JR山手線の大崎駅西口で,当社施工によるソニーの新しいオフィスビルの建設が進んでいる。地上25階,地下2階,延床面積約12万m2の規模を2年という超短工期で完成させる。
当現場では昨年10月から,現場事務所の電力にすべてグリーン電力を使用している。発注者のソニーと施工3社(当社,関電工,東洋熱工業)が共同でグリーン電力を購入する試みが実現した。2011年3月の竣工までに必要とされる約48万kWhの電力を購入する計画だ。
じつはソニーは,日本におけるグリーン電力証書システムの生みの親。証書化を発案し,2001年に東京電力と共同でシステムを開発した。
![]() |
グリーン電力とは「電気そのものの価値」に加え,化石燃料の節減やCO2排出抑制といった「環境付加価値」をもった電力のこと。ソニーの竹村康広シニアプランニングマネージャーによると,「グリーン電力の直接供給にかわり,この付加価値を証書という形で購入し,グリーン電力を使用しているとみなす」。それがグリーン電力証書システムであり,「多大な費用と環境負荷のかかるインフラ整備なしに,クリーンなエネルギーを活用できる」という。証書発行代金は,発電所の維持管理や環境活動への支援に生かされる。
「ソニーでは,グリーン電力証書を活用するだけでなく,証書を通じた発電所や森林保全の支援活動も行っています」と,ソニーの矢澤亜紀子プランニングマネージャーは話す。ソニーの環境冊子「eco press」では,グリーン電力の特集を組み,グリーン電力証書の契約発電所を紹介するなど,社内外に向けたPRにも力を入れる。
一方,こうしたシステムの確立で,発電事業者でなくても「証書発行事業者」となってグリーン電力を売買(証書発行)できるようにもなった。当社は自社開発の技術を導入した富山グリーンフードリサイクルの運営も手がける。食品廃棄物のメタン発酵によって得られるバイオガスを燃料にして発電された同所の電力を,グリーン電力証書として社内で活用している。
ソニーではショールームやオフィス,店舗などにグリーン電力を活用しているという。「今までは,製造事業所や事務所ビルにおいて,建物が稼動してからの電力に対して,省エネ活動やグリーン電力の導入をしてきました。今回のように建設期間にグリーン電力を活用しCO2を削減することは,新たな試みとして今後更に展開できると考えています」と,中山保統括課長は語る。
「グリーン電力証書システムの仕組みがわかり,短工期化が進む建築の現場での環境対策に適していると感じた」と,当工事事務所の桐生雅文所長は話す。
当現場では,夜間工事の仮設照明に水銀灯に比べてCO2を60%削減できるメタルハライドランプを使用している。また,発展途上国の植林活動を支援する「グリーンアジェンダ」にも取り組んでおり,仮囲いに設置されたポストには使用済みのチケットや書き損じのハガキなどの資源が地元の人からも寄せられている。ポストの隣には,グリーン電力使用のパネルが掲示され,グリーン電力の仕組みや発電事業内容をわかりやすく紹介している。
「今後は朝礼や職長会議などでもグリーン電力を周知していきたい」と桐生所長は話す。「現場での環境意識も高まって,工事も100%グリーン電力になる日がくるとよいですね」。