虎ノ門タワーズオフィス（東京都港区）は，企画から，開発，設計，施工，管理・運営まで全て鹿島グループが行う大型賃貸オフィスビル。2006年に竣工し，現在オフィスや店舗区画に１７テナントが入居している。同ビルは，事業主体である当社開発事業本部，ビル管理を担当する鹿島建物総合管理（東京都新宿区，以下鹿島建物），プロパティマネジメントを担当するイースト不動産（東京都港区）の3者が協力し，節電・省エネ対策を積極的に推進している。
国の改正省エネルギー法（以下，改正省エネ法）と東京都の改正環境確保条例，そして東日本大震災後の電力不足から，時代の要請となった節電・省エネ対策。2012年度には，改正環境確保条例の基準に対してCO2排出量20%減を達成した。入居テナントごとに空調や照明の使い方が違い，節電・省エネ対策が難しいとされるテナントビルでは画期的なことだ。 この成功事例から見出されたのは5つの「鹿島グループの力」だった。
※虎ノ門タワーズオフィスは東京都のトップレベル事業所に認定済み
開発事業本部は，商品企画当初から「テナント・オリエンテッド」をキーコンセプトに掲げ，入居者を最優先に考え，真に使いやすいビル，テナントから選ばれるビルを目指している。このコンセプトは，節電・省エネ対策においても引き継がれ，入居テナントの快適性を損なうことなく，合理性に基づく賢い節電を実現している。
虎ノ門タワーズオフィス（右）
国内超高層ビルで初となるダブルスキンウインドウの採用など，環境に配慮した数多くの先駆的な技術を導入したほか，鹿島建物は，2010年4月の改正省エネ法施行と改正環境確保条例でのCO2削減義務開始を見据え，2008年に省エネ室を設置。BEMSデータの解析，設備機器の運用方法検討などを行い，省エネに関するコンサルティング体制を整備した。
ダブルスキンウインドウ断面イメージ
鹿島建物は，改正省エネ法に対応したエネルギーマネジメントシステム「EneMASTER®」を独自開発し，2009年10月より省エネサポートサービスを展開。このシステムの機能の一つであるエネルギー使用状況の「見える化」は，震災前から入居テナントに活用され好評を得ている。また，設備機器を適切かつ確実に運用・チューニングできる専門技術者をビル内に常駐させている。
「EneMASTER®」で省エネ効果を見える化
エネルギー消費量の70％～80％はテナント専有部が占め，節電・省エネ対策にはテナントの協力が不可欠となる。イースト不動産は，鹿島建物と連携し入居テナントごとの要望にきめ細かく対応。空調や照明の設定変更で，執務環境がどう変わるかを丁寧に説明する。またテナント専用のWEBを開設し，省エネを含め様々な情報を発信し，コミュニケーションツールとして活用している。
テナント専用のWEBで省エネ情報を提供
開発事業本部，鹿島建物，イースト不動産の3者は月1回「省エネ定例会」を同ビル内で開催し，省エネコンサル状況などの様々な情報を共有して，よりよい節電・省エネ対策を追求している。また年2回，全テナントが参加する「省エネルギー推進委員会」を開催。エネルギー使用状況，省エネ実施効果などを報告している。会議体だけでなく，設備機器の見学会なども開催し，信頼関係を築くことで，テナントと連携した省エネを実現している。
4月25日に行われた「省エネ定例会」
「鹿島グループの力」が発揮されているのは，節電・省エネ対策だけではない。設計担当の建築設計本部，施工担当の東京建築支店はもちろんのこと，鹿島グループ各社が総力を挙げて対応しているプロジェクトである。
※右記は代表例で，他にもグループ会社が多数参画
- 内装監理 ……………………………………………
- イリア，アルモ設計
- 廃棄物処理 …………………………………………
- 都市環境エンジニアリング
- 植栽管理 ……………………………………………
- かたばみ興業
- 改修工事 ……………………………………………
- クリマテック
- 各種プロモーション …………………………………
- Kプロビジョン
- ビル内ネットワークインフラ構築 ……………………
- カジマアイシーティ
- 機器リース …………………………………………
- 鹿島リース
- テナント非常用発電機の設置・維持管理 …………
- 大興物産
- 流動化に伴うエンジニアリングレポート作成 ………
- イー・アール・エス
