狭隘型SMW機
「SDH85-K」
機動性に優れ、狭い作業帯での大口径の施工を実現
鹿島グループのケミカルグラウトが保有する狭隘型SMW機「SDH85-K」は、狭隘なスペースで大口径(Φ850・Φ900)の施工が行えるSMW機で、従来の三点支持式SMW機に比べ約半分の幅員で施工が可能です。
三点支持式SMW機が入れない狭隘な場所では、従来、単杭を連続的に打設し背面に止水工を行っていましたが、狭隘型SMW機SDH85-Kを採用することにより、一般部と同様な山留壁を施工でき、大幅な工期短縮とコスト軽減が可能です。クローラタイプを採用することで機動性に優れ、また、安定性も一般的なSMW機より向上した為、夜間の路上作業帯内や鉄道近接工事でも能力を発揮します。
- キーワード
- SMW、狭隘型、連続壁、大口径、土留壁、鉄道営業線近接
従来工法との比較
一般型SMW機では杭芯から9.5mの幅が必要なところを、狭隘型SMW機SDH85-Kは、半分以下の幅4.6mで施工することができます。
特長・メリットココがポイント
多様な現場に適用可能
- 杭芯からわずかな作業帯幅で施工可能
- 大深度の造成も可能(施工実績:40m)
- アースオーガーが選択可能(右表参照)
- 標準の攪拌スクリュー(L=6.75m)が使用可能
- 重心が低いため、一般の三点支持式SMW機よりも安定性が良い
適用実績
京王線調布駅付近連続立体交差
場所:東京都調布市
竣工年:2009年7月
発注者:京王電鉄
規模:壁厚850mm 深さ31.5m~40m
中央環状線五反田出入口
場所:東京都
竣工年:2011年2月
発注者:首都高速道路
規模:壁厚600mm 深さ20m
東京外環自動車道国分
場所:千葉県市川市
発注者:東日本高速道路
規模:壁厚900mm 深さ32~39m
学会論文発表実績
- 「大口径・低空頭・狭隘型SMW機の開発」,日本鉄道施設協会誌,2006年8月
- 「超小旋回型杭打機SDH85-Kの開発」,社団法人日本建設機械化協会,技術発表会,2006年10月
BCH(Bottom Circulation Hole)工法
超低空頭・狭隘な場所での場所打ち杭の施工が可能
都市土木施設のリニューアルや機能向上の工事では、低空頭・狭隘な場所での場所打ち杭の施工が必要です。そのような場所での従来工法としてはBH工法などの正循環工法やTBH工法などの逆循環工法が挙げられますが、杭の品質や狭い箇所での施工性に限界がありました。
そこで鹿島では、より低空頭・狭隘な場所で品質の高い杭の施工を可能とするBCH工法を開発※しました。
正循環工法は施工機械を小型化することが可能ですが、孔内全体に掘削土を浮遊させた高比重の安定液が循環するため、本設構造物基礎杭や沈下変位を許さない仮設支持杭を施工する場合、支持力性能において品質・信頼性が低いとされてきました。一方、逆循環工法は、常に孔内を低比重の良好な安定液で満たせるため、造成される杭の品質・信頼性は高く、本設構造物としての杭の造成に使用されてきましたが、施工機械が大きくなるため、超低空頭・狭隘な場所での適用性は劣ります。
BCH工法は、正循環工法であるBH工法を基本としながら、安定液の品質を向上させる機構を加えることで、逆循環工法と同等の支持特性を有する杭を造成することができる施工方法です。
特許登録済
- キーワード
- BCH工法、場所打ち杭、逆循環工法、リバース工法、超低空頭、狭隘、鉄道施設支持杭
BH工法(従来工法)との比較
BH工法(従来工法)
BH工法では、掘削ビット先端から安定液を噴出して掘削ずりを孔口まで追い上げ、孔口からサンドポンプにて排出するので、孔内全体に掘削土を浮遊させた高比重の安定液が循環します。そのため、孔壁にマッドケーキが形成されやすくなります。
また杭先端にスライムが沈降しやすく、完全なスライム処理が難しい工法です。
BCH工法
BCH工法では、BH工法と同様に掘削ビット先端から安定液を噴出して掘削しますが、掘削ビット直上に配置された揚泥管から掘削直後に掘削ずりを吸い上げ排出するので、孔内のマッドケーキの形成は逆循環工法と同程度に抑えることができます。
