研究成果

Feature

構造物の声を聴く

光ファイバを用いた
構造モニタリング

※動画は音声を含みます。

今井 道男
先端・メカトロニクスグループ

光ファイバ神経網による
痛みの分かる構造物の実現に向けて

我々の社会生活を支える橋梁やトンネルなどのインフラ構造物の老朽化が社会問題になり始めています。現在私は、こうした物言わぬインフラ構造物に光ファイバを網目のように張り巡らせ、半永久的に計測できる特長を活かし、あたかも生物の神経網のように、痛みの分かる構造物を実現する試みを進めています。光ファイバセンサを構造物に配置すれば、定期点検などで労力をかけることなく、インフラ構造物を使い続けながら、客観的なデータとして、その変化をモニタリングし続けることができます。インフラの一生を考えた場合、ゼネコンは、その誕生過程からデータを蓄積できます。建設の過程を記録したデータを有することは、以降の経年過程をモニタリングし、健全性を判断するうえで極めて重要です。勿論、維持管理だけでなく、近年頻発する自然災害時には計測データで構造物の損傷の有無や損傷部位を正確に把握でき、継続使用の迅速な可否判断などにも活用できます。さらに将来、スマートシティにおける自動運転やエネルギー最適化などにおいても、インフラのスマート化に寄与できる可能性を秘めています。

私は、電気系学部を卒業後、大きなモノづくりを志向して鹿島に入社、その後、会社の留学制度を利用して、アメリカの大学で土木分野を勉強する機会を得ました。その結果、異分野融合による新たな価値創造に対する興味がかきたてられ、当時その活用が期待されていた光ファイバセンサの研究に取り組みました。構造工学にもとづく耐震性能などの向上と、電気工学にもとづく客観的データをかけあわせることによる安全・安心なインフラ実現に向けて、その一歩を踏み出しました。当時ご指導頂いた大学の先生が提唱される手品のようなセンサ技術を用いて、実際の構造物でこれまでにないデータが得られる経験などを通じ、その実現への思いをさらに強くしました。一方、センサの製造部門をもたないゼネコンの研究者として新たな価値創造を目指すためには、外部機関との連携が不可欠であり、大学だけでなく、計測器メーカやケーブルメーカ、ときには素材メーカなどとも協力する必要があります。そのためには、技術的なハードルの克服だけでなく、目指す社会に対する想いやビジョンの共有が欠かせません。技術的な課題解決、またスマートインフラのような大きな視座に立ち、研さんするうえで、土木分野の様々なトップ研究者がいる鹿島技術研究所は大変恵まれた環境と言えます。これまでの諸先輩方が培った伝統をベースにしながら、異分野融合による新たな価値創造を進めていきたいと思います。

図版:PC ケーブルに光ファイバを埋め込みモニタリングすることで構造物のひずみをとらえる。

PC ケーブルに光ファイバを埋め込みモニタリングすることで
構造物のひずみをとらえる。

図版:得られたデータが構造物によるものかケーブルによるものかを評価しながら技術の向上を図る。

得られたデータが構造物によるものかケーブルによるものかを評価しながら
技術の向上を図る。

図版:様々な専門分野の研究者とのコミュニケーションが研究を加速させる。

様々な専門分野の研究者とのコミュニケーションが研究を加速させる。

図版:様々な現場で適用されはじめている。

様々な現場で適用されはじめている。

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