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長く仕事ができることへの感謝と努力 和歌山日本製鉄工事事務所

和歌山日本製鉄工事事務所の歴史は,
住友金属工業(現在の日本製鉄)が着手した和歌山製鉄所の建設に対応するため,
1942(昭和17)年に出張所を開設したことから始まる。
施主と協力会社とともにものづくりに携わる,当社の中で最も歴史のある工事事務所のひとつだ。

図版:当社が施工した圧延工場(1965年頃)

当社が施工した圧延工場(1965年頃)

製鉄所の歩みとともに

紀の川と土入川(どうにゅうがわ)が合流する和歌山市湊の河口付近一帯は,昔から“御膳松”と呼ばれる。小高い丘に古い松がいくつか生えていて,あるとき,初代藩主の徳川頼宣公が御膳を食べたことが呼称の由来と言われている。1940(昭和15)年,住友金属工業は紀の川河口で和歌山製鉄所(当時)の建設に着手。工事を請け負った当社は1942年,御膳松に和歌山出張所を構え,工場敷地造成,道路舗装,工場建設などを担った。現在の「和歌山日本製鉄工事事務所」のはじまりだ。

第二次世界大戦後の復興から高度経済成長期を迎えた昭和後期,和歌山製鉄所では多数の大規模建設計画が立ちあがる。本誌第1号(1959年11月号)では,当社が担った施工の様子が伝えられている。

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現在,住友金属工業は合併や商号変更を経て日本製鉄に,和歌山製鉄所は組織再編により関西製鉄所和歌山地区(和歌山)に名称を改めた。敷地面積は約470万m2。製品製造のほかに関西製鉄所他拠点への鉄源供給の役割も担うなど,今も第一線の銑鋼一貫製鉄所として稼働する。

当社は新築工事からメンテナンスまで幅広く請け負うことで80年以上にわたり事務所を維持し,製鉄所の変遷とともに歩んできたのだ。

※鉄鉱石から鉄を取り出すところから最終製品の製造までをひとつの敷地内で行う製鉄所

図版:本誌第1号(1959年11月号)で当時の建設の様子が伝えられている

本誌第1号(1959年11月号)で当時の建設の様子が伝えられている

図版:本誌1967年8月号では,当事務所の前身が現存する最も古い出張所として紹介された

本誌1967年8月号では,当事務所の前身が現存する最も古い出張所として紹介された

製鉄所のためになることをする

2017年から和歌山日本製鉄工事事務所を率いる兒嶋匡彦所長。構内施設の建替えや解体工事のほか,長きにわたり稼働し続けてきたさまざまな建屋・設備の改修や補強工事を指揮している。

兒嶋所長が日頃から所員と協力会社に伝えているのが現場スローガン「製鉄所のためになることを考えて行動する」だ。構内は24時間365日稼働する。現場を訪れた昨年11月は,ステンレス製鋼工場耐震補強工事のさなか,階下では転炉と呼ばれる巨大な炉の中に溶けた鉄から不要な成分などを取り除く作業が並行していた。「私たちはお客様の操業を第一に考え作業計画を練り,実行することが求められています。だからこそ,安全遵守は絶対なのです」と兒嶋所長はスローガンに込めた想いを話す。

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兒嶋匡彦所長

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兒嶋所長がはじめて製鉄所の施工に携わったのは,和歌山1高炉(2009年竣工)の建設工事。当社は既存施設の解体,設計・施工を担当し,和歌山2高炉(2013年竣工,2019年火入れ)の建設も担当した。「私は製鉄所に技術者として育ててもらいました。大型工事が一段落した後も,ここで継続的に施工させていただいていることを本当にありがたく思っています」。仕事が大好きと微笑む兒嶋所長。構内関係者とのコミュニケーションを大切に,施設の操業状況や状態を把握することで,お客様視点に立った計画提案につなげている。

図版:2009年に完成した和歌山1高炉

2009年に完成した和歌山1高炉

図版:1,000t高架水槽の底盤を無人化バックホウで解体

1,000t高架水槽の底盤を無人化バックホウで解体。施主要望に応え,老朽化したスラブ上での作業リスクを低減した

好きな所で好きな人と仕事を

製鉄所構内は,施工を行うに際しさまざまな特有のルールがある。構内作業専用の安全教育や資格取得のほか,毎月開催する安全衛生教育会の資料は製鉄所からの周知事項だけで100ページを超えることもあるという。「いかに協力会社に協働してもらえるかが,ここでの施工の鍵となります」と兒嶋所長は話す。

