特集:エコサイト――CO2削減施工の最前線

ECOsite 1 高速化 首都高速道路 中央環状品川線本線シールドトンネル(北行)工事

“施工の高速化”は, 工期短縮によるコスト低減を図るとともに,CO2削減にも貢献する。設備やセグメントの進化で,高速施工の最先端をいくのがシールドトンネル現場だ。

速く,長く,掘り進む

都心の渋滞解消によるCO2削減をめざす首都高・中央環状品川線の本線シールドトンネル工事。当社はこのうち北行の全長8kmを担当している。ここでは,月進400m以上をめざす高速施工に加え,施工面での環境負荷の低減が求められた。

従来,8kmもの掘削は工区を分けて複数のシールドマシンで掘っていたが,当社はシールド技術の粋を集めて,1機で完了させる。その結果,掘削の長距離化により立坑は1ヵ所となり,掘削作業も工期も大きく低減できる。シールドマシン1機による世界最大級の長距離・大断面の工事となった。坑内には自動化された設備がそろい,高速施工を支える。地上から資機材を搬入する大型リフト,掘削土砂を運ぶベルトコンベア,セグメントを吊り上げるクレーン。まるで大型プラントのような現場が,施工面での環境負荷の低減を支えている。

大型セグメントによる省エネ化

高速施工ではセグメントの性能もポイントとなる。ここではポリプロピレン短繊維を混入したコンクリートを使うことで耐火機能を持たせ,耐火被覆の作業が不要となった。さらに1ピースの“奥行き”は,国内最大となる2mを実現。これを全体の約8割に適用している。

「セグメントが大型化すれば製作の個数が減り,製造でのエネルギーや現場での組立て時間が省力化できる。運搬を考えても,トラックの台数が減ってCO2削減につながります。耐火被覆などの工程が省ければ,材料や作業時間が減るだけでなく,現場で使用するエネルギーも減るわけです」と,当JV事務所の隈部毅彦所長。高速化とCO2削減が表裏一体の関係にあると語る。

化石燃料ゼロに向かって

坑内巡視を終え,地上から現場全体の状況を確認する隈部毅彦所長。さらなるCO2削減をめざし,所員・協力会社一体となって努力を重ねる

坑内でセグメントを搬送する台車は,これまでバッテリー電源を搭載し,作業後に充電を行ってきた。しかし,この現場では,充電しながら走行できる発電機を搭載。長距離,24時間施工に最適な運搬設備となった。

さらに発電機の燃料には,軽油に代えてバイオディーゼル燃料を試用し,今後の活用を検討するための実証実験がはじまった。商業施設から回収した廃食油を原料とする“カーボンニュートラル”な燃料だ。

「“捨てていたものの資源化”が環境技術のポイント。バイオディーゼル燃料は安定供給が課題ですが,当社のグループ会社・都市環境エンジニアリングと協力していきたい。注目度の高い現場なので,実証実験の成果を広く知っていただけるでしょう」(隈部所長)。

高速化が進むシールドトンネル工事では,長距離化,運搬率の向上,組立て時間の短縮,化石燃料の削減などで,CO2削減のトップランナーになっている。

把持アームで持ち上げられ,設置を待機するセグメント。国内最大となる幅2mのセグメントは1ピース約9t。断面部(写真中央)にみえる突起が新たに導入した“ワンタッチ型”の新しい継手。従来の人手によるボルト締めに比べて,作業時間が短縮された 55t搭載可能な立坑のリフト。セグメントや工事車両を自動運転で坑内に入れ,通常のクレーンに比べて省力化・高速化を図っている セグメントを運ぶ台車の発電機は,実証実験段階のバイオディーゼル燃料で稼働