瓦や漆喰の調査・解体の様子を、写真とともにご紹介します。
大天守が鎮座する姫山の高さは45.6mで、鯱瓦は大天守の最上部46.3mの所にあります。それは海抜91.9mの高さとなり、まさに江戸時代の超高層ビルです。
屋根の各部分は、
大棟部、平部、軒部、
降棟部、掛部、隅棟部、軒隅部 、破風等
となります。
これらが組み合わさり、美しい「五重の屋根」となっています。
解体を始める直前の大天守最上部の屋根です。
東西面にある入母屋破風が美しい、「五重の屋根」です。
阿吽の一対での大棟飾の鯱瓦
貞享四年(1687年)の旧鯱に倣い、昭和大修理に造られました。
背面から見るとこのようになっています。
この鯱瓦、大天守だけでも11尾います。
鯱瓦を修復するため、トローリとチェーンブロックを使い、
約50年ぶりに大天守から降ろしました。
鯱瓦を保護し、ご苦労さまのお礼をこめて、白いさらしを巻きリボンをつけました。
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ロープと金車による鯱つり上げ・降ろし
ロープによる鯱降ろし
作業床へ鯱降ろし
昭和大修理の丸太組による素屋根東西断面図
昭和の大修理 素屋根 桟橋
写真提供:姫路市、姫路市立城郭研究室
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鯱瓦の重量測定をしているところです。中は空洞ですが、東の鯱で278kg、西の鯱で296kgの重さがありました。
鯱瓦の底から見た様子です。内部は空洞になっており、芯木で固定されていました。右奥にみえるのは外した尻尾とひれです。
大天守から降ろしたものを再度組み立てました。優美な姿!これから状態を調査していきます。
鯱瓦の一尾は、二の丸の「リの渡櫓」へ展示しますがその前に現寸の型取りをしているところです。江戸時代、明治時代に制作された二尾が現在展示されており、ここへ今回の昭和時代の物も並べます。 最終、再復旧の時に戻し、据えつけます。
鯱は頭が虎のような獣で、体が魚という想像上の動物です。火伏せの霊があると言われ、阿吽一対の棟飾りを火よけのまじないとしていました。
2尾だけのような印象がありますが、実は大天守だけで合計11尾。大きさは異なりますが、各重の屋根にいます。
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大天守の屋根瓦を解体することになりました。
まずは総数80,506枚、50種類以上もある瓦に番付をしていきます。瓦を外したあとは、屋根の形状や寸法、また年代等々の調査も行いました。
大天守から外した屋根瓦は再利用するため、破損しないよう丁寧にかつ慎重に解体していかなければなりません。 現状葺きの伝統技術を継承すべく確認・記録しながら進めていきました。
瓦解体前に、各部、各面、方位順に1枚1枚番付けを行い、元の瓦の取付場所が、解体後もわかる様にします。
鯱瓦の撤去後、大棟部にある棟込瓦の撤去を行いました。棟込瓦(むねこみかわら)とは、雁振瓦(がんぶりかわら)、熨斗瓦(のしかわら)、輪違瓦(わちがいかわら)、菊丸瓦(きくまるかわら)、形違いの4種で構成されています。
屋根瓦葺き状況の反り、屋根下地(土居葺き面)の反りを測定し、記録に残しました。
大棟部の瓦をはずしおわると、次に五重屋根部分にある瓦(平部+降棟部+掛部+隅棟部+軒部+軒隅部)を撤去していきます。その後、瓦を支えていた葺き土も降ろしました。
解体した瓦は汚れや漆喰の付着等をケレン、ブラシ等で研磨し、除去します。
入母屋破風部の降棟部の瓦下には、取合い谷樋の雨水が流れるよう、瓦を金物で受けている様子がわかります。三角の屋根が直角・平行に重なると谷ができ、そこを雨水が流れ落ちますが、その先端にある降棟の瓦の曲線で谷樋を見えにくくしてあり、しかもその瓦の下を流れるように工夫がしてあります。このようにお城には先人の知恵がたくさん納められています。
