特集:「現場の知恵」のポテンシャル![]() |
Creativity -2 地下水を戻す |
水質を変えずに地下へ戻す この現場は,土だけでなく水も戻す。 掘削部分の地下水は,掘削前にあらかじめ汲み上げられる。掘削工事部分をドライにする必要があるからだ。その際に,周囲に止水壁をつくり,取水用の井戸を掘る――いわゆるディープ・ウェル(深い井戸)を設置する手法が一般的によく用いられる。 しかし,地上へ汲み上げられた水はその後下水処理され,再度地下に戻される(復水)ことはほとんどない。外気に触れることで水質が変化し,地質にも影響をおよぼしてしまうからである。そのため,復水には厳しい審査が必要となる。 ところが,本現場はこうした状況をむしろクリエイティビティを発揮する契機ととらえ,水を戻すための知恵をめぐらした。そしてそれを実現したのが完全密閉型の配管設備〈リチャージ・ウェル〉である。 手間をかけて効率的に 東京都内の地下水は,鉄分が多く含まれることから酸化・変質によって土質への悪影響を危惧する声が多かった。しかしリチャージ・ウェルは,水質を変えることなく復水し,さらにその水を元々溜まっていた地層へ戻すことができる。これにより掘削工事において,水質・地質両方が保全されるのである。 しかし「リチャージ・ウェル設置の認可がおりるまでには長い時間がかかった」と語るのは楢崎弘道事務課長代理。前述したとおり,現場一帯は江戸時代より土の管理が行き届いた由緒ある土地。工程を総合的に検討しながら,関係部署との連携を図り,東京都環境局などとの慎重な協議をかさねた結果,ようやく設置が認められた。 その甲斐あって,地下水を元に戻せたことによる効果は大きい。これまで放流していた下水への環境負荷を削減できた。「手間をかけないと効率的な工事ができない」と楢崎さんは語る。 |
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