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1号機:燃料取り出し 施工

水素爆発には至らず建屋が健全だった2号機原子炉建屋。
現在,原子炉建屋を残したまま使用済燃料プールから燃料を取り出す工法の設計・施工が進んでいる。
かつてないアプローチでの燃料取り出しに挑む現場をリポートする。

東京電力ホールディングス「2号機燃料取り出しに向けた工事の進捗について」(2023年5月25日)をもとに作成

既存建屋を活用して

建屋全体が残る2号機は,原子炉建屋を解体せずに使用済燃料プールからの燃料取り出しを実施する。作業時に外部へ放射性物質が飛散しないよう建屋の南側に燃料取り出し用構台を設置した上で,燃料取扱設備を横からオペフロにアクセスさせて燃料を取り出す。東芝と当社が工法の検討を進め,2019年10月に採用が決まった。「作業時のダスト飛散リスクを最小限に抑えられる工法です」と,設計業務を担う原子力部原子力設計室の小川喜平グループ長は特長を説明する。

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当社は南側構台・前室,燃料取扱設備が走行するランウェイガーダの設計・施工を担当し,燃料取扱設備の開発は東芝が行う。燃料取扱設備はブーム式クレーンの使用が予定されていて,燃料を取り扱う方法として国内では初めてとなる。小川グループ長は,「高濃度の放射性物質を扱うクレーンの設計が成り立つ構台やランウェイガーダを導き出すことが私たちのミッションです」と自らを奮い立たせる。

大きな課題は耐震性能を満たすこと。高線量の原子炉建屋内での作業は限定的となるため,ランウェイガーダは構台からはね出す格好となる。そのランウェイガーダ上を約310tの燃料取扱設備が稼働できる性能を保ちながら,地震発生時は原子炉建屋と緩衝しない構造にしなければならない。小川グループ長は,当社関連部署やグループ会社にも協力を仰ぎながら設計を進め,昨年4月,原子力規制庁から実施計画の認可を得た。「制震技術に強みを持つ鹿島グループだからこその設計が実現できたと思っています」。

アンカーボルトの一部には自身も開発に携わった高強度後施工アンカーボルト「FMボルト」が初適用された。アンカーボルトの取付け本数を削減し,作業員の被ばく低減を図る。「鹿島の技術を駆使し,現地の作業量を少しでも減らしていく。現場の要望も大切に,今後の遮蔽やランウェイガーダ設計を進めていきます」。

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ここからが本番

現場は燃料取り出し用構台の鉄骨建方工事真っ盛りだ。構内での作業量を削減する目的で,構外ヤードで鉄骨をユニット化し,現地に運び組み立てる。当初は3号機のカバー設置工事同様,県南部のいわき市小名浜にて部材を地組みしてから海上輸送することを検討していたが,「東京電力さんからのご提案で発電所の隣接地を地組みヤードとして使わせてもらい,ユニットを陸上輸送しています。施工効率も上がり,構台部のユニットは順調に組み上げられています」。そう話すのは燃料取り出し用構台設置工事を束ねる谷山元祥所長。2015年に副所長として着任,2021年から所長を務める。

※陸上輸送は別途業者が担当

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当社は2014年から2号機周辺に施工ヤードを確保するためのガレキ撤去工事を行ったのちに西側構台を施工。その後,建屋南側にて燃料取り出し用構台設置に向けた地盤改良準備工事(ガレキ撤去など),地盤改良工事とステップを経る過程で,廃炉特有の施工条件と長く向き合い続けた。地盤改良工事は遠隔施工で行われたが,障害物や別途工事の進捗状況に応じて施工手順を日々調整した。地盤にコンクリートを打ち込む約3,000m3のマットスラブ工事は,コンクリートミキサー車が構内入退場に伴う検査に要する時間や線量管理を踏まえると,1日の進捗は早くても一般的な工事の半分以下。手続きや調整には倍以上の労力がかかった。

構台のユニットを組み終えると,続いて前室の建方作業が始まる。「ここまで長かったが,前に進まなきゃいけないという気持ちを持ち続けました。ようやく形が見えてきた。ここからが本番です」(谷山所長)。

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図版:遠隔操作重機(青色)を使用した地盤改良工事(2022年3月)

遠隔操作重機(青色)を使用した
地盤改良工事(2022年3月)

図版

フェーシング工事などにより内部被ばくのリスクがなくなったため,現在フルフェイスマスクやタイベックといった保護具は不要となっている

図版:地組みが進む構外ヤード(2023年3月頃)

地組みが進む構外ヤード(2023年3月頃)

図版:ユニット建方の様子(2023年4月)

ユニット建方の様子(2023年4月)

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図版:南東から見た構台(2023年5月)

南東から見た構台(2023年5月)

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