水害予防策の実装後,対策効果を維持する運用段階では,当社による竣工後のフォローに加えて,鹿島建物とERSがそれぞれの長所を活かしたBCPサービスを提供している。
BCP訓練
鹿島建物は全国に2,800棟以上の管理実績を持ち,設備管理・清掃・警備などの物件維持管理業務BM(ビルマネジメント)に加え,修繕やリニューアルを含む不動産経営の様々な業務を行うPM(プロパティマネジメント),施設や建物の価値を高め収益を上げるFM(ファシリティマネジメント)を手掛ける不動産のトータルマネジメント会社である。ビル入居者と建物の安全を守るBCP訓練の企画運営も行っている。
訓練実施に際しては多種多様な防水設備や避難設備の操作方法を参加者にわかりやすくレクチャーするなどの進行を鹿島建物が担う。訓練を通じて設備機器の操作を実際に体験することは,災害発生時の防災行動の円滑化とともに,関係者の防災意識の醸成にも寄与する。
タイムラインの見直し
台風や大雨の襲来に備える防災行動を定めたタイムラインは,BCP訓練や災害対応時の実践結果の検証,見直しによって,より実効性の高いものへと進化していく。
ERSは企業のタイムライン考案ワークショップの開催,議論を円滑に進め成果を導くファシリテーションや,成果物のコンサルタントも行っており,社会や企業の変化に応じた行動タイムラインのアップデートを支援している。
リアルタイムで危険度を確認
自然災害の発災直後,施設の管理者には緊迫した状況のなかで,関係者の安否,施設の安全性・機能,周辺地域・遠方の状況確認といった多くの情報の収集と整理が求められる。さらに施設が複数の場合には,これらの情報を同時に処理して優先順位を判断し,対応を決定する必要に迫られるだろう。
「ERS災害アラートF」は,登録地点の防災気象情報とリスク予測情報を掛け合わせ,浸水危険度をピンポイントかつリアルタイムで確認できるサービス。30分後,60分後の浸水危険度も確認でき,対策の発動や避難判断のトリガーとして,タイムリーかつ合理的な意思決定を強力に手助けする。
気象・水害情報配信システム
「ERS災害アラートF」
ERS災害アラートF 表示画面の例
気象警報・注意報
キキクル(危険度分布)
降水ナウキャスト
内水氾濫リスク
今月の特集では近年激甚化が顕著であり,また気候変動やTCFD※など社会動向の影響を受け関心が高まる水災害への対策にフォーカスを当てた。しかし記憶に新しいこの冬の大雪や,40年以内の発生確率が90%という政府予想が発表された南海トラフ巨大地震など,私たちの生活を脅かす自然災害はほかにもある。当社グループは水災害以外にも,これら多くの自然災害に対応するBCPソリューションのメニューを保有している。今年は関東大震災の発生から100年目の節目の年。身の回りの防災について改めて考えるいい機会ではないだろうか。