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特集 紀伊半島大水害からの復旧 自然に挑んだ赤谷地区の10年 技術連携で魅力ある建設業界へ

2011(平成23)年9月,台風12号による豪雨で,紀伊半島では3,000ヵ所を超える斜面崩壊が発生した。
赤谷(あかだに)地区(奈良県)では,大量の崩壊土砂が川を堰き止め,
湛水容量約108万m3の天然のダムを形成。
当社が対策工事を担ってからも毎年のようにダム湖が越流し,斜面崩壊を繰り返した。
度重なる困難の中で活路を切り拓いたのは,人々の生活を守るインフラをつくるという使命感と,
全社一体となって高め続けた技術力だ。
今年3月,一連の対策工事は最終局面を迎えた。
気候変動に伴う豪雨災害の激甚化・頻発化が顕著となっている今,
赤谷地区の10年から,国土強靭化のため挑戦を続ける当社の姿をレポートする。

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過去に例のない豪雨をもたらした平成23年台風12号(紀伊半島大水害)

奈良県,三重県,和歌山県の3県にまたがる紀伊半島は,面積の大部分を紀伊山地が占め,世界遺産の熊野三山や国立公園などの景勝地に富む。山・川・海の豊かな自然が広がるこの地域に,平成23年台風12号は猛威を振るった。

2011年8月25日にマリアナ諸島近海で発生した台風12号は,発達しながらゆっくりと北上し,9月3日10時頃に高知県東部に上陸,その後も北上を続けた。紀伊半島では8月30日17時から9月5日の総降雨量が広い範囲で1,000mmを超え,奈良県上北山村では総降雨量が1,800mmを超えた。総降雨量が年間降水量平年値の6割に達する記録的な大雨となった。

図版:dmy

また,崩壊土砂の総量は東京ドーム約80杯分にあたる約1億m3,豪雨による大災害としては戦後最大規模を記録した。奈良県・和歌山県では深層崩壊※1によって河道閉塞が17ヵ所形成され,そのうち今後の降雨などに伴う越流・決壊が生じた場合に甚大な被害が生じるおそれのある地区が5ヵ所確認された。

奈良県五條市の赤谷地区はそのひとつ。大雨により崩れ落ちた約1,138万m3の崩壊土砂が赤谷川を堰き止め,河道閉塞を引き起こし,湛水容量約108万m3という過去最大規模の天然のダム(湛水池)を形成した。越流や河道閉塞決壊による土石流発生への警戒のため,下流域20kmの範囲に避難指示が出された。

※1 山崩れ・がけ崩れなどの斜面崩壊のうち,すべり面が表層崩壊よりも深部で発生し,表土層だけでなく深層の地盤までもが崩壊土塊となる比較的規模の大きな崩壊現象

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図版:被災直後の赤谷地区

被災直後の赤谷地区

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地球温暖化と大雨リスク

近年進行している地球温暖化と大雨のリスクは相関性があるのだろうか。

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によると,大気中の温室効果ガス濃度の増加に伴い世界的な気温上昇が続いており,その影響で大雨・高温など極端な気象現象の発生頻度が増加していること,今後より一層強化した対策をとらなければ影響はさらに大きくなることが報告されている※2

気象庁の報告からも,日本の雨の降り方に変化が生じていることが分かる。日降水量100mm以上および200mm以上の大雨の発生頻度,1時間降水量50mm以上および80mm以上の短時間強雨の発生頻度はいずれも増加している一方で,降水日数は減少している。地球温暖化に伴い,日本においては大雨や短時間強雨の頻度が増加し,極端な降水の強度も増す傾向にあるが,雨がほとんど降らない日も増加しており,雨の降り方が極端になってきている※3

※2 2018年に公表されたIPCCの「1.5℃特別報告書」,2019年に公表された「土地関係特別報告書及び海洋・雪氷圏特別報告書」参照

※3 「日本の気候変動2020(詳細版)」参照

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図版:短時間強雨の年間発生回数の経年変化
図版:雨の強さと降り方

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