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「揺れ」からまもる技術 Ⅱ 免震

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「免震構造」は,積層ゴムとダンパの単純な組合せで,
性能的に最高ランクの安全・安心を提供する。
1986年に竣工した免震建物第1号から四半世紀,新築・免震補強で数多くの実績を誇る
当社の,免震構造の様々な展開をリポートする。

免震構造とは

免震構造は,建物と基礎の間に積層ゴムとダンパを挟み込んで,地震の振動が伝わる地盤から建物を構造的に「縁を切り」ゆったりした揺れに変換する。建物内の設備・機器の損傷や家具什器の転倒防止などにも高い効果がある。阪神・淡路大震災では,神戸地区に建てられていた2棟の免震建物の被害がほとんどなく免震建物の安全性が実証され,その後医療施設や集合住宅を中心に急速に普及した。当社は,全国にある約2,600棟の免震建物のうち新築で約240棟,免震補強で約20棟の設計や施工に携わっている。

計画上の留意点としては,地震の際,建物全体が大きく水平移動するため,敷地余裕が必要となる。また高層ビルなどの柔らかい建物や細くて高いビル,軟弱地盤では共振の恐れもあり,免震設計上の工夫や技術が必要とされる。

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図:免震建物の揺れの比較(東日本大震災)

免震建物の揺れの比較(東日本大震災)

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鹿島のおもな免震技術

1986年,当社は技術研究所音響実験棟(東京都調布市)の新築で免震構造に先駆的に取り組む。阪神・淡路大震災直後には,当時最高高さ14階建の免震集合住宅を建設し,免震構造を発展させた。災害時に防災拠点となる庁舎などの公共施設での耐震改修では,庁舎を使いながら免震補強する技術「居ながら®免震」で公共サービスの継続性を確保している。壁式構造と免震構造を組み合わせた壁式免震構造HIスマートウォールを開発し,安全で開放的な集合住宅を実現。さらに,免震構造に適さないとされていた超高層集合住宅においても地震時の建物の揺れによる積層ゴムにかかる引抜き力に対応するウインカー工法®を開発するなど,超高層ビルへの免震構造適用の範囲拡大に貢献してきた。

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図:ウインカー工法®

ウインカー工法®
圧縮力には強いが引張力に弱い積層ゴムの破損を防止するための積層ゴムの据付工法

創意と工夫で「免震」を実現

「単純な発想・原理による構造なので,対象は実に様々に広がってきている」というのは,建築設計本部構造設計統括グループ・竹中康雄シニアマネージャー。免震建物を数多く手掛けたエキスパートである。より高い居住性のために開発された免震構造が,低コスト・短工期が強く求められる物流倉庫や生産施設にも普及しつつある。生産能力の維持や保管物の保全が目的だ。プロロジスパーク市川I(千葉県市川市)では,「免震」の長所とコスト・工期の両立が課題となった。免震構造においてコストが嵩む要因で,免震装置の土台となる基礎部分の設計では,「免震装置と解析法の開発によって,信頼性のあるより合理的な免震基礎構造を実現できた」。

図:スマート免震基礎工法®

スマート免震基礎工法®
免震装置が設置される杭頭部分で,周囲を支える基礎梁部分の設計を合理化し,掘削土を削減し工期を短縮する

写真:建築設計本部構造設計統括グループ・竹中康雄シニアマネージャー

建築設計本部
構造設計統括グループ・
竹中康雄シニアマネージャー

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写真:キャピタルマークタワー(東京都港区)/ウインカー工法®で超高層建物を免震化

キャピタルマークタワー(東京都港区)/ウインカー工法®で超高層建物を免震化

写真:プロロジスパーク市川I(千葉県市川市)/スマート免震基礎工法®による営業倉庫

プロロジスパーク市川I(千葉県市川市)/スマート免震基礎工法®による営業倉庫

写真:加賀レジデンス(東京都板橋区)/壁式免震構造HIスマートウォールで開放的な住空間を提供

加賀レジデンス(東京都板橋区)/壁式免震構造HIスマートウォールで開放的な住空間を提供

写真:村上市庁舎(新潟県村上市)/居ながら®免震補強

村上市庁舎(新潟県村上市)/居ながら®免震補強

写真:埼玉医科大学国際医療センター(埼玉県日高市)/基礎免震構造

埼玉医科大学国際医療センター(埼玉県日高市)/基礎免震構造

写真:多摩美術大学附属図書館(東京都八王子市)/免震構造の採用でアーチ型の設計デザインを実現

多摩美術大学附属図書館(東京都八王子市)/免震構造の採用でアーチ型の設計デザインを実現

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column 3.11 倉庫の荷物をまもった免震効果

阪神・淡路大震災の教訓から冷蔵倉庫の免震化を計画しました。1995年11月着工,1996年8月竣工で,国内初の免震構造の自動ラック倉庫です。

地震発生後,大津波の警報があり,すぐに倉庫内で作業していた社員・作業員全員が事務所棟の屋上に避難しました。荷捌きするプラットフォームには最高高さ5mくらいの津波が何度も押し寄せていたようです。津波が引いてから建物を確かめると,普通の冷蔵庫では海水が中に入り込んで荷崩れを起こしていました。一方,免震の自動ラック倉庫はあれだけの揺れにもかかわらず,倉庫内には一つの荷物も落ちていなかった。これには正直驚きました。倉庫の密閉性もよく,荷崩れや海水の荷物への被害はまったくなかったのです。発電機での電力供給と電力事業者の早期電力復旧もあり,庫内は冷えたままで商品には問題なく冷蔵保管でき,5月に出荷を再開しています。今回の地震で免震倉庫の効果がしっかり証明されました。

写真:日水物流 仙台港物流センター(仙台市宮城野区) 日水物流・前田昌秀顧問

日水物流
仙台港物流センター
(仙台市宮城野区)
日水物流・前田昌秀顧問

写真:日水物流・仙台港物流センター

日水物流・仙台港物流センター

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