仮想プロジェクト 浅草凌雲閣を救え!
凌雲閣救済のための現代技術
■ STEP - 1 [ 地盤改良+耐力向上 ]
まず、崩壊の主な原因である軟弱な地盤の改良と煉瓦の耐力を向上させます。
しかしながら、この方法ではまだ関東大震災級の地震では地震時応答が耐力を上回り、崩壊の危険があります。
- 地盤改良・・・大型高速地盤改良(SUPERJET)工法により、構造物の安定な支持を確保する。
建物の外側から基礎直下の地盤を改良する。 - プレストレスの導入・・・煉瓦に鉛直方向の溝を設け鋼線(PC鋼より線)を配して締め付け、煉瓦の耐力を向上させる。

SUPERJET工法による地盤改良

鋼線(PC鋼より線)で煉瓦の耐力を向上
地盤改良として超高圧ジェットの噴射とモーター回転による改良剤の注入を行うことで、安定的に大規模に地盤改良を行えます。またこの工法は建物の外側から基礎直下の地盤を改良できます。また、煉瓦の耐力向上のためにプレストレスを導入することにしました。煉瓦に鉛直方向の溝を設け、「PC鋼より線」を配して締め付けます。施工的には水でコンクリートを切断するウォータージェットを利用します。煉瓦であれば苦もなく施工できるため、このような改良を行ってから、地震応答解析を実施しました。
応答結果をみると、地盤が固くなった影響で固有周期が短くなり、せん断力では応答が耐力を下回ったものの、曲げモーメントが大きくなり、まだ崩壊の危険があることがわかります。

■ STEP - 2 [ 加えてパッシブ型制震装置(HiDAM)搭載 ]
つぎに、パッシブ型制震装置(HiDAM)により基礎のロッキングを制震します。
この方法により、ほぼ関東大震災級の地震に対して崩壊の危険から免れられます。
- 建物外周に剛な基礎(杭と地盤アンカーで上下方向変形を固定)を4箇所設け、建物基礎との間をダンパで結ぶ。
これにより、建物基礎のロッキングを制震する。 - ダンパには高性能オイルダンパ「HiDAM」を採用する。 減衰力200t×8台(C=40t/kine、ストローク5cm)

建物外周に剛な基礎を4箇所設置

高性能オイルダンパ「HiDAM」を採用
応答のうち曲げモーメント即ち、鉛直方向の引っ張りに対する対策として、パッシブ型制震装置を用いて、応答地震を低減させることとしました。建物外周に剛な基礎(杭と地盤アンカーで上下方向変形を固定)を4箇所設け、建物基礎との間をダンパで結びます。これにより、建物基礎のロッキングを制震します。
ダンパーには高性能オイルダンパを採用しています。減衰力が200tのものを8台(C=40t/kine、ストローク5cmの性能)を使用します。応答結果をみると耐力は応答を上回り、ほぼ崩壊の危険から免れることがわかります。

■ STEP - 3 [ さらにアクティブ型制震装置(DUOX)搭載 ]
さらに安全性を確保するために9階にアクティブ型制震装置(DUOX)を設置して、
建物上部構造を制震する。応答値はさらに低減され、十分な救済となります。
- 一層の安全性向上と快適性を確保するため、9階にアクティブ制震装置「DUOX」を設置して、上部構造を制震する。
- DUOXはパッシブ動吸振器(DD)にアクティブ・マス・ドライバ(AMD)装置を重ねた複合制震システムである。
AMD重量10t×2台、DD重量40t

9階位置にアクティブ型制震装置(DUOX)を設置

アクティブ型制震装置(DUOX)
ステップ2までの対策で、なんとか大丈夫という段階にはきましたが、一層の安全性と快適性を確保するための最新鋭技術として、アクティブ型制震装置を設置します。即ち、9階位置にパッシブ動吸振器(DD)の上に小型のアクティブマスドライバ(AMD)装置を載せた複合制震システム(DUOX)を設置します。ここではAMD重量10tを2台、DD重量40tを用いており、これにより関東大震災クラスの地震に対しても十分な救済となったといえます。

■ 救済完了!
このように、最新のアクティブ制震、パッシブ制震技術を適用することで、明治23年に建てられた浅草凌雲閣は関東大震災以上の地震に対しても十分な安全性を確保できるようになりました。この仮想プロジェクトを通して、防災についての意識を高めていただければ幸いです。