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Chapter II 「かえす」 下水道インフラをいかしたリサイクル 北広島市・バイオマス混合調整施設建設工事

3月,下水汚泥と生ごみの混合消化システム第1号が北海道北広島市に完成した。
既存の下水処理場を活用して,下水処理とごみ処理を同時に行い,
肥料として自然にかえす。発生するガスを熱エネルギーに変換することで化石燃料使用量を削減する。
低炭素社会の実現へ向けた夢のプロジェクトの誕生までを追った。

地図

図:完成予想パース

完成予想パース

工事概要

バイオマス混合調整施設建設工事

場所:
北海道北広島市
発注者:
北広島市
設計・監理:
鹿島・中山・田島異工種特定共同企業体
規模:
RC造 B1,2F 延べ1,304m2
工期:
2009年6月~2011年3月
(北海道支店JV施工)
改ページ

下水処理とごみ処理を一体化

北広島市は,石狩平野のほぼ中央に位置する人口約6万500人,札幌のベッドタウンである。北広島市下水処理センターは,現有能力約2万6,830m3/日の下水処理場。乾燥汚泥の農地利用を行い,発生する消化ガスはすべて施設のエネルギーに活用しているが,それでも年間約100klの重油を汚泥の乾燥と消化槽の加温に,重油代が維持運営の負担となっていた。

一方,ごみ処理では現在使用している最終処分場の埋立て容量が逼迫。同じ時期に周辺3町との組合事業であるし尿処理場の老朽化対策もあり,生ごみとし尿・浄化槽汚泥を受け入れて,一括処理するためのバイオマス混合調整施設を設置することにした。

写真:バイオマス混合調整棟

バイオマス混合調整棟

コストとCO2を減らす

下水処理場内に新設したバイオマス混合調整棟では,家庭や企業から出る生ごみ(17t/日)がパッカー車で搬入されると,破砕・異物除去後に下水汚泥(131m3/日)と混ぜ,生成された混合物を既存の消化槽に送り込む。

施設の特徴は,▽既存の下水処理施設を活用して管理を一元化▽発生量が増えた消化ガスを汚泥乾燥などのエネルギーとして活用▽発生する汚泥を肥料として利用―などである。下水処理とごみ処理を一体化することで,建設費・維持運営費の縮減とCO2削減を実現する。

図:処理フロー

処理フロー

改ページ

異物を取るイブトロン®

生ごみなど生物由来の資源であるバイオマスは,メタン発酵でバイオガスにすることでエネルギー活用ができる。しかし,異物が混入すると,肥料の品質や既設処理センターの各設備に影響を及ぼすのが課題だった。

当社は,生ごみ異物分別・破砕装置「イブトロン®」を開発。ビニール袋のまま収集,運搬された生ごみから,ビニール袋やスプーンなどの異物を精度よく分別し,発酵に適した大きさに破砕する。これにより後段の消化槽で効率的かつ安定した消化ガスが生成できる。

この施設は,国土交通省が主導するLOTUS Projectの「グリーン・スラッジ・エネルギー技術」を適用した国内で初めての施設である。この消化システムは「下水汚泥と生ごみ等バイオマス混合消化システム(COSBIOシステム®)」として,既存処理施設を有効活用でき,CO2も削減するなどの点から注目されている。

※LOTUS Project:
Lead to Outstanding Technology for Utilization of Sludge Projectの略。下水処理に伴い必然的かつ永続的に発生する下水汚泥の資源化を推進するため,コストダウンを目標として掲げた技術開発プロジェクト

写真:生ごみ受入れホッパ

生ごみ受入れホッパ

写真:生ごみの調整移送設備

生ごみの調整移送設備

写真:生ごみ受入れ状況(市民へ配布した生ごみ専用袋)

生ごみ受入れ状況(市民へ配布した生ごみ専用袋)

図:イブトロン®の構造

写真:生ごみ破砕分別機イブトロン®

生ごみ破砕分別機イブトロン®

写真:下水道汚泥からつくられた肥料

下水道汚泥からつくられた
肥料

写真:農業や造園に利用される

農業や造園に利用される

改ページ

Person 設計・施工を一貫して担当

LOTUS Project適用第1号施設を推進するにあたって,設計・施工のキーパーソンとなったのが菅野一敏工事課長だ。

LOTUS Projectの技術開発当初より下水汚泥と生ごみの混合消化に関する研究開発の担当者となっていた。現場配属直前には設計担当者として関わった。「設計から携わることができたので,現場もスムーズに従事できました」。この工事では,土木・建築工事とプラント工事の同時施工で,工程管理が最重要課題となった。「破砕分別機や生ごみ受入ホッパの据付では,建築工事の躯体打設工程の合間に先行搬入するなど,JV内外の綿密な調整が必要でした」と無事に実現して胸をなでおろす。

センターの既存処理施設は24時間運転している。工事では,早朝に施設を停電させての作業や,運転中の配管の汚泥を抜いて既設配管を切り回す作業などがたびたび必要となった。「下水処理センターの方々のご協力により,無事に作業を完了できました。感謝しています」。

写真:北海道支店 菅野一敏 工事課長

北海道支店
菅野一敏 工事課長

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