[2022/06/07]
978KB
1車線規制で床版取替が可能な
「スマート床版更新（SDR）システム」を開発
工事費を2割低減、床版取替工程を1/10に短縮、ソーシャルロスを大幅に低減
鹿島（社長：天野裕正）は、道路橋床版更新工事に伴う交通規制等によるソーシャルロスの大幅な低減を可能にする「スマート床版更新（SDR※）システム®」の開発を進めています。2019年には『全断面（2車線道路の場合2車線規制）取替』を対象とした「全断面SDRシステム」を開発し、来年以降、実工事に適用予定です。このたび、ソーシャルロスのさらなる低減を可能にする『幅員方向分割（2車線道路の場合1車線規制）取替』を対象とした「幅員方向分割SDRシステム」を開発しました。
※Smart Deck Renewal
スマート床版更新（SDR）システム概要図（本施工システムについては、特許出願中です）
開発の背景
道路橋の床版取替工事は供用中の施設が対象となるため、交通規制等によるソーシャルロスを最小限にすることが大きな課題です。そのため、交通量の多い路線では床版を幅員方向に分割して施工を行う「幅員方向分割取替」の適用が強く求められています。しかし、幅員方向分割取替工事にあたっては、隣接する交通開放側の床版からの交通振動が接合部に与える影響への対策や、交通開放側の車両に対する安全対策、さらに、全断面取替よりもコンパクトな架設機が必要といった課題がありました。
幅員方向分割SDRシステムの主要技術
幅員方向分割取替における交通開放側の床版（以下、一次床版）と規制側床版（以下、二次床版）の接合部（橋軸直角方向接合部）に充填する間詰材については、硬化中に一次床版からの交通振動によりひび割れが生じるなど、品質低下につながる事象が課題となっています。
そこで、交通振動による影響を解消し、間詰材の品質を確保するために、一次床版と二次床版を2枚のプレートとPC鋼棒により仮接合し、両者を一体化することで振動の影響を回避する『交通振動対応仮設プレート型継手』を開発しました。
交通振動対応仮設プレート型継手
車線規制下での床版撤去・架設作業においては、工事エリアのすぐ横を一般車両が走行します。 このため、作業エリア内の誤進入に対する確実な防護対策が安全上の最も重要な課題となります。また、防護柵設置・撤去作業時の安全性、ならびに規制範囲の最小化も求められます。そこで、幅30㎝の占有でSB種の性能を担保し、ワンタッチで設置・撤去可能な『ワンタッチ型SB種防護柵』を開発しました。
ワンタッチ型SB種防護柵
車線規制下において床版架設機・撤去機の設置・撤去作業を行う際に最も留意が必要な点は、供用交通に対する安全性の担保です。そこで、床版架設・撤去機を10tトラックおよび15tトレーラーで運搬し、クレーンを必要とせずに安全かつ高速に組立・撤去できる『車載運搬型床版架設機・撤去機』を開発しました。
車載運搬型床版架設機 組立フロー
実物大実証実験
2022年4月に、幅員方向分割SDRシステムのサイクルタイムおよび施工安全性の検証を目的とした実物大総合実証実験を行いました。その結果、床版取替工程を標準的な施工方法に比べて約1/10に短縮できる高速性など、本システムの有用性を確認しました。また、本システムに加え工事現場の近傍に設置したプレキャスト工場で床版を製作することで、床版の製作経費や運搬費が削減でき、工事費の約2割低減が見込めます。
実物大実証実験
標準工法との施工枚数の比較(幅員方向分割取替)
今後の展開
実物大実証実験において所期の結果を得たことを受け、今後は実工事への適用に向け、本システムを積極的に提案していきます。併せて、自動化を始めとした機能向上についても研究開発を進め、交通規制等によるソーシャルロスを最小限にとどめる道路橋床版更新工事の実現に寄与していきます。
（参考）
安価で、高速施工を可能にする「スマート床版更新（SDR）システム」を開発
（2019年12月17日プレスリリース）
動画でみる鹿島の土木技術「リニューアル」
プレスリリースに記載された内容（価格、仕様、サービス内容等）は、発表日現在のものです。
その後予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。
