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事業フェーズでひもとくPFIのマネジマント

PFI事業への取組みは,総合建設業の視点から見ると,
提案,設計,建設,維持管理・運営の4つのステップに分けられる。
当社は,各段階で最適なパフォーマンスを創出するべく,
事業のマネジメントを行っている。

図:STEP1〜STEP4

PFI事業では,まず公共部門側で対象となる公共サービスが,従来型とPFIを導入した場合とで客観的に比較・評価される。その結果,PFIの導入が最適であると判断されると,特定事業として民間事業者選定のプロセスに入る。

多様なニーズに応える体制づくり

当社には,PFI事業に必要な法律,ファイナンス,事業プランニングに関する多様な知識・経験を持つ専門スタッフが揃う。PFI事業で出件が予定されている案件について,事業実施を具体化するために,設計,施工,維持管理・運営の各業務を見通した事業プランニングを行う。特に資金計画面では,資金調達・借入金返済計画・税務対策のノウハウや,従来のPFI事業への取組みで培った総事業費の積算ノウハウを活用するなど,高度な事業計画を構築する体制が整っている。

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STEP1 Proposal 提案

PFI事業となった公共施設整備について,
公共部門が決定したサービス水準を満たす最良の提案を行う。

最適な事業パートナーをつなぐ

提案段階は,大きく「情報収集」「コンソーシアム組成」「提案業務」の3つのフェーズからなる。中でも重要なのはPFI事業の事業スキームのコアとなるコンソーシアム(複数の企業,団体からなる事業主体)組成で,事業特性,競合関係や情報収集を踏まえて,最適なコンソーシアム組成を目指す。当社は,情報収集段階から幅広い組織的・人的ネットワークで,共同事業者,各種コンサルティング会社,出資者,金融機関,機関投資家,運営会社などの最適な事業パートナーをつなぎ,コンソーシアム組成をサポートしている。

PFI事業では,施設整備業務での提案が維持管理・運営など他業務に影響を及ぼすため,事業全体の費用や効果を検証し提案書に根拠を明示することが必要である。当社は,都市再開発などで培った事務局運営ノウハウも生かし,コンソーシアムの総合力発揮に向けた調整・推進役として提案段階のマネジメントを行っている。

図:コンソーシアム組成をコーディネイトする

コンソーシアム組成をコーディネイトする

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STEP2 Planning/Design 設計

要求水準書,提案書,事業契約書に基づいて,
民間事業者の創意工夫で,十分な品質でコストも抑えた設計を行う。

設計の創意工夫で実現するPFI

PFI事業における設計業務は,VFMを実現する上で特に重要である。施設やサービスが満たすべき性能水準を規定する「性能発注」により,民間事業者はその条件を満たす範囲内であれば,独自に創意工夫を発揮することができる。

当社は,独自のバリューエンジニアリング(価値工学)手法を生かし,顧客や時代のニーズに的確に応えて,様々な分野で設計実績を保有している。実績が多い教育文化施設,医療施設,庁舎・宿舎,研究施設,観光施設,廃棄物処理施設などは,PFI事業での整備が期待される分野だ。

PFI事業では,近年の環境配慮の高まりを受けて,積極的に環境共生のエンジニアリングを取り入れることが求められている。また,長期の維持管理・運営の視点から,ライフサイクルコストに基づいた最適なライフサイクル設計も必要である。

当社では,これら設計段階においても,事業全体を通じたマネジメント役として設計のみならず各業務間の調整をはかり,最適な設計となるよう推進している。さらに施工部門の生産計画とも連携した合理化施工で,十分な品質でコストも抑えた施設の実現を目指している。

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STEP3 Construction 建設

品質・工期・コストの管理を徹底し,施工の合理化と工期短縮を図りながら,
次世代に残る質の高い建造物をつくる。

工期・コストを守る実績とネットワーク

PFI事業における施設整備では,老朽化した庁舎や医療施設など,既存の公共施設の建替え・更新というケースが多い。公共施設のサービス機能の継続性の観点から,同一敷地内での段階的建替え工事や,「居ながら」の改修・改築工事といった,利用者の動線確保に配慮した,複雑な仮設計画が求められる。また,長く利用される公共施設として,施工段階において高い品質管理能力が求められる。

当社は,免震・制震,リニューアル,省資源施工などの多くの施工技術と実績を保有している。また,全国各支店及びグループ会社のネットワークにより,適切な資材・機器調達と,施工の省力化工法の開発,機械化・自動化,情報化施工などの技術開発の蓄積により,工期や予算の管理徹底を図っている。

PFI事業では,民間資金の調達によって事業を推進することが大きな特徴であり,資金の出し手である金融機関が行う融資(プロジェクトファイナンス)を円滑に行うためにも,工期やコストの厳守が至上命題となる。建設会社としての実績とPFI事業者としてのノウハウを生かし,建設段階のマネジメントを推進する。