構内での業務の幅を広げようと新たなチャレンジをした協力会社がある。主に構内の煙突工事を担当していた東洋テクノは,煙突以外の建屋工事も施工できるよう多能工化に取り組んだ。東洋テクノ建築本部工事部の篠原善弥次長は「煙突工は施工が終わると現場を次から次へと転々とすることが多いのですが,ひとつの現場に長く携わってみたいという思いも持っていました。そんな折に,当時の鹿島建設関西支店の方針だったり,兒嶋所長からのお話だったりを受け,挑戦に踏み切りました」と経緯を振り返る。

現在,現場に入場する作業員のほとんどは地元市民。はじめての建屋工事は決して簡単ではなかったが,「やりたい仕事を,やりたい場所でやりたい人とさせていただいている今,ここで仕事をしている作業員はみんな本当に楽しく働いています」と篠原次長は手応えを感じている。

構内では,すれ違う人々が互いに「ご安全に」と声を掛け合う。施主から作業員に直接声をかけるシーンも珍しくない。そうした文化が根付く温かみのある製鉄所だと兒嶋所長は話す。「一生懸命に取り組めば必ず誰かが見てくれています。歴史ある製鉄所の維持管理をお客様とともに取り組めていることにやりがいを感じていますし,これからも尽力します」。

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東洋テクノ 篠原善弥次長

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図版:煙突撤去工事の様子

煙突撤去工事の様子

図版:事務所内に飾られた感謝状や表彰状は,長年安全や品質管理に真摯に取り組んできた証のひとつ

事務所内に飾られた感謝状や表彰状は,長年安全や品質管理に真摯に取り組んできた証のひとつ

図版:集合写真

集合写真

図版:日本製鉄関西製鉄所和歌山地区(和歌山)

日本製鉄関西製鉄所和歌山地区(和歌山)

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interview

「直協一体」での取組み

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日本製鉄 竹内室長

日本製鉄関西製鉄所設備部土建技術室の竹内室長(昨年12月時点)は,和歌山地区(和歌山)を含めた関西製鉄所5拠点の土木・建築・設備に関する建設,保全,整備の計画・実行を統括する。製鉄産業の生産拠点を維持するにあたり,当社に求める役割を伺った。

和歌山地区(和歌山)が操業してから80年以上経ちますが,
当社も長く携わらせていただいています。

鹿島さんには製鉄所の操業時からたくさんの大規模建設を担ってもらいました。近年は鉄鋼業界を取り巻く環境も変化しており,当社も国内製鉄事業の再構築に向けて邁進しています。その中で,ここは関西製鉄所各拠点への鉄源供給と競争力のある製品製造の役割を担っており,全社内でも収益性の高い製鉄所となっています。

構内には鉄道や発電所など多種多様な施設があるのですね。

土木では設備基礎,道路,港湾,鉄道,橋,建築では事務所,社宅・寮,病院,発電所などの施設があり,まるでひとつのまちのようです。現在日本では社会インフラの長周期劣化が課題となっていますが,製鉄設備も日常的な重量物・高温物の取扱いや塩害により劣化が顕著となっています。鹿島さんを含め関係業者のみなさんには,安全環境防災を第一に,生産活動を維持しながら保全作業への協力をお願いします。

構内は関係者との距離感が近く,協力会社からも親しみを感じる現場であると聞いています。

製鉄所の運営や維持管理は自社だけで回すことはできません。製鉄所の運営は当社とここに出入りする全ての協力会社が「直協一体」で取り組むことが大切であり,日頃のコミュニケーションの密度が構内の安全にもつながると思っています。

これからも,ぜひ長いお付き合いをお願いします。

難しい環境下における工事の品質監理レベルの高さや,まちなかと違う特徴に応じた臨機応変な対応力は鹿島さんこそのものだと思っています。生産活動を長く維持するため,施工提案力と技術力に期待しています。

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