き,掘削効率を高めるなどの計画を行い,構台の設置も最小限にとどめた。 |
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土木現場の手法を採り入れる 本現場の全掘削土量は,六本木ヒルズの街区全体の工事と同程度の30万m3を超える量である。ここには,土木造成工事における掘削土の一時仮置き・転用という手法を建設工事に採り入れる発想があった。 そして,本現場では土木的発想を導入することによって,副次的にダンプなどによるCO2発生量の飛躍的な削減に成功。埋戻し土,および客土の現場内ストックによるCO2削減効果は約850t-CO2におよんだ。敷地に面した日比谷通りと環状3号線の交通に対する負荷の低減も大きい。 さらに埋戻し土の調達が不要になったためにコスト削減も実現できた。大規模という特性を活かした発想転換の結果,環境配慮とコストダウンを両立する手法を生み出したのである。 |
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「とにかく捨てない」が合言葉 土木的手法という点では,掘削土を他の現場へ転用することも同様である。 これまでの現場であれば,掘削された土は処分場に運び,廃棄物として処理される。ところが,本現場では土の処分にもまた知恵が絞られた。約30万m3の土を再利用する計画である。 それから,現場では「とにかく土を捨てない」が合言葉となり,受入れ先探しが始まった。距離を比べれば処分場の方がはるかに近い。しかし,約30万m3という土量を廃棄物ではなく,資源として考えるのが本現場の発想である。 現在,千葉県野田市の江戸川流域で建設されるスーパー堤防の現場や,広島県呉市の港湾の埋立て事業など全国的な現場で再利用されている。 |
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土地のポテンシャルを見極める 土を資源としてとらえる発想は,敷地周辺が良質な土に恵まれていたことにもよる。現場一帯は江戸時代から地歴が残されており,汚染されていない“お墨付き”の土壌だった。 良質の土の受入れ先は後をたたない。本現場のほかにも,白金や丸の内など良土に恵まれている当社東京支店の現場では,年間の総掘削土量を算出し,現場間で連携をとりながら土の再利用を行っている。 かくして,本現場は「土を捨てない」工事を実現した。土の処分を不要としたことで,CO2発生量を163t-CO2削減した。土地のポテンシャルを見極め,資源を有効活用する発想が飛躍的な合理性を生んだのである。 |
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