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4 運用支援

水害予防策の実装後,対策効果を維持する運用段階では,当社による竣工後のフォローに加えて,鹿島建物とERSがそれぞれの長所を活かしたBCPサービスを提供している。

BCP訓練

鹿島建物は全国に2,800棟以上の管理実績を持ち,設備管理・清掃・警備などの物件維持管理業務BM(ビルマネジメント)に加え,修繕やリニューアルを含む不動産経営の様々な業務を行うPM(プロパティマネジメント),施設や建物の価値を高め収益を上げるFM(ファシリティマネジメント)を手掛ける不動産のトータルマネジメント会社である。ビル入居者と建物の安全を守るBCP訓練の企画運営も行っている。

訓練実施に際しては多種多様な防水設備や避難設備の操作方法を参加者にわかりやすくレクチャーするなどの進行を鹿島建物が担う。訓練を通じて設備機器の操作を実際に体験することは,災害発生時の防災行動の円滑化とともに,関係者の防災意識の醸成にも寄与する。

図版:鹿島建物が行ったBCP訓練で止水板を設置する参加者

鹿島建物が行ったBCP訓練で止水板を設置する参加者

タイムラインの見直し

台風や大雨の襲来に備える防災行動を定めたタイムラインは,BCP訓練や災害対応時の実践結果の検証,見直しによって,より実効性の高いものへと進化していく。

ERSは企業のタイムライン考案ワークショップの開催,議論を円滑に進め成果を導くファシリテーションや,成果物のコンサルタントも行っており,社会や企業の変化に応じた行動タイムラインのアップデートを支援している。

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図版:ERSによるタイムライン検討ワークショップ

ERSによる
タイムライン検討ワークショップ

図版:タイムライン検討ワークショップの資料(一部抜粋)

タイムライン検討ワークショップの資料(一部抜粋)
「タイムラインによる発災直前の備え」

リアルタイムで危険度を確認

自然災害の発災直後,施設の管理者には緊迫した状況のなかで,関係者の安否,施設の安全性・機能,周辺地域・遠方の状況確認といった多くの情報の収集と整理が求められる。さらに施設が複数の場合には,これらの情報を同時に処理して優先順位を判断し,対応を決定する必要に迫られるだろう。

「ERS災害アラートF」は,登録地点の防災気象情報とリスク予測情報を掛け合わせ,浸水危険度をピンポイントかつリアルタイムで確認できるサービス。30分後,60分後の浸水危険度も確認でき,対策の発動や避難判断のトリガーとして,タイムリーかつ合理的な意思決定を強力に手助けする。

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気象・水害情報配信システム
「ERS災害アラートF」

拠点情報に,気象庁が発信する警報・注意報,土砂災害・浸水害・洪水の危険度分布,建設技術研究所が発信する内水氾濫リスク予測情報,降水ナウキャストといった浸水リスク予測情報を重ね合わせて,拠点付近の防災気象情報をピンポイントにリアルタイム配信するシステム。リアルタイム情報のほか,30分後,60分後の拠点付近の浸水危険度を把握可能。情報へのアクセスはマップ上での確認とメール配信(プッシュ型)がある。好評を博している地震版サービス「ERS災害アラートQ」の姉妹版

図版:ERS災害アラートF メール配信(プッシュ型)の画面サンプル

ERS災害アラートF メール配信(プッシュ型)の画面サンプル

ERS災害アラートF 表示画面の例

気象警報・注意報
図版:気象警報・注意報

大雨,洪水,高潮の注意報および警報の発令状況を表示(情報ソース:気象庁・気象業務支援センター)

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キキクル(危険度分布)
図版:キキクル(危険度分布)

大雨警報,洪水警報などに対する土砂災害や浸水害,洪水害の危険度の高まりをメッシュで表示
(情報ソース:気象庁・気象業務支援センター)

降水ナウキャスト
図版:降水ナウキャスト

現在,30分後,60分後の降水状況を一画面で連動表示(情報ソース:気象庁・ESRIジャパン)

内水氾濫リスク
図版:内水氾濫リスク

内水氾濫の可能性を高・中・低別の250mメッシュで表示。現在,30分後,60分後の予測を一画面で連動表示
(情報ソース:建設技術研究所)

今月の特集では近年激甚化が顕著であり,また気候変動やTCFDなど社会動向の影響を受け関心が高まる水災害への対策にフォーカスを当てた。しかし記憶に新しいこの冬の大雪や,40年以内の発生確率が90%という政府予想が発表された南海トラフ巨大地震など,私たちの生活を脅かす自然災害はほかにもある。当社グループは水災害以外にも,これら多くの自然災害に対応するBCPソリューションのメニューを保有している。今年は関東大震災の発生から100年目の節目の年。身の回りの防災について改めて考えるいい機会ではないだろうか。

※TCFD:気候関連財務情報開示タスクフォースの略。財務報告において財務に影響のある気候関連情報の開示を推奨する動き。企業が気候変動のリスク・機会を認識し経営戦略に織り込むことで、今後投融資を集めやすくなる傾向が予想されている

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