特集: AQUARIUM〜水族館をつくる


 四方を海に囲まれた日本は,世界的に見ても水族館が多い国である。水族館は単なるアミューズメント施設ではなく,普段目にすることのない水中生物を間近で見ることで,いのちの不思議さ,大切さ,尊さを感じることができる。我々にとって教育の場であり,また,種の保存や保護など調査・研究の場でもある。ガイドが魚の生態を説明するツアーや夜の魚の生態を観察するツアーなどを催す水族館も多い。
 近年では,ガラスの10倍の耐衝撃度を持ち,重さはガラスの約半分というアクリルガラスの技術が発達し,水槽の大型化が進んでいる。水晶のような透明度を持つアクリルは厚さを重ねてもその透明度が落ちないという特色を持つ。
 水族館には,見学者の目に触れる展示ゾーンの約2〜3倍のバックヤードがあり,ろ過機などの水質管理関連設備や予備水槽等となっている。水槽の大型化に伴う膨大な水量に耐え得る構造物造りと,高度な水質管理のための設備が近年の水族館建築の特色といえるであろう。
 今月の特集では,現在施工中の二つの水族館を中心に,当社の手がける水族館を紹介しよう。




水族館はじめてものがたり
水族館はじめてものがたり

水族館はその昔,動物園の一施設として誕生した。日本初の動物園である上野動物園の一角に「うおのぞき」が開設されたのは開園後半年を経た1882年(明治15年)。その後,第二次世界大戦前までの水族館は列車の窓のように覗きガラスの水槽が並んだものだった。戦後,水族館の大規模化が進み,飼育展示される生物もペンギンなどの鳥類,イルカからアザラシ,最近ではラッコ,シャチなど広く海獣類へとその範囲を広げている。飼育海水の水質管理技術の発達からその種類も広範囲の動物群へと広がり,「動物園の一施設」から独立した水族館へと変化を遂げた。