特集:台湾の鹿島 ―現場リポート2006秋―

100年をかけて築いたもの
中鹿営造 恷亦キ 鹿島建設 台湾総代表 船本洋治 (ふなもと ようじ)
1968年鹿島入社。広島支店土木部設計課勤務。
1975年台湾高雄出張所に赴任し中国鋼鉄工事などに従事。東京,台北勤務を繰り返した後,1986年から1995年まで中鹿営造責任者となる。海外事業本部(当時)で土木部長などを歴任し2000年2月から現職。
次代に引き継ぐ使命
 今日,当社の現地法人である中鹿営造と海外支店の日商鹿島は,オフィスビルや集合住宅,工場,地下鉄,橋梁など多彩な工事を手掛けています。そしてその品質に対し,台湾社会からかなり高い評価が得られるようになりました。
 土木工事では近年,景木下水シールドトンネル工事(中鹿営造JV),基隆河洪水調整トンネル工事,龍門第4原子力発電所排水放流管工事(日商鹿島JV)が,日本の国土交通大臣賞に相当する「公共工程金質奨」を受賞しました。  
 建築工事でも西華飯店,士林電機本社ビル,台湾セメント本社ビル,新竹国賓飯店,高級マンション「帝寶」,そのほか多くの作品が,その高い品質に対し建築賞をいただくなど社会から評価されており,大変名誉なことと思っています。
 こうした背景には,多くの台湾の方々からの温かい支援と,全ての社員が日頃から当社の名に恥じない物づくりに努力し,さらに,全社をあげて台湾を支援する鹿島本社の姿勢などがあるからだと考えています。
 戦前の鉄道工事や日月潭発電所工事などの時代は鉄道もなく,現在では想像できない交通の不便さであり,マラリヤ,ツツガムシなどが猖獗(しょうけつ)した山間部での工事で,私共の先達の苦労は並大抵ではありませんでした。戦後も曾文水庫,台中港,中国造船100万屯ドック,中国鋼鉄,北廻り鉄道,日月潭地下発電所建設等々,台湾経済発展の原動力となった国家的インフラ工事に多くの先輩が奮闘して来られました。
 いま台湾に勤務する私共は,諸先輩が工事や人間関係で築いてきた信用に感謝し,それを維持して鹿島の次の世代に引き継ぐ使命を担っているのです。

「誠実・謙虚・邁進」のスローガン
 儒教の倫理が広く浸透している台湾では,誠実であることが求められます。誠実とは些細なことでも約束を守り,また常に相手の利便を考えること。私は社員に対して誠実とともに,謙虚さを持って邁進するよう日頃からお願いしています。
 我々は営業や工事で,オーナーや経営幹部といった方々と接する機会が多くあります。こうした人達は人を見る目が厳しく,自分への丁寧な対応よりも,他の人に対して紳士的な態度をしているかどうかに,より強い関心があるものです。これを忘れずに,仕事に邁進して行きたいと思っています。

社員へのメッセージ
 中鹿営造も日商鹿島も当然台湾籍社員が大半を占めています。中鹿営造では工事所長を任される人材もかなりの人数が育ってきました。事ある毎に言っておりますが,皆さんには日本語を覚え,経験を積み鹿島の技術,文化を早く身に付けて頂きたい。そして立派な技術者,マネージャーとして,経営幹部となる社員が一人でも多く輩出されることを願っています。
 また,日本や他国にいる社員で海外勤務に興味ある方は,台湾を希望されることをお勧めします。ここは日本国内よりも個人の努力がより一層報われる社会です。やりがいを感じることが出来ると思います。台湾の人々は世界でも有数のフレンドリーな性格で,人と人との心の琴線に触れるお付き 合いが多く,人生もより豊かになると思います。
 言葉は障害にはなりません。30歳代で赴任すれば,1年後には中国語で会議やプレゼンテーションが出来るようになる。40歳を過ぎても努力次第でそうなります。出来れば若い時に,家族を帯同して赴任して来てください。多くの社員が台湾の人々と親睦を深め,台湾と日本の架け橋になっていただくよう願っています。

※しょうけつ:悪いものが猛威を奮うこと
中鹿営造,日商鹿島オフィスの女性社員 「公共工程金質奨」を受賞した基隆河洪水調整トンネル工事


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