特集:エコサイト――CO2削減施工の最前線

ECOsite 生産性の向上からみるCO2削減

金子 宏 副社長

建設会社として鹿島はいかにCO2削減に取り組むべきか――。
地球温暖化防止への取組みを「施工」における生産性の向上という観点から考えると,また意識が変わってくる。
当社の環境マネジメントを統括する金子宏副社長に,全社的な動向と今後の展望を語ってもらった。

“自らの排出物”への責務

施工中に排出されるCO2は,自らの事業活動における“排出物”として受け止めねばなりません。その削減に取り組むことは,当社の社会的な責務です。お客様からも,建物のライフサイクル全体での観点から,施工時の環境対策への提案を求められることが多くなりました。

もちろん,省エネルギー設計による建物の運用時のCO2削減が,最も効果が大きいのはいうまでもありません。これまでも多様な技術やサービスを提供してきましたが,施工段階を含めた工夫がますます重要になってくるのです。

当社は2003年から,「地球温暖化防止」「資源循環・有効利用」「有害物質の管理」「生物多様性保全」の重点4課題を環境方針に,環境活動を展開しています。昨春には長期目標として,「2020年度までに施工高あたりのCO2排出量を1990年度比で30%削減する」と定め,「エコサイト」をキーワードに,施工現場での活動強化をスタートしました。

広がる連携と削減メニュー

施工面でのCO2削減は,これまでもアイドリングストップや現場事務所などの空調温度の適正化といった意識の啓発に取り組んできましたが,エコサイト活動では,より広い視野での取組み強化を図りたい。事務所や仮設照明といった汎用設備の省エネ化,重機の電動化やハイブリッド化,車両運用の効率化など,土木・建築の垣根を越えた活動が重要と考えています。

こうした取組みには,機器やエネルギーなどの関連業界との連携が不可欠で,自らの施工方法を繰り返し再点検する継続的な努力が大切です。その先に,30%削減の目標達成が見えてくるのです。

環境対策へのスタンス

建設業の大命題である「施工の合理化」「生産性の向上」を突き詰めていけば,CO2削減につながっていく。例えば,汚泥の改質による現場利用,資材搬入車両の削減,タクト工程の工夫による工期短縮など,これらは全てCO2削減策でもあるわけです。

CO2削減がコストアップにつながるといった先入観を払しょくし,現場それぞれの特性に応じた方策の検討を楽しむスタンスがほしい。LED照明のような高効率設備のリース料はたしかに割高ですが,現場の特性にあった用途で使用すれば,電気代の節減で経済的にも環境的にもメリットが出てきます。先進的な設備をリース会社に導入してもらうには,一定の市場規模を用意しなければなりませんから,当社が率先してリーダーシップを発揮することも必要になるでしょう。

エコサイト活動の本格化に向けて

再生可能エネルギーの拡大は,わが国の今後の重要なテーマであり,建設会社としてはその普及に貢献することも大切だと思っています。コストが多少かさんでも,当社の温暖化防止への姿勢を,お客様や地域の人々に分かりやすく理解していただくための費用と考えてみるのです。こうした活動は,社員の環境に対する“啓蒙”にもなります。

来年度は,さらにエコサイト活動の本格化を目指します。土木・建築の両管理本部が舵取り役となり,社内体制を整備していきます。すべての現場をエコサイトとすることも視野に入れ,削減メニューの整備や人材教育を充実していかなければなりません。

環境対策を実行に移すには,現場の所長それぞれのスピリットに頼るところが大きく,個人の意識の高さとも関わってくるでしょう。その活躍に期待するとともに,本社がバックアップ体制を構築していくことが重要です。

生産性向上を正しく進めれば,経済性も環境性も高まり社会貢献にもつながるということを,社員が身をもって理解することが,ものづくりにおける創意工夫の醍醐味だと私は思っています。