特集:台湾の鹿島 ―現場リポート2006秋―

台北地下鉄
台湾第一の都市・台北は世界屈指の人口過密都市。
慢性的な渋滞を避け,市民の地下鉄利用が増えている。開業している路線は8線。
現在も交通渋滞の緩和を目指して,台北市内や近郊で,地下鉄の建設工事が進行している。
蘆洲線CL700B工区新築工事
―3,000本の杭を打設して軟弱地盤を改良―
所長 三井 隆

所長 三井 隆  建設中の蘆洲線は,台北市の北西に位置する蘆洲市と三重市を経て台北市に至る全長7.5kmの路線です。当社JVは,徐匯中学駅から三民高中駅,蘆洲駅,蘆洲操車場までの4.6kmを担当しています。
 工区内には地下駅やシールドトンネル,操車場など,様々な構造物,建築物がありますが,これらを全て建設するというものです。一つの工区でこれほど広範囲に行う地下鉄工事は,日本では無いかと思います。
 古代の台北は湖底にありました。長い年月をかけて土砂が堆積し,300年前に湿地帯になりました。特に蘆洲市は淡水河の軟弱な堆積地盤上に形成された土地で,近年まで水田が多く,沼や水路には蘆が密生,白鷺の生息地だったそうです。蘆洲線の設計コンセプトに「白鷺」や「蘆」を用いたのは,こうした歴史的・地理的要素を勘案したものです。これらは駅の設計にも活かされ,駅の入口やコンコースの壁などにはイメージ画を描くことになっています。
 16haの敷地に計画した操車場は,軟弱地盤を改良するプレローディング工法という技術を用いて施工しました。長さ25mの杭を3,000本打設してからRC造の基礎を構築,その後に良質土で埋め戻して操車場を建設しました。地盤は淡水河が洪水期でも浸水しない高さに盛ってあります。
【工事概要】
場所:台北縣蘆洲市/発注者:台北市政府捷運工程局中区工程処/設計:中華顧問工程司/規模:駅舎3ヵ所,開削トンネル部,出土部,橋梁,操車場1ヵ所 
シールドトンネル ―内径5.6m,総延長4,300m/工期:2002年1月〜2010年9月/施工:日商鹿島・栄民工程・泛亜工程JV
操車場全景 三民高中駅 完成予想パース
シールドトンネル
蘆洲線CL700B工区新築工事
操車場内部。車両をメンテナンスするピットなどの基礎工事を行っている
新荘線CK570C工区新築工事
―40mの大深度に鉄道トンネルを建設―
所長 出浦 昇

所長 出浦 昇 新荘線は台北市とその西側に隣接する三重市,新荘市を結ぶ全長19.7kmの路線です。このうち台北橋駅,菜寮駅,三重駅の3駅と分岐立坑1ヵ所,3つの駅間のシールドトンネル8本を建設しています。
 特に新荘線と蘆洲線とを分岐させるための施設で,シールド機の発進・到達基地ともなる分岐立坑は,台湾随一の大河である淡水河を部分的に埋め立てて構築しました。立坑深度40m,土留壁の連壁の厚さは2m。ともに台湾最大の規模となりました。連壁は台湾の標準的な掘削機であるバケット式の機械を用いて施工しました。
 この立坑の地下60m付近には高圧の地下水を含む礫層があり,立坑掘削時には大量の水が湧き出る危険性がありました。そのため連壁の下端付近に薬液を注入し水を通しにくい層を造成するなど,工法を工夫しました。
【工事概要】
場所:台北縣三重市/発注者:台北市政府捷運工程局北区工程処/設計:中興工程顧問公司/規模:分岐部立坑1ヵ所,駅舎3ヵ所 シールドトンネル―内径5.6m,総延長4,700m/工期:2002年5月〜2011年6月/施工:日商鹿島・栄民工程・皇昌JV
淡水河を埋め立てて構築した分岐立坑 シールド機の発進(奥),到達(手前)準備が進む分岐立坑
完成したシールドトンネル


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 100年をかけて築いたもの