鹿島(社長:桐生雅文)は、山岳トンネル最奥部の切羽の性状を定量的に分析・評価する「切羽評価システム」(以下、本システム)を改良しました。これにより、改良前に必要であった画像データ撮影や計測を行うための切羽観察者が不要となり、技術者の業務負担軽減による生産性の向上を実現しました。
切羽性状の一般的な評価方法は、掘削作業の合間に切羽観察者が切羽付近に立ち入り、目視観察を主な手段として確認するものです。本システムの改良により、技能者などによる専用タブレットの簡単な操作だけで、切羽評価に必要なデータを掘削用ブレーカやドリルジャンボ、吹付け機に搭載したカメラや各種センサーから取得できるようになりました。専用タブレットの操作は誰でも行うことができます。このたび、国土交通省近畿地方整備局発注の国道169号上池原トンネル他工事に初めて導入し、その有効性を確認しました。
改良した切羽評価システムの概要図
開発の背景
山岳トンネル工事では、掘削の進行に伴い変化する地山状況を把握するため、切羽観察者が1日1回切羽観察を行い、切羽性状(風化変質※1、割れ目性状※2、走向・傾斜※3、圧縮強度※4、湧水量の5項目)を評価し、切羽観察帳票を作成することが義務付けられています。
当社は、切羽断面の写真や、建設機械に搭載した機器から得たデータを分析し、切羽性状を定量的に評価し、切羽観察帳票に反映する「切羽評価システム」を2026年3月に開発しました。切羽断面の画像データは、切羽観察者が事務所から切羽付近まで移動し、掘削作業の合間に取得する必要があるため、移動・待機・撮影に要する時間や、建設機械との接触リスクの更なる低減が課題でした。
※1 岩盤が風や水などの自然の力によって時間とともに変質・分解した程度を示す
※2 割れ目の間隔や幅、挟在物の有無など、割れ目の特徴を示す
※3 岩盤の割れ目が向かっている方向(走向)と、その割れ目が切羽の面に対して傾いている角度(傾斜)を示す
※4 圧力をかけた場合にどの程度まで耐えられるかを示す強度のこと
改良の概要と効果
改良前の切羽評価システムでは、切羽観察者が「風化変質」「割れ目性状」「湧水量」の評価に必要な画像データをスマートフォンなどのカメラや、設置作業が必要な赤外線カメラなどで取得していました。今回の改良では、これらの機材一式を吹付け機に搭載し、専用タブレットの簡単な操作だけで誰でも取得できるようになりました。これにより、切羽性状の評価に必要なデータは建設機械(掘削用ブレーカ、ドリルジャンボ、吹付け機)に取り付けたカメラや計測機器によって全て取得できるようになり、切羽観察者が不要となりました。切羽までの移動時間、作業と作業の合間に行う撮影までの待機時間、実際の撮影や計測に必要な時間が削減できるだけでなく、建設機械との接触リスクも低減します。これにより、切羽性状の一般的な評価方法と比べて生産性と安全性の向上が実現しました。
切羽評価システムの新旧比較イメージ図
また、今回の改良により、切羽評価システムによる分析・評価結果は、当社が開発した山岳トンネルにおける各種調査・施工・計測データを自動で集約・可視化できるデータプラットフォーム「スマート計測ウォッチャー®」に自動連携されるようになりました。これにより、評価結果を工事関係者だけでなく発注者にも迅速に共有することが可能となりました。
本システムを、国道169号上池原トンネル他工事で実証した結果、切羽観察業務の効率化が確認できました。
吹付け機に搭載されたカメラ
今後の展開
鹿島は今後、本システムを複数の山岳トンネル工事へ適用し、機能のブラッシュアップを図っていくとともに、当社が開発した自動化施工システム「A4CSEL for Tunnel」と連携させることで、さらなる安全性・生産性向上の実現を目指してまいります。
工事概要
| 工事名称 | 国道169号上池原トンネル他工事 |
|---|---|
| 工事場所 | 奈良県吉野郡下北山村 |
| 発注者 | 国土交通省近畿地方整備局 |
| 施工者 | 鹿島建設株式会社 |
| 諸元 | 工事延長2,870m、トンネル掘削延長:2,772m、内空断面積(設計): 53~83m2 |
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