写真:「居ながら」補強できる当社開発の「パラレル構法」

「居ながら」補強できる当社開発の「パラレル構法」

写真:制震装置(HiDAX)

制震装置(HiDAX)

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STEP4 Operation 運営

施設の竣工がPFI事業の「サービス」のスタートであり,
当社のネットワークと総合力を活かした維持管理・運営のサポートを行う。

ノウハウが生き続ける維持管理・運営

施設開業後の維持管理・運営は,良質な公共サービスを一定期間提供していくという大切な役割を担う。その間,様々な事業リスクへの管理手法が求められるため,当社はPFI事業のコンソーシアム組成で,その事業の維持管理・運営に最適のパートナーと協同。併せて当社のリスク管理ノウハウも維持管理・運営のマネジメントに発揮して事業を推進している。

当社では,開発事業部門の不動産事業のノウハウで,建物管理とテナント管理を一括して行うプロパティマネジメント業務なども行っている。推進中のPFI事業の中にはこうした実績を生かした維持管理・運営を自ら行っている事例もある。

PFI事業での良質な公共サービス提供のためには,事業推進の主体としてSPCを適正に運営していく,株式会社の経営ノウハウが必要となる。当社は,豊富なSPCの管理運営実績を生かし,関連部署の連携で会社経営上必要な業務を適切に推進。さらにグループ会社の技術力も生かして鹿島の総合力で取り組んでいく。

写真:次世代へ長く使われる公共施設

次世代へ長く使われる公共施設

写真:「PFI支店担当者・兼務者会議」は全国で展開するPFI事業のノウハウを蓄積する重要なネットワーク

「PFI支店担当者・兼務者会議」は全国で展開するPFI事業のノウハウを蓄積する重要なネットワーク

図:省エネルギーや業務合理化が求められるPFI施設で,今後の活用が期待される鹿島建物総合管理のビル省エネ管理システムEneMASTER

省エネルギーや業務合理化が求められるPFI施設で,
今後の活用が期待される鹿島建物総合管理のビル省エネ管理システムEneMASTER

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Project×Person 国立大学初の病院PFI事業を推進

写真:筑波大学附属病院

筑波大学附属病院再開発に係る施設整備等事業

発注者:
国立大学法人 筑波大学
事業主体:
(株)つくばネクストパートナーズ
事業場所:
茨城県つくば市
事業内容:
病院の新棟設計・建設,既存棟改修,事業内容:維持管理,病院運営支援業務等
事業方式:
BTO方式,一部RO方式
事業期間:
2009年2月~2032年3月末

この事業は,先進的医学教育の提供,地域との密接な連携体制の構築,病院経営の更なる健全化,高度先進医療の実現,臨床医学の力となるべき研究の推進を目標とする国立大学初の病院PFI事業である。

施設整備では,筑波大学附属病院内に,高機能手術室や,集中治療病床,救急部,急性期病棟などで構成される新B棟を新設する。このほか,新B棟と既存A・B棟を結ぶホール・渡り廊下も整備。2012年度の開院予定を目指し,今年6月に着工した。

新B棟完成後は,約200床の病棟を含む既存棟4棟を順次改修(改修完了2015年度予定),総計800床を整備し,同大学附属病院の高度医療体制の強化を図る。

事業全体と将来を見据えたマネジメント

PFI事業での情報収集は,建設工事と違い情報源も多種多様で,対応する期間も長期にわたります。また,情報収集は事業全体を見据える必要があるため,当社の専門外領域にも積極的に取組み,コンソーシアム組成を経て,提案・応募まで継続して行います。

本事業では,茨城県に地盤があり企業立病院を経営する日立製作所グループ,全国でヘルスケア事業に取り組む三菱商事,エネルギーマネジメントを行う東京電力を事業推進の強力なパートナーに,当社を含む4社でコンソーシアムを組成しました。同様に,社内体制でも明確な役割分担を行いました。本事業ではPFI推進部がプロジェクトマネジメント(PM)部署となり,発注者に対応する営業本部,施設整備業務を推進する関東支店と建築設計本部,医業経営ノウハウを提供する営業本部医療福祉推進部が連携して対応する体制を整えました。

提案では,発注者や利用者に「より良いものを提供する」ことを目標に,いかに競合グループに差別化できるかに加え,落札後にコンソーシアム企業の事業収益につながる提案も求められます。そのためにも単なるアイデア提案ではなく,事業全体の効果や費用を検証し,根拠を伴った提案をすることが必要となります。

鹿島は,設計や施工など保有する専門技術・ノウハウとマネジメント力を駆使し,円滑な事業推進に寄与していきます。

写真:開発事業本部 PFI推進部担当部長 吉田 岳

開発事業本部
PFI推進部担当部長
吉田 岳

「成長するPFI」を設計で推進する

PFIでは,事業目標を元に作成された要求水準書と提案内容を設計条件として実施設計を行います。本PFIの特徴は「成長するPFI」で,要求水準書作成から実施設計完了までのタイムラグを解消し,最新の医療環境にマッチする病院をつくる試みです。施設の使い勝手について「事業者決定後,医師・看護師・その他病院関係者にヒアリングを行い,その結果を整理し,実施設計に反映させる」ことが要求水準として求められています。病院の診療終了後に,数ヵ月にわたり2度のヒアリングを行うと共に,病室のモデルルームを作成し実地検証を行うなど,最新医療環境の実現に向けた実施設計を行いました。