また、BCH工法では、揚泥管の吸引口を掘削ビット直上に配置するので、掘削完了後、孔底にて掘削ビットを一定時間回転させることでスライム処理が可能となります。
特長・メリットココがポイント
高品質な杭の造成
- スライムの浮遊を防ぐために、掘削ビットの上方1.5m以内に吸引口が位置する揚泥管を配置し、掘削ずりを掘削直後に吸引して孔外へ排出することができます。
- 安定液の品質を良好に保持し孔壁崩壊を防止するために、ビット先端だけでなく孔口からも良質の安定液を供給します。
- 掘削完了後、掘削ビットを一定時間回転させて孔底のスライム処理ができます。また、安定液の良液置換が可能です。
- 施工可能杭径は、Φ0.7m~Φ2.0mです。
低空頭・狭隘な場所での施工が可能
- 空頭3.0mの低空頭での施工が可能です。
- 平面3.0m×1.6mの狭隘な場所でもボーリングマシンの設置が可能です。
適用実績
東京駅丸の内駅舎保存・復原
場所:東京都千代田区
竣工年:2012年10月
発注者:東日本旅客鉄道
規模:Φ1,100〜2,000(駅舎基礎杭)
L=10m〜30m 56本
旗の台駅改良
場所:東京都品川区
竣工年:2008年10月
発注者:東京急行電鉄
規模:Φ700〜1,200(鉄道高架橋基礎杭他) L=7.5m〜22.5m 205本
駅舎基礎杭、耐震補強杭、鉄道橋脚・橋台基礎杭、鉄道高架橋基礎杭、鉄道ホーム基礎杭、
倒木対策防護壁用杭等で多数の実績があります。
学会論文発表実績
- 「低空頭・狭隘対応場所打ち杭BCH工法の概要と特徴」,土木学会第59回年次学術講演会,2004年9月
- 「低空頭・狭隘対応場所打ち杭BCH杭の支持力特性」,土木学会第59回年次学術講演会,2004年9月
- 「狭隘箇所対応の場所打ちRC杭工法の開発」,建設機械Vol.41,No.8,2005年8月
- 「BCH工法の開発と施工例」,基礎工Vol.33,No.2,2005年2月
岩盤掘削
「パイプドリル工法」
基礎地盤を乱さず、確実に岩盤・転石を切削
岩盤掘削工法において、全周回転式掘削機を用いた従来技術で施工の場合、ケーシング内に重鎮(チゼル等)を自由落下させ岩盤を破砕するという方法が一般的でした。しかし、止水性を確保する必要がある場合は、チゼルによる破砕では基礎岩盤を痛めるという問題がありました。また、地下水位の高い地盤における水中掘削や、大水深での掘削では、チゼルによる破砕は掘削効率が大きく低下するという課題もありました。そこで、全周回転式掘削機の回転力・押し込み力を確実にパイプドリル掘削機へ伝達し、岩盤に亀裂を与えずに掘削することを可能としたのが、このパイプドリル工法です。
特許登録済
- キーワード
- 岩盤掘削、硬岩、大口径、岩盤、全旋回、全周回転式掘削機、切削、先行掘削、置換掘削、置換工、連壁、止水壁、
遮水壁、孔壁、鋼管杭、ケーシング、低空頭、特殊3翼ビット、既設構造物、松杭、支障、場所打ち杭
施工手順、機械構造
本工法は、既存の全周回転式掘削機を用いて行います。パイプドリル掘削機本体は、全周回転式掘削機のファーストチューブと呼ばれる部分に勘合用の凹部を装備し、ケーシングと一体になって回転切削(掘削)を行います。1回の切削(掘削)深さは約400mmで、【パイプドリルによる切削→揚重機によるパイプドリルの回収→ハンマーグラブによる切削土砂の揚土→パイプドリルの再設置】といった作業を繰り返すことによって切削(掘削)を行います。
パイプドリルとファーストチューブとの勘合は、スタビライザを上下する動作と機械的に連動した可動式のピンの格納・張出により行います。掘削時にはスタビライザを下げパイプドリル掘削機のピンを張り出し、ファーストチューブの凹部に挿入し、ケーシングの回転力をこのピンをとおしてパイプドリル掘削機に伝達する構造となっています。
特長・メリットココがポイント
硬質岩盤の低騒音・低振動掘削が可能
硬質岩盤や水中における岩盤掘削の掘削実績を持ち、常に安定した掘削が可能です。また、施工基面に与える振動が少ないため、基礎地盤を損傷することはありません。
- チゼル破砕に比べ低騒音・低振動での施工が可能
