鹿島(社長:桐生雅文)と三菱電機(執行役社長:漆間啓)は、デマンドレスポンス※1要請に応じて、建物の電力消費を自動で最適制御するシステム(以下、本システム)※2を開発しました。電力を供給する電力会社等のインフラ側と、電力を消費する建物側の電力需給情報に基づくリアルタイムな演算により、建物利用者の「快適性」と建物の「節電量」のバランスを最適にコントロールし、電力消費量を削減します。また、電力会社等からの節電要請時だけでなく、本システムを平常時にも活用することで、電力需要が集中する時間帯の消費電力が抑えられ(ピークカット)、電気料金の低減に貢献します。
今般、鹿島の自社施設における空調設備制御の一部に本システムを試験導入した結果、建物利用者の快適性を損なうことなく、変動する需要下でも節電要請に迅速に応答し、目標削減量を高精度に達成できることを実証しました。具体的には、節電要請から30分間の電力消費量を目標削減量の±10%に抑えられることを確認しました。
※1 再生可能エネルギー主体の電力の供給状況に応じて、建物利用者の快適性や利便性を損なわない範囲で、建物が電力需要を調整すること
※2 システム名称は、鹿島では「re.SKLUMTM」(リスクラム、re.System of Kajima Load and Utility Management)、三菱電機では「BLEnDerⓇシリーズの熱電気統合制御システム」という
本システムによる建物の電力消費の最適制御イメージ (空調設備制御の場合)
開発の背景
近年、脱炭素社会の実現に向けて、再生可能エネルギーの積極的な活用が進められています。しかし、そのほとんどは太陽光や風力などの自然現象に依存していることから、供給の不安定さが課題となっています。例えば、冬季の夕方は暖房使用の増加により電力需要が高まる一方、日照時間が短く太陽光発電量が減少するため、電力需給のバランスが崩れやすくなります。電力需要がひっ迫すると、インフラ側から節電要請が出され、建物側ではこれに応じて電力消費の調整を求められますが、電力消費の抑制により、建物利用者の快適性を損なう恐れがあります。
そこで両社は、建物利用者の「快適性」と建物の「節電量」のバランスを最適にコントロールし、電力消費量を削減するシステムを開発しました。
本システムの概要と特長
本システムは、インフラ側と建物側の電力需給情報をもとにリアルタイムで演算を行い、建物利用者の快適性を維持しながら、建物の電力消費を自動で最適制御します。
太陽光パネルなどの発電・熱利用設備、蓄電・蓄熱設備、クラウド型気象情報サービスと連携したAI搭載のエッジコンピュータ※3から構成されています。建物内の設備機器から自動的に収集・処理した外気および室内の温度・湿度や電力消費量、設備機器の動作特性等の情報を気象予報情報と組み合わせ、「快適性」と「節電量」の最適なバランスをAIにより繰り返し演算します。その結果に基づいて設備機器を最適制御し、発電・熱利用設備や蓄電・蓄熱設備も活用することで、節電要請時の電力消費削減目標の達成に貢献します。
本システムの特長は、以下のとおりです。
- 建物の電力消費および設備機器の制御状況をリアルタイムに可視化
- 建物利用者の快適性を損なわない範囲で電力消費量を削減可能
- 節電要請から30分間の電力消費量を削減目標の±10%に抑制可能
- 建物の平常時運用下における電力消費のピークカットにより、電気料金の低減に貢献
- 節電要請に基づく電力消費の削減結果に応じて、電力会社等からインセンティブとしてデマンドレスポンス報酬を獲得可能
なお、開発にあたり、鹿島は、デマンドレスポンス運用方法や制御対象設備選択に係る制御モードに関する知見の提供、デマンドレスポンス効果の検討等を実施し、三菱電機は、デマンドレスポンスシステムの構築と、制御対象機器への制御設定方法やAIを活用した蓄電池・熱源機器の制御方法、デマンドレスポンス手法に関する知見の提供等を実施しました。
※3 データの生成元であるデバイス(エッジ)側で情報処理を行うことができるコンピュータ
電力消費の制御状況とデマンドレスポンスレベルの判定フロー
デマンドレスポンス要請時と平常時の応答イメージ
導入効果の検証
鹿島技術研究所本館(東京都調布市)に本システムを試験導入し、一部の空調設備制御による建物の電力消費削減効果を検証しました。太陽光パネル、蓄電池、AI搭載のエッジコンピュータから構成されるシステムを用いて、過去実績から推測したデマンドレスポンス目標値に基づき「快適性」と「節電量」のバランスを1分ごとに演算し、空冷ヒートポンプチラー、外調機、パッケージエアコン、蓄電池を制御しました。その結果、建物利用者の快適性を損なうことなく、デマンドレスポンスの要求条件である、節電要請から30分間の電力消費において、実削減量と目標削減量の差が±10%となることを確認しました。
デマンドレスポンス達成状況監視の画面イメージ
今後の展開
鹿島は今後も、省エネルギーだけでなく、建物利用者のウェルネスや利便性、快適性の更なる向上を目指して、より有効な機能およびサービスの開発を進めるとともに、鹿島が設計・施工する建物への本システムの導入を積極的に推進してまいります。
三菱電機では、脱炭素化に向けた電力の安定供給と建物利用者の快適性の両立課題を解決するため、本開発および実証で培ったデマンドレスポンス制御技術と電気熱の制御技術を核に、建物の設備運用最適化に取り組んでまいります。今後は、建物の電力・熱需要や設備稼働データを収集・分析し、当社が保有する需給最適化やコンポーネント(空調冷熱設備等)との融合により、供給から需要まで一気通貫でのスマートエナジーを実現してまいります。
「re.SKLUM」紹介動画