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私たちの働き方改革・・・② ラグーナベイコート倶楽部新築工事

写真:ラグーナベイコート俱楽部新築工事

ラグーナベイコート俱楽部新築工事

場所:
愛知県蒲郡市
発注者:
リゾートトラスト
設計・監理:
安井建築設計事務所
用途:
宿泊施設
規模:
RC造一部S・SRC造 B1,7F,PH1F
延べ36,700m2
工期:
2016年6月~2019年1月

(中部支店施工)

図版:地図

改ページ

改革1 朝礼の合理化

愛知県蒲郡市の「ラグーナベイコート倶楽部新築工事」では,現場内のルールの見直しやコミュニケーションの活性化によって飛躍的に作業効率を高めている。改革の一つが,作業間連絡調整会議の結果の周知方法を工夫し,協力会社ごとにミーティングを行って,朝8時から自由に作業開始して良いとしたことだ。朝礼は協力会社の職長と社員が密に情報交換を行う8時半集合の「朝会」に切り替え,サブリーダー制を敷くことで職長不在の時間を補う。工事を率いる室田純所長は朝会に切り替えた理由を次のように語る。「朝は皆,注意力が高まる時間帯。全員が毎朝気持ちよく作業にとりかかれる環境づくりが,結果的に効率アップにもつながるんです」。

建設中の建物は外観の大部分が曲面で構成された特徴的な造形の宿泊施設だ。鳥が翼を拡げたような平面で,現場は中央高層棟と東ウイング,西ウイングの三つに分かれる。RC造,SRC造,S造と様々な構造のため,施工の難易度も高く,現在,工事に従事する作業員は約600人におよぶ。朝礼のわずか30分も600人合わせれば300時間に相当する。一方,注意力が散漫になりやすい午後の昼礼を全員参加とし,「もう半日,無事帰宅目標に頑張ろう」の唱和で今一度緊張感を高める。

改革2 自衛組織「LSDF」の結成

現場の働き方改革を進めるために見落とせないのが些細なトラブル処理である。仮設材の放置や資材の作業通路ふさぎなど,要因は様々。協力会社間の作業区分が曖昧なために発生するこれらの行き違いを現場では“はざま”と呼ぶ。大規模現場では,社員が対応に追われる時間も膨大になる。

「はざまを放置することは円滑な作業を妨げ,効率やモチベーションの低下を招く。逆にはざまを解消した快適な職場は事故災害を未然に防ぐことにもつながります」。そう考える室田所長は職長に呼びかけ,はざまの放置を解消する仕組みづくりに乗り出した。そこで結成されたのが自衛組織LSDF(Laguna Self-Defense Force)である。職長会の有志がルールづくりや見回り,呼びかけを行い,働きやすい職場づくりの輪を拡げる。LSDFの結成こそが現場全体の労務改善,環境改善の第一歩となった。

写真:LSDF直轄の作業チームによる環境改善活動の様子

LSDF直轄の作業チームによる環境改善活動の様子

改革3 専門職の能力を最大化する

LSDFでは,現場で見落とされてきた〈ちょっとした作業=“はざま”作業〉の洗い出しを行い,作業が発生すると作業部隊が各協力会社に対応を求める。一つひとつに分担ルールを定め,現場全体へと浸透させていった。目的はネガティブな要素を是正するだけではない。この現場で室田所長を支える戸口秀一郎副所長は「大規模な現場ゆえ,一つの工種に複数の協力会社が入るため,足場の組み方一つとっても会社ごとに違う。LSDFの活動はいい事例を水平展開し,現場全体のレベルを底上げすることにもつながる」と語る。

この活動は構成メンバーが就業時間内に行うため,現場で働く作業員の自主性も問われることになるが,現場の環境が次第に向上される様子は作業員同士がこの活動に協力する動機付けとなっていった。「LSDFのコンセプトは明快そのもの。はざまを最小化し,専門職の能力を最大限引き出すことです。これにより万能工の人たちも本当にやりたい作業ができるようになり,現場全体の足並みが揃うことで私たちも本来の仕事に充てる時間がとれるようになりました」(戸口副所長)。