- 岩盤を破砕せず切削するため、基礎地盤を損傷しない
既設近接構造物に配慮した杭施工
鋼管圧入工法の孔壁保持と、リバース工法の排土法を組み合わせ、パワージャッキ、特殊三翼ビット、門型櫓で構成するシステムを採用することにより、既設構造物に近接した場所打ち杭の施工を可能としました。
- 保護鋼管が孔壁を保持し、既設構造物への影響を防ぐ
- 低空頭下での施工が可能
- 低騒音・低振動での施工が可能
多種多様な掘削が可能
刃先形状や、ビット種類の変更などにより、多種多様な用途に応じた掘削ができます。また、掘削外径も、全周回転式掘削機の規格に準じたΦ1.0m~Φ3.0mまでの施工が可能です。
- 用途に合わせた刃先形状、ビット種類の選択が可能
- 機構がシンプルで故障が少なくメンテナンスも容易
適用実績
東海道線新橋・浜松町間環状2号線交差部
場所:東京都港区
竣工年:2005年5月
発注者:東日本旅客鉄道
規模:削孔径Φ1,800mm 削孔深度20.7m(最大) 削孔本数4本
倉敷基地プロパン貯槽
場所:岡山県倉敷市
竣工年:2008年12月
発注者:石油天然ガス・金属鉱物資源機構
規模:削孔径Φ2,300mm スーパーRD工法の補助工法として先行掘削
敦賀発電所3,4号機 建設準備工事
場所:福井県敦賀市
竣工年:2011年12月
発注:日本原子力発電
規模:削孔径Φ1,500mm 削孔深度32.5m(最大) 削孔径Φ2,000mm 削孔深度42.0m(最大) 削孔本数589本(パイプドリル9基使用)
ラッピングウォール工法®
埋設物によって生じる土留め壁欠損部に、確実で高品質な地中連続壁を構築
都市部の地中連続壁構築工事では、施工位置に移設不可能な埋設物が横断している場合も多く、埋設物下部及び周辺を施工できず、欠損部が生じることがあります。
従来はこの欠損部に対し、地盤改良工法などで対処するのが一般的でしたが、幅が4m以上の埋設物の場合、地盤改良工法などではその欠損幅を補うことができず、凍結工法や開削工法など大掛かりな方法で対処しなければなりませんでした。
ラッピングウォール工法は、このような大断面、大深度の埋設物によって生じる欠損部に、確実で高品質な地中連続壁を構築できる工法です。
平成16年度エンジニアリング功労者賞
第7回国土技術開発賞 入賞
特許登録済
- キーワード
- 地中連続壁工法、地中構造物、埋設物、止水壁、ジェット切削
施工ステップ
- Step1 全周回転掘削機で埋設物側部にガイドホール(オールケーシング工法)を構築します。
- Step2 孔内に安定液を充填し、その後ケーシングを所定の位置まで引上げ、当工法掘削機を投入します。
- Step3 掘削機は扇状に動作する機構となっていて、埋設物から一定の距離までの地山を掘削機の回転ビットで掘削します。
- Step4 埋設物側部の掘削後、埋設物下部も同様に扇状に掘削します。
- Step5 順次、根入部まで扇状に掘削します。
- Step6 掘削機の回転ビットを高圧ジェット切削装置に入替え、高圧ジェットの噴射により埋設物周辺の地山を切削します。
- Step7 埋設物周辺地山の切削後は、新たに開発した固化材(高流動ノンブリーディングコンクリート)を打設し、置換えます。
- Step8 埋設物の対面側についても、STEP1〜7の同様の施工を行い、連続壁を閉合します。
特長・メリットココがポイント
大掛かりな補助工法が不要
- 凍結工法や開削工法、地盤改良などの大掛かりな補助工法が不要で、地中連続壁を短期間に構築可能です。
埋設物への影響を最小限に
- 高圧ジェットの切削は、ジェット噴射の調整が可能なため、埋設物への影響を最小限に抑えることができます。
高精度で止水性に優れた地中連続壁の構築
- リアルタイムモニタによる施工管理システムの導入で、確実かつ高精度な掘削が可能です。
- 埋設物周辺の地山を高圧ジェットで切削し、高流動のノンブリーディング固化材で置換えるため、止水性の優れた地中連続壁の構築が可能です。
適用実績
阪神高速道路淀川左岸線
場所:大阪府大阪市
竣工年:2006年3月
発注者:阪神高速道路公団
規模:合成土留壁(SMW連続地中壁)
