高炉スラグを再資源としてとらえる
本工事におけるコンクリート使用量は約10万m3にもおよぶ。地下規模が大きいということもあり,このうち基礎部だけで使用量の4割を占める。資材の調達にも多大な時間がかかることとなる。
そこで生まれたのが,粗骨材に高炉スラグを用いるという発想だ。高炉スラグとは,製鉄時の炉内の副産物で,建材としての評価は少なかった素材である。
これまで粗骨材として使われていた自然石の調達には,切り出し作業のほか,産地である山間部からの輸送など,調達に時間がとられていた。しかし,高炉スラグならばプラントからの輸送だけで済むのである。
新建材を普及させる現場の推進力
従来,高炉スラグコンクリートはJIS規格品であるものの,関東圏では製鉄所関連施設を除いて一般建築物に使用される例は少なかった。ところが本現場では,基礎梁,耐圧盤に打設するコンクリートの粗骨材として高炉スラグを全面的に採用したのである。
土木も含め従来のケースでは,ポンプ圧送性を考慮して,自然石とブレンドして利用するケースが一般的だったが,本現場では配合の調整など,多くの試行錯誤を経て,高炉スラグのみを使用することとなった。
そこで使われた高炉スラグは約35,000t。CO2の発生量も約2,800t-CO2の削減に成功し,環境保全にも効果的であることが実証された。従来の常識にとらわれない現場の推進力が,今後見込まれる新建材の普及の大きな第一歩となったのである。 |