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改革4 積極的な合理化で4週8休へ

現場ではコミュニケーション面で生産性向上に努めるだけでなく,技術面においても積極的な合理化に取り組んでいる。複雑な構造躯体のため大型の鉄筋ユニットを地組みし,高所作業を大幅に減らしている。外装はPCa化し,曲面の多い外観に対し外部足場を不要とした。外装同様に曲面の多い客室インテリアには,位置情報を用いて高精度の墨出しが可能なタブレット端末を導入し,測量作業で大幅な効率化を果たしている。

協力会社と手を携え,全体に効率化や合理化の考えを行き届かせた取組みによって,この現場では土曜日を隔週全休とし,すでに4週6閉所を実現している。来年1月の竣工に向けて現場全体が活況を呈するなか,今後はローテーション制の4週8休にもトライする計画だ。これに向けた次の一手にも注目が集まる。

写真:戸口秀一郎副所長

戸口秀一郎副所長。朝礼の見直しとはざまの解消で社員がデスクワークに割ける時間が大幅に増えたという

FOCUS 改善点をスピーディに伝えるビジュアルメッセージ

現場の環境改善を進めるうえで特徴的なのが,室田所長と戸口副所長による現場巡回のスタイルだ。1日2回,3時間ほどかけて現場内を歩くなかで改善ポイントを写真に収めていく。現場事務所に戻って1枚ずつプリントした用紙に,赤ペンで改善案が上書きされる。改善案は社員が共有した後,職長全員にPDFがグループメールで一斉配信される。指示には平面図をかたどった特製スタンプに印が付けられており,場所や担当者が一目瞭然。打合せや会議などでの申し送りよりスピーディでリアクションも速い。室田所長によれば,一度の巡回で撮る枚数は50~60枚ほどだという。「そこにはもちろん“はざま”だけでなく,ディテールの収まりや工程の疑問点なども含まれます。工種が増えると新しい課題も持ち上がりますが,粗探しではない。私自身のものの考え方を社員や職長たちに伝えたいんです」。この手法は定着して長く,指示書を綴じた大型ファイルはすでに4冊目になっている。

写真:室田所長直筆の改善指示書

室田所長直筆の改善指示書。資材の置き方など内容は驚くほど具体的

写真:改善後の作業エリア

改善後の作業エリア。資材の整頓によって作業動線が確保され,見通しもよい

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職長に聞く 朝礼の合理化,LSDFの結成,協力会社の自主性に委ねる快適な職場づくりは職長たちにどのように受け入れられたか。

写真:三恭工業 大橋史周 主任

三恭工業 大橋史周 主任

写真:ソニック 田中 勇 ゼネラルマネージャー

ソニック 田中 勇
ゼネラルマネージャー

写真:隆一産業 小池啓仁 さん

隆一産業 小池啓仁 さん

大橋 朝礼を朝会に切り替えると聞いて,各協力会社の作業員が8時に出勤するのか心配でした。いざやってみると皆遅れずに来てくれました。

田中 朝礼の合理化にともない,サブリーダー制を敷くことになりましたが,職長が朝会に出ている間は彼らが各専門職を主導するので効率的です。

小池 朝の作業時間が30分増えたことで帰りの時間が早まりました。皆のモチベーションも上がって気持ちよく働けています。

田中 現場は3つのゾーンに分かれていて,それぞれ専門職が出入りしています。私たち万能工は現場全体が仕事場なのですが,あるとき消化しきれないほどの“はざま”作業が発生しました。そこで一部を分担してもらえないかと他の職長に持ち掛けたことが,LSDFへと発展しました。

大橋 私たち3人はLSDFのメンバーです。働きやすい現場にしたいという所長の希望に私たちも賛同し,はざま作業を率先して行う環境を皆でつくっていきました。

小池 内装業者は当社を含め,現在合計4社入っているのですが,これほど仲良く仕事する現場はありません。とにかく情報交換が活発で,委員会活動も会社間の交流が生まれるいい機会になっています。

大橋 委員会活動に割く時間も,例えば20分ほどの間に「ちょっとやりますか」という感じでできるのでそれほど負担になりません。

田中 サブリーダー制をとっていることで,作業員の自主性も育まれています。今後も協力会社が増えていきますので,さらに輪を拡げていきたいと思います。

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