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Technology and Passion 難工事を陰で支えた立役者

今後に活かせる希少な実績

線路や国道の上空を飛び越えるように架設が行われた。その姿は,ダイナミックで雄大だ。その陰には人知れず苦労を続ける人がいる。「鉄道運行に対して,きめ細かな配慮が必要なのは,上空だけの話ではありません」。橋脚の基礎を担当してきた福島賢二副所長が口を開く。6基の基礎のうち,支持層が最深22.5mと深くなる3基は,スリム型ニューマチックケーソン工法が採用された。ケーソン下部に気密性の高い作業場を設け,空気圧により湧水を防ぎながら掘削を行い,ケーソンを沈めていく比較的一般的な工法である。しかし,ここは条件が違う。JR東日本と京浜急行の線路に挟まれた狭隘な敷地である。鉄道営業線に近接する場所での事例はほとんど無いという。「線路に影響がないよう新たな補助工法を開発したほか各種改良や工夫を行い,安全性を大幅にアップさせました。今後に活かせる希少な施工実績となります」(福島副所長)。

写真:狭隘な敷地での基礎工事

狭隘な敷地での基礎工事。作業場内部から外周をリング状に先行して掘削する「先行削孔置換工法」を開発した。高い精度でケーソンを沈めることができる

写真:福島賢二副所長

福島賢二副所長

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高架道路の裏で続く地道な作業

「最も,鉄道らしい工事」と,貞末副所長が桁の下面を指差す。そこには作業用の吊足場がある。裏面吸音板を設置するための足場だ。高架道路の下では,自動車や列車の走行音が桁下に乱反射し,騒音問題となる。これを防ぐのが桁下の裏面吸音板である。この工事を担う佐野智幸工事課長は,「他の工種と同じように,終電から初電までの間合い,約2時間が作業時間となります。違うのは,作業が毎日あり,線路により作業時間が日々変わること。時間管理に細心の注意を払う必要があります」と話す。さらに作業自体が,複雑でないからこそ,安全に気を付けなければならないという。作業員の墜落,資材の落下などリスクが伴う作業で,マンネリ化すると危険だと指摘する。作業員に,常に高い意識を持ってもらうため,安全ビデオの視聴や指差し確認を徹底する。この作業が始まってから1年半。今も,見えない場所で,地道な作業が続いている。

写真:線路閉鎖後の吊足場の設置作業

線路閉鎖後の吊足場の設置作業。作業時間は,実質2時間と厳しい時間管理が求められる

写真:佐野智幸工事課長

佐野智幸工事課長

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竣工に向けた最後のバトン

この工事の仕上げといえる遮音壁や壁高欄の設置作業が始まって1年半が経つ。その頃,現場に赴任し,これらの作業を任されたのが大塚康晴工事課長代理である。これまで橋梁や鉄道近接工事を経験してきた。「作業はシンプルに見えますが,場所やタイミングにより,様々な検討を要します。架設作業と同時並行で進めるため,桁の変位を考慮する必要もあります。ここは縦取り,横取りなどの作業工程があり,桁の変位も複雑になります。本社・支店に相談しながら工事を進めています」(大塚工事課長代理)。この変位を解析し,現場を支援しているのが土木設計本部の石松信哉副主査だ。「工事計画に合わせて,温度変化なども考慮し,桁の変位値を解析しました。鋼製桁のたわみは,予想以上で,その変位を意識しないで施工を進めていたら,壁高欄や裏面吸音板が変位に追従できずに損傷した可能性もあります」と話す。石松副主査は,今から5年前の工事スタート時に,作業構台や本線(上り)桁の送り出しの施工管理を担当していた。今も現場の一員という思いで支援をする。

「多くの人が,苦労を積み重ねて造り上げてきた橋梁です。遮音壁や壁高欄がうまくいかなければ,工事全体の責任になり,5年間の皆の苦労が無駄になってしまいます。竣工に向け受け継いだ最後のバトンは,必ず無事にゴールへと運んでみせます」(大塚工事課長代理)。

写真:この工事の仕上げといえる遮音壁の設置作業

この工事の仕上げといえる遮音壁の設置作業

写真:大塚康晴工事課長代理

大塚康晴工事課長代理

写真:石松信哉副主査

石松信哉副主査

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