特集:地震―事前防災の最新技術

1 introduction いつでも,どこでも起こりうる地震

地震のたびに生まれる課題
 7月23日,首都圏などを襲った最大震度5強の地震。東京23区内で,震度5以上の地震が起きたのは13年ぶりという。地震情報の遅れや,電車などの交通マヒ,エレベータ内の閉じ込めなど,都心部ゆえのさまざまな混乱が起きた。そして8月16日に起こった同震度6弱の宮城県沖地震では,仙台市の屋内施設で天井材が落下し,負傷者が多数発生。安全対策の不備がニュースでも大きく報じられた。今年の夏は相次いで大きな地震が起こり,その揺れに恐怖心を抱いた人も多かったのではないか。
 地震国と呼ばれるわが国でも,多発する地震のたびに,新たな課題が生まれる。兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災,1995年1月)では,都市インフラの崩壊,老朽化した木造住宅などの被害を受け,古い建物の耐震性を改善する法律がつくられた。
 近年では,北海道十勝沖地震(2003年9月)の際,石油コンビナートでタンクがスロッシング(液面揺動)を起こし炎上,大規模な火災に発展した。また,昨年10月の新潟県中越地震では,自家用車で避難生活を送るなど防災拠点の問題や,山間部での地震対策,および長引く余震への対策の必要性が浮き彫りになった。
 今年4月の福岡県西方沖地震は,国や地震学者もほぼノーマークの九州北部に起きた想定外の大地震だった。福岡市街でビルのガラスが歩道上に落下したり,マンションのドアが開かなくなり,避難路がふさがれてしまうということが起きた。

戦略的な防災対策
 このように,どこで起こっても不思議でなく,いつ起こるか分からない地震へは,事前に対策を十分に講じることが必要である。とくに,命の次に大切な財産として,自らを守ってくれる建物や構造物への対策は怠れない。
「どこに地震が起こるか」,
その際,
「どの建物,構造物に」
「どんな対策が必要か」,
そして,
「対策はどのように講じるのか」。
・・・・・・というような地震発生までのさまざまなフェーズに対し,目的に応じて,最適かつ戦略的な防災対策を行っていくことが必要である。
 差し迫る地震に対し,最新の事前対策技術はどうなっているのか。以降のページでそのメニューを展望する。



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2 interview
3 事前対策技術のメニューい策技術

いつでも,どこでも起こりうる地震
いま、すべきこと
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