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特集 技術研究所70年

~今を拓き,未来を築く力~

戦後間もない1949年4月,鹿島守之助会長が
「不断の研究と創造が社会に進歩と繁栄をもたらす」との理念から設立した
当社技術研究所が70年を迎えた。
当時,民間唯一の建設技術に関する研究機関であった「財団法人建設技術研究所」から
研究員や研究施設の主だった部分を承継し,当社の技術陣を加えて発足した技術研究所。
建設業界初の技術研究所として今日に至るまで当社の技術開発の中心を担い,
豊かで安全な国土の建設と社会発展に寄与し続けている。
今号では,「今を拓き,未来を築く力」をスローガンに掲げる技術研究所の
多岐に亘る技術開発と,これからを特集する。

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常務執行役員
技術研究所長
福田孝晴

鹿島は,1840年の創業以来,「進取の精神」のもと,「技術」と「人材」を中核に,建設事業を通じて産業,経済の発展に貢献してきました。鹿島技術研究所(KaTRI)は1949年に開設以来,常に未来を見据えながら,超高層ビル,原子力発電所,長大橋梁,大深度トンネルなど,日本では初となる構造物やインフラを実現するためにR&Dで数多くの挑戦を続け,鹿島グループ全体の技術基盤を支えてきました。

現在の建設業界にとって最大の課題は,技能労働者不足と将来の担い手確保です。その対応として「生産性の向上」を目指し,技術開発では「次世代建設生産システム」の構築を進めています。具体的には,土木では「現場の工場化」,建築では「鹿島スマート生産」の実現を目標として,2025年までに機械化,自動化,スマート化を進めていきます。土木分野では,2017年に技術研究所が開設した西湘実験フィールドにおいて,建設重機の無人自動化実証を進めるとともに,建築分野ではスマート生産チームを設置して,デジタル化,スマート化に特化したR&Dを精力的に進めています。

社会ニーズとしては,ESG投資や世界共通の持続可能な開発目標SDGsの観点から,企業が自らの成長と社会への貢献を両立することが求められています。日本では政府が中心となって進めている未来ビジョン「Society 5.0 for SDGs」の考え方が目標となります。これは先端デジタル技術の活用により,サイバーとフィジカルが融合した人間中心の超スマート社会を創っていくものです。建設業では,従来分野とIoT,AI,ロボットなどの先端デジタル技術を高度に融合させ,環境・エネルギー,防災・減災,インフラ維持管理などの社会課題の解決を図るとともに,スマートビルディング,スマートシティなどで新しい価値の実現を目指していきます。

これらのビジョンを実現させるためには,建設プロセス全体のデジタル化を進める必要があります。BIM/CIMを基盤として様々なデータを集約できるプラットフォームを構築し,建設に関わるあらゆる情報を柔軟につなげられる機能が求められます。これらのプラットフォームから必要なデータだけを迅速に取り出し,計画,判断,制御が自由に行えるシステムの構築を目指していきます。

また,出来上がった建物やインフラには,様々なセンサーを使って周辺環境,ライフライン,建造物,内部環境,設備機器,人の情報をリアルタイムでデータ収集・分析し,機能性,快適性,健康性,LCC,維持管理など様々な観点から最適にマネジメントできる技術の開発を進めていきます。

R&Dにおいては多様性がキーワードとなります。顧客から求められる価値は,モノからコトへ,ハードからソフト・サービスへ,単体技術から総合的なビジネスモデルへと変化しており,大学,先端研究所,有力企業,スタートアップ企業とのオープンな協業による多分野融合的なイノベーションを進める必要があります。特にAI,データサイエンスの分野は外部との協働が必要な分野であり,技術研究所にはAI×ICTラボを設置し,先端デジタル技術を外部とともに推進できる人材を育成しています。研究人材としては女性,外国人,キャリア採用,再雇用者など人材の多様化を進めており,個性がぶつかり合う密度の高いコミュニケーションを通じて,様々な創造的なアイデアを生み出す環境作りを行っています。

R&Dのグローバル化については,日本と世界を一体の市場として取り組むことが重要です。6年前に技術研究所のシンガポールオフィス「KaTRIS」を設置し,大学や政府機関,現地企業など様々なパートナーとのネットワーク構築と共同研究を進めてきました。今後,生産性向上,環境,サステナビリティなどの世界共通の課題に対して,世界から最新技術情報と高度人材が集まるシンガポールで,価値を最大化するR&Dに取り組んでいきます。

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