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プレスリリース

[2018/05/14]

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より速く、より高精度に地質を評価、切羽崩落事故ゼロへ!

統計解析技術と画像処理技術をIoTの活用でリアルタイムに統合

 鹿島(社長:押味至一)は、山岳トンネル工事において、IoT技術を活用しリアルタイムに地質を評価するシステム「スマート切羽ウォッチャー」を開発、岩手県で施工中のトンネル工事に適用し、その効果を確認しました。コンピュータジャンボによる穿孔から得た切羽前方の地質予測データ、デジタルカメラで撮影した切羽の画像データを地球統計学や画像処理技術を用いて自動解析することにより、評価結果を現場の切羽でリアルタイムに確認することができるようになりました。また、クラウドを介して現場と本社間でリアルタイムに共有できるため、専門家によるチェックも可能です。
 鹿島は、より速く、より高精度に地質を評価できる本システムの活用で、補助工法など安全対策の要否を迅速・的確に判断し、切羽崩落などに起因する事故ゼロを目指します。
      

リアルタイム統合地質評価システム「スマート切羽ウォッチャー」の概念図     

リアルタイム統合地質評価システム「スマート切羽ウォッチャー」の概念図

開発の背景

 山岳トンネル工事の掘削は、事前の地質調査から得られた情報を基に、切羽で地山状況を直接確認しながら慎重に進めますが、予期せぬ断層の出現や急激な地質変化などのリスクも伴います。
 鹿島は、ロックボルトの穿孔時に得られる地質データから、地球統計学手法を用いて周辺の地質状況を高精度に予測、評価する技術を開発※1していますが、近年はコンピュータジャンボの導入※2により、穿孔データも自動で収集することが可能になりました。
 また一方で、切羽の風化や割れ目の分布から危険箇所を定量的に予測することで、目視観察をサポートする画像処理プログラムも開発しており、これらのデータを活用して迅速・的確に地質を評価する、先進的なシステムの確立を目指しました。
 

システムの概要

スマート切羽ウォッチャーは、以下の二つの技術とその運用方法により構成されています。

<技術1>発破孔の穿孔データから切羽前方の地質状況を高精度に予測
 コンピュータジャンボによる発破孔やロックボルトの穿孔データから得た破壊エネルギー係数(弾性波速度)を、地球統計学手法により解析し、わずか1分で切羽前方5mの周辺地山も含めた地質状況を高精度に予測、評価します。さらに、地球統計学手法のひとつであるシミュレーション解析も自動的に実行、脆弱部が80%以上の確率で出現する箇所を切羽前方30mまで抽出します。これらの評価結果は切羽のタブレット端末に即座に転送され、切羽の作業員が安全性を迅速に判断できるとともに、施工方法の選択や補助工法適用の判断にも有効に活用できます。
    

穿孔データの解析による地質状況の予測結果     

穿孔データの解析による地質状況の予測結果


<技術2>切羽の写真を画像処理して剥落危険度を評価
 デジタルカメラで切羽を撮影した画像データを解析し、岩盤の風化度合や割れ目の分布などを定量的に評価、剥落の可能性がある箇所を検出します。解析結果は、切羽で作業する社員や作業員のスマートフォンに約10秒で転送され、危険箇所の見落としを防止します。なお開発にあたっては、全国のトンネル現場における切羽の写真と剥落記録データを収集し、危険箇所を検出するアルゴリズムを確立しました。
    

画像解析による剥落危険箇所の検出     

画像解析による剥落危険箇所の検出


<運用>クラウドを活用した情報共有で全社的なバックアップを実現
 切羽で得られたコンピュータジャンボやデジタルカメラからのデータは、坑内のWi-Fiを通じて現場の解析用コンピュータに伝送され、自動的に解析が始まります。解析の結果は切羽の社員・作業員に即座にフィードバックされるとともに、クラウドを介して現場事務所だけでなく本社技術研究所でも確認できます。これにより、技術研究所の地質専門家によるリアルタイムなバックアップも可能となり、全施工期間を通じて適切な施工判断が行えます。また、掘削期間中の全てのデータは技術研究所のサーバーに自動的に転送、蓄積されるため、全国のトンネル現場の施工データベースが構築できます。

現場への適用

 まずコンピュータジャンボを導入して施工中の新区界トンネルにおいて、発破孔やロックボルトの穿孔データから切羽前方の地質状況を高精度に予測した結果、特に断層部における安全・確実な施工につながりました。また白井トンネルではこれに加え、切羽の安全性を写真データの画像処理技術によって評価しました。鏡吹付けコンクリートを重点的に行う箇所や装薬時の危険箇所が的確に判断でき、本社、現場事務所、切羽各所での情報共有にも有効でした。

今後の展開

 今後、コンピュータジャンボを導入する全てのトンネル現場で本システムを適用し、安全なトンネル掘削工事を実現して切羽崩落に起因する事故ゼロを目指すとともに、蓄積した施工データの活用でシステムのさらなる精度向上を図り、トンネル掘削工事の自動化に向けた技術開発につなげていきます。
 

※1 ロックボルトの削孔データによってトンネル周辺の地質状況を三次元的に評価 別ウィンドウが開きます
  (2015年4月7日プレスリリース)
※2 日本初!新区界トンネルに4 ブームフルオートジャンボを導入 別ウィンドウが開きます
  (2016年6月9日プレスリリース)
 

工事概要

工事名  : 宮古盛岡横断道路 新区界トンネル工事
発注者  : 国土交通省 東北地方整備局
工事場所  : 岩手県宮古市区界~盛岡市簗川地内
工期  : 2014年2月~2019年3月
施工者  : 鹿島・東急特定建設工事共同企業体
工事諸元  : 本坑全長4,998m、内空断面積94.9m2、避難坑5,045m、内空断面積15.5m2


工事名  : 国道45号 白井地区道路工事 白井トンネル
発注者  : 国土交通省 東北地方整備局
工事場所  : 岩手県下閉伊郡普代村
工期  : 2014年12月~2018年8月
施工者  : 鹿島建設株式会社
工事諸元  : 延長2,058m、内空断面積93m2

プレスリリースに記載された内容(価格、仕様、サービス内容等)は、発表日現在のものです。
その後予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。

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