特集:鹿島のリニューアル

建物のライフサイクルを考慮して
高度成長期に建てられた多くの建築物が更新時期を迎えている。「壊して造る」スクラップアンドビルドから「長く使う」というストックアンドフローへと,時代は大きく転換している。めざましく変化を遂げる今日の社会では,企業はスピードと変化に対応する柔軟性が求められ,IT化への対応や施設環境の向上は不可欠である。建物の長寿命化を図り,機能を向上させ,資産価値を高める意味でもリニューアルの役割は大きい。今月の特集はリニューアルに対する当社の取組みを紹介する。

Renewalタイトルイメージ
社会の要請としてのリニューアル

 2001年。21世紀の幕開けと共に,20世紀後半の建築を代表するモニュメント・霞が関ビルのリニューアルが完成した。
  霞が関ビルの竣工は1968年。当社が技術力を結集して完成させた日本初の超高層ビルである。当時その高さはもちろん,そのモダンな外観や機能の先進性は急成長する日本の将来を予見させた。以来30数年が経過し,200棟を超える超高層ビルが全国各地に建設されたが,日本で初めての超高層ビル,「超高層の鹿島」の冠は当社にとって永遠の勲章である。
  この記念すべきモニュメントたる霞が関ビルを後世まで語り継ぎ,お客様のニーズに応えた機能確保を目指した大規模リニューアルが行われたのである。
  このビルの建設当初,わが国にはリニューアルやリフォームといった概念は,壁の塗り替えやふすまの張り替えといった部分には存在したが,建物全体に改修を施すことによって,建築物の持つ機能を向上させ,それ以上の付加価値を持った建物に生まれ変わらせる概念は一般的ではなかった。
  高度成長期には「スクラップアンドビルド」を合言葉にした建物の新規建替えが頻繁に行われた。それは,大量生産・大量消費に代表される資源多消費型の社会背景の中で生み出された現象であった。しかし,それは大量の産業廃棄物を生み出し,社会問題へと発展したことは記憶に新しい。
  バブルの崩壊と共に,社会の価値観は大きく変化することとなった。資源循環型社会への転換,環境重視の姿勢,省エネルギー・省資源などが大きなテーマとなり,企業にとってもこれが重要な課題のひとつとなったのである。
  当社は,建設業が資材多消費型産業であることを認識し,建造物の長寿命化や省エネルギー化の有効な方策としてリニューアルを考えてきた。また,お客様の多様なニーズに応えるライフサイクルマネジメントの概念が導入され,その中でリニューアルが,建物機能や財産価値を高める方策の一つとして重要な検討項目になったのである。

最新のインテリジェントオフィススペース
最新のインテリジェントオフィススペースとして生まれ変わった

2階建て作業床を用い,上階から工事を行った
2階建て作業床を用い, 上階から工事を行った(ゴンドラの上部が リニューアル済,下部が未工事部分)

当社のリニューアル実績と今後の市場予測

 このような状況の中,当社においてもリニューアルを事業の大きな柱の一つとして捉え,重点分野に掲げている。本社・支店にリニューアル専門部署を設置し,関係会社とも連携をとり,営業強化,技術開発,施工体制の整備を進めている。
 リニューアル工事の建築工事受注高に占める割合は90年度は10.2%であったが,98年度には19.9%と2倍近くに増加しており,受注量の確実な拡大が見て取れる。当社では2003年度のリニューアル事業の受注を現状の1.3倍の2,000億円まで拡大することを目標としている。
 今後も市場規模は拡大するとみられ,国土交通省によると,維持・補修・改修等の市場規模は現在約22兆円。今後も年平均2.2%のペースで増加し,2010年には27.6兆円と95年度の1.5倍にまで拡大すると予測している。
 当社はこれまで,良質な建築物を多く世に送り出してきた自負がある。これからの時代は「いいものをつくる」ことはもちろん,適切な時期に適切な処置を施し「より長くつかう」ことをも目指していく。それは,本格的なストック時代の到来を見据えたものである。
 次ページ以降,当社のリニューアルについての具体的な取組みを紹介しよう。

イメージを一新したエレベータホール
イメージを一新したエレベータホール

リニューアル将来市場展望
リニューアル将来市場展望
維持:機能のレベル低下速度を弱める行為
補修:陳腐化した機能を竣工時点のレベルまで回復させる行為
改修:竣工時点を上回るレベルにまで機能を高める,或いは新たに付加する行為
(出典 国土交通省新建設市場予測検討委員会)
 
当社のリニューアル受注実績と対建築受注高比率
当社のリニューアル受注実績と対建築受注高比率



当社のLCMサービスとリニューアル

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お客様の要望に応えるリニューアル

リニューアルの先輩から若手社員へ

ライフサイクルを通じた主治医となるために