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瓦の研磨後に、1枚1枚ブラシで水洗いを行います。
隅棟部の瓦を撤去後、先端にある隅鬼瓦の背面裏引き金物の状況です。これは鬼瓦の上部が前へ倒れないように、後ろ側の瓦の中に引き金物が取り付けてありました。
きれいになった瓦は、微妙なソリや曲り、寸法の違いを1枚1枚確認し、選別しながら整理していきます。
大天守五重屋根の各棟部に葺かれていた鬼瓦(おにかわら)、隅鬼瓦(すみおにかわら)、降棟鬼(くだりむねおに)、鳥衾瓦(とりぶすまかわら)、隅巴瓦(すみともえかわら)等々です。色々な名称の瓦がたくさんあります。
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火事・風雪から50年守り続けた鯱瓦の内側は芯木で支えられていました。
鯱を支えた2尾分の芯木が傷んでいたので、取替えることになりました。
千鳥破風、入母屋破風に鎮座している鯱瓦です。大天守にある鯱瓦(阿吽の一対)は新しく製作することになりましたが、それ以外の9尾は、既存のものをきれいにして再度取付ます。
大天守に11尾ある鯱瓦のうち、小さな鯱瓦と各種瓦固定用の釘、銅線類金物等の解体保管材はこのようにたくさんあります。
破風屋根の瓦を撤去しています。端にみえる棒が鯱瓦の芯木です。この上に鯱瓦が固定されていました。
鯱を支えた芯木を取替える為に、芯木廻りの土居葺きを撤去しました。
元に取付けてあった芯木の材質・形状・寸法を確認し、新しい芯木を製作しているところです。
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お城を火事・風雪から50年間守り、別名白鷺城と言わしめた屋根・壁の漆喰を解体前に既存の寸法・形状・塗厚・塗重回数・材料等々の調査をおこないました
屋根・壁の漆喰を解体しながら既存の塗厚・塗重回数・納め・材料等々の確認をしつつ、慎重に漆喰塗・荒壁土の撤去を進めました。
目視、打撃音、寸法実測等を漆喰の撤去前に行い、記録に残しました。
瓦の解体を行うにあたり、屋根瓦と壁漆喰取合い部の奥付け漆喰(現在で言う水切の役目)の撤去を進めました。
テストハンマーにて打撃音による浮き具合の確認を行い、クラックゲージによりひび割れの大きさと、その原因を調査していきました。
屋根瓦解体後、軒先の漆喰の撤去を行いました。
懸魚(げぎょ)、兎毛通(うのけどうし)、蟇股(かえるまた)の漆喰仕上り面の型取を行います。各時代の保存工事において、詳細な現状を実寸大で記録し、その技術や伝統を後世に引き継ぐことを目的としています。寺院仏閣にもあり、棟木の先端を隠すための美しい飾りです。
漆喰や土壁等を塗重ねた層は一般的に剥離が生じやすく、また場合によってはわずかな薄い空気層が出来ており、 叩いてみると、かすかに小太鼓の様な響きが返ってきます。土壁が健全で響きがあるところは漆喰を撤去し、詰まって響きがないところは浮きがないということです。
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壁漆喰の塗厚・塗重回数・下げ縄等々の状況を確認しながら漆喰・土壁等を慎重に撤去していきました。
入母屋破風の大千鳥部にある三花蕪懸魚(みつばなかぶらげぎょ)の漆喰を撤去しています。
軒先面の漆喰の浮きと小舞の取り付き・付着状況、そして、縄の劣化状況を確認しつつ、調査撤去を行います。
五重屋根入母屋破風の漆喰撤去後の小舞(漆喰を塗付ける為の縄を巻き付けた桟木)取付き状況です。
各材料の耐久性に問題がないか、事前に試験をしています。
五層壁の大壁漆喰塗、土壁撤去後の粗朶(そだ:木の枝で組んだ土壁の下地)の状況です。窓は漆喰塗替えの為に取り外しています。