約3,800m2のうち約45m2
学会論文発表実績
- 「ラッピングウォール工法」,建設の機械化,(社)日本建設機械化協会,2004年
- 「大断面埋設物直下に地中連続壁を構築するラッピングウォール工法の開発」,(社)日本建設機械化協会,建設施工と建設機械シンポジウム論文,2004年
- 「埋設物を横断した新地中連続壁工法の開発(ラッピングウォール工法)」,総合土木研究所(基礎工),2004年
- 「高圧噴射による地山切削時の施工管理手法」,土木学会第59回年次学術講演会,2004年
伸縮可能な鉄筋かごを用いた
「ストランド場所打ち杭工法」
鉄筋かごの伸縮により、低空頭でも継手のない施工が可能に
都市部での駅舎の増改築工事や既設構造物基礎の耐震補強工事の現場では、狭隘で上部空間の制約を受ける場所で杭工事を行うことが少なくありません。従来の鉄筋継手方式の杭では継手箇所が多くなり、安全性と施工性が低下することから施工法の改善が望まれていました。
この「ストランド場所打ち杭工法」は工場組立、現場伸展方式を採用しています。本工法に用いる鉄筋かごは、縦軸方向の鋼材に通常の鉄筋に代えて可撓性を持つストランド(ワイヤー)を使用し、特殊な金具で帯鉄筋と結合することによって、伸縮が可能になっています。工場で組み立てて縮小した鉄筋かごを現場で伸展することで、上部に空間がない場所においても鉄筋かごの運搬や建て込みが容易となり、生産性が劇的に向上します。
なお、本工法は、東日本旅客鉄道のご指導・ご協力のもと施工しており、鉄道ACT研究会のPR工法に登録されています。
特許登録済及び特許出願中
関連情報
- キーワード
- ストランド、鉄筋かご、場所打ち杭、低空頭
ストランド場所打ち杭工法の概要
ストランド場所打ち杭工法は、縦軸方向に可撓性のあるストランドを採用し、ストランドと帯鉄筋である異形鉄筋を90°回転可能な特殊な結合回転金具を用いて結合することで鉄筋かごの伸縮を可能にした工法です。ストランドの可撓性を利用して鉄筋かご全体をねじることで、ストランドが螺旋状に変形し、鉄筋かご全体が縮小可能となります。
鉄筋かごはあらかじめ工場で組み立てて縮小した状態で現場へ搬入し、掘削した孔内へ伸展するだけで鉄筋かご建込みが完了します。このため低空頭条件下でも継手作業が発生せず、短時間で鉄筋かごを建て込むことができます。
縮小時の鉄筋かごの長さは、伸展時と比較して約1/4~1/6程度となります。また、軽量かつ高強度であるストランドの採用により総重量は1/2~2/3程度となることで、運搬及び建込み作業の労力を大きく低減することができます。
特長・メリットココがポイント
鉄筋かご建て込みの省力化が可能
- 縮小状態での運搬・建て込みが可能となるため、低空頭部・狭隘部においても容易に施工が可能となります。
- 主鉄筋の継手を省略できるため、現場での継手作業がなくなり、作業時間が大幅に短縮できます。
高い精度で鉄筋かごの製作が可能
- 鉄筋かごの組立ては工場で行うため、高精度で製作することができます。
小型車両で現場搬入が可能
- 鉄筋かごの長さが1/4~1/6まで縮小されるため、小型車両での現場搬入が可能になります。
適用実績
JR渋谷駅改良における工事桁基礎杭
場所:東京都渋谷区
竣工年:2018年10月(ストランド場所打ち杭施工完了)
発注者:東日本旅客鉄道
規模:Φ1,200 L=7,900 2本
学会論文発表実績
- 「ストランドを軸方向鋼材に用いた場所打ち杭における伸縮式鉄筋かごの機構とその特性」,土木学会論文集E2 ,Vol.74,No.3, 2018年9月
- 「ストランドを軸方向鋼材に用いた杭部材の曲げに対する特性と設計法」,土木学会論文集E2,Vol.75,No.2,2019年4月
- 「建設機械施工:渋谷駅改良工事にストランド場所打ち杭工法を採用」,建設機械施工,第834号,2019年8月
- 「伸縮式鉄筋かごを用いた場所打ち杭工法の開発」,土木学会,土木建設技術発表会概要集,2008年11月
- 「ストランド場所打ち杭工法における鉄筋かごの浮上り防止方法」,土木学会,土木建設技術発表会2019,2019年11月