建築設計は岡田新一設計事務所,構造・設備設計は佐藤総合計画が担当し,当社は,PFI構成企業として施設整備業務及び設計業務のコーディネイトを担当しています。PFI事業は,契約段階で事業費が確定するので,ヒアリングによる追加要望や,要求水準書の潜在的ニーズなど「成長するPFI」の実現と「コスト」の調整は非常に難しい作業です。事業者決定後,1年以上,大学のPFI事業担当者はじめ関係各部門との調整を行っています。現在は大学,SPC共に「いい病院をつくろう」という共通認識で,無事新棟の着工を迎え,関東支店施工部門と連携しPFI事業を推進しています。

写真:建築設計本部 建築設計グループリーダー 海野裕彦

建築設計本部
建築設計グループリーダー
海野裕彦

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Project×Person 実体のあるSPCで建設をまとめる

写真:参議院新議員会館

参議院新議員会館整備等事業

発注者:
参議院,国土交通省
事業主体:
HOC議員会館PFI(株)
事業場所:
東京都千代田区
事業内容:
議員会館の設計,建設及び維持管理・運営
事業方式:
BTO方式
事業期間:
2006年3月から約14年間

(2010年7月開業)

東京建築支店よりPFI事業会社のSPCに出向しています。

本事業ではSPC執行役員3人を常駐させ,契約の当事者(参議院,国土交通省)と建設工事に関わる設計者,施工者の間に入って調整しています。事業契約書,要求水準書,提案書を付き合わせ,本当に望んでいるものを読み解き,調整して一つにまとめるのです。(石山執行役員)

この事業では,既存の機能を維持しながら段階的に建て替えていきます。議員活動に必要な機能が停止しないよう配慮するなど特殊要件も多く,旧館からの引越し業務なども含まれていました。今年6月30日引渡しで,7月1日開業という,運営事業の準備期間が全くないスケジュールへの対応は大変で,建設JVと維持管理・運営企業との密な連携が不可欠でした。また様々なPM業務では,開発事業部門で培ったノウハウが活かせました。(石塚チーフ)

発注者側との定例会議は既に100回以上になりますが,各協力会社任せにせずSPCとして十分な意思疎通を図り,共通の目的「いいものを作る」ことへの信頼関係をつくりました。ペーパーカンパニーでない実体のあるSPCだからこそと考えます。建設段階の上流や下流というひとつながりのPFI事業の複雑さをどうやって紐解くか,そこには統合するマネジメントの視点が求められます。(石山執行役員)

写真左:HOC議員会館PFI(株) 執行役員・総括代理人 石山 勉/写真右:事務局チーフ 石塚達也

HOC議員会館PFI(株)
執行役員・総括代理人
石山 勉(写真左)
事務局チーフ
石塚達也

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Project×Person 長期の事業運営を支え合う事業パートナー

写真:神戸市摩耶ロッジ(オテル・ド・摩耶)

神戸市摩耶ロッジ整備等事業(オテル・ド・摩耶)

発注者:
神戸市
事業主体:
当社
事業場所:
神戸市灘区
事業内容:
宿泊施設のリニューアル,維持管理・運営
事業方式:
BTO方式
事業期間:
2001年3月開業後20年間

阪神・淡路大震災で閉鎖されていた神戸の国民宿舎再生のPFI事業で,当社は,集客や運営のノウハウに強みをもつジェイコム(現JTBコミュニケーションズ)とパートナーを組み,PFI事業者に選定されました。SPCは組成せず,当社が事業主体となり資金調達と施設の増改築工事を担当。ホテルの維持管理・運営に関しては,ジェイコムに業務委託しています。

2001年7月のグランドオープン以来,摩耶山頂という恵まれた立地に,オーベルジュスタイルの南欧風プチホテルが誕生したということで,数多くの方々にご利用いただき,年間宿泊者数は1万5,000人前後を維持しています。講習会や演奏会の場としても施設を提供し,年間来館者数は3万人に上ります。10年目を迎えた今年7月,内装・備品の入替えや環境に配慮したLED照明の設置など,大規模な模様替えが行われ,益々施設の魅力が高まりました。

当社は,今後発生が予想される大規模修繕も含め,維持管理・運営上の様々な課題で事業パートナーと協力し,官と民の協議・調整を実施するなど,20年間の長期にわたる事業運営をマネジメントしています。

写真:関西支店営業部長 谷口昌利

関西支店営業部長
谷口昌利

写真

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改ページ
発掘!旬の社員
鹿島の見える風景作品集

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