[2026/03/04]
745KB
山岳トンネル工事における「切羽評価システム」を開発
鹿島(会長兼社長:押味至一)は、山岳トンネル工事において、トンネル最先端にある切羽の性状を定量的に分析・評価する「切羽評価システム」(以下、本システム)を開発しました。
山岳トンネル工事では、安全に工事を進め安定した品質を確保するために、1日1回の頻度で切羽を観察し、風化変質※1や圧縮強度※2などの切羽性状を評価する必要があります。従来、この切羽観察は社員および技能者他が切羽付近で目視確認等によって時間をかけて行っていたため、切羽の肌落ち(剝落)による災害の危険性がありました。本システムは、スマートフォンで撮影した写真や掘削用ブレーカに搭載した加速度センサ、吹付け機に搭載したLiDAR※3などから切羽のデータを素早く、安全に取得し、当社独自の分析ソフトを活
用することで、切羽性状を正確かつ定量的に評価できます。また、これら切羽性状の評価結果の電子データを、切羽観察帳票として自動出力することも可能です。
※1 岩盤が風や水などの自然の力によって時間とともに変質・分解した程度を示す
※2 圧力をかけた場合にどの程度まで耐えられるかを示す強度のこと
※3 レーザー光を照射してその散乱や反射光から距離などを計測
「切羽評価システム」のフロー
開発の背景
山岳トンネル工事では、工事進捗によって地山の性状が変化することがあります。安全に工事を進め所定の品質を確保するには、地山補強のための適切な部材を選定する必要があるため、1日1回の頻度で切羽を観察し、風化変質、割れ目性状※4、走向・傾斜※5、圧縮強度、湧水量を評価し、切羽観察帳票を作成することが義務付けられています。これまで、切羽観察者はトンネル掘削作業の合間に、切羽付近で目視観察等を行っていたため、肌落ち災害や重機との接触災害の危険性がありました。また、切羽性状の評価は観察者の経験と技量に基づく高度な技術が必要なため、熟練技能者の高齢化による将来的な担い手不足といった課題もありました。当社は、風化変質および割れ目性状を安全に定量評価する「JudGeo®」※6を開発し、これまで適用実績を重ねてきましたが、さらに切羽観察に必要な他の項目も評価可能なシステムを開発することとしました。
※4 割れ目の間隔や幅、挟在物の有無など、割れ目の特徴を示す
※5 岩盤の割れ目が向かっている方向(走向)と、その割れ目が切羽の面に対して傾いている角度(傾斜)を示す
※6 「風化変質判定システム」で開発した風化変質評価と、「スマート切羽ウォッチャー」で開発した割れ目性状評価を統合したシステム
本システムの概要
本システムは、切羽断面の写真や、吹付け機および掘削用ブレーカに搭載した機器から得られたデータを当社独自の分析ソフトに取り込み、切羽性状(風化変質、割れ目性状、走向・傾斜、圧縮強度、湧水量の5項目)について、それぞれに適した手法で分析・評価を行うものです。なお、走向・傾斜の分析・評価は大量かつ複雑な点群データを、AIを活用して効率的に行います。それ以外の4項目については、直接的・物理的なデータに基づく客観的な分析・評価をしていることが特長です。これにより、多種多様な地質に対応した評価が可能となります。また、これらの評価結果の電子データを切羽観察帳票として自動出力※7することも可能です。それぞれの切羽性状におけるデータの取得、分析・評価の方法は次のとおりです。
※7 走向・傾斜、湧水量については2026年3月までに自動化予定
- 風化変質、割れ目性状の評価 スマートフォンで撮影した切羽の画像データを解析し、風化変質および割れ目性状を評価します。この評価には「JudGeo」の技術を活用しています。
- 走向・傾斜の評価 吹付け機に搭載したLiDARで取得した大量かつ複雑な点群データを、AIによるクラスタ分析によって割れ目の向きが同じものを分類し、走向・傾斜を評価します。タブレットの簡単な操作で評価データを取得することができます。
- 圧縮強度の評価 掘削用ブレーカに搭載した加速度センサで切羽打撃時の振動データを取得し、振動データを圧縮強度に換算して評価します。タブレットの簡単な操作で評価データを取得することができます。
- 湧水量の評価 赤外線カメラおよびサーモカメラで切羽表面を流れる湧水の厚さと範囲データを取得し、体積を計算することで切羽からの湧水量を評価します。
風化変質の定量評価
LiDARを搭載した吹付け機
AIクラスタ分析による傾斜の定量評価
加速度センサを搭載したブレーカ
赤外線カメラを使った湧水の厚さと範囲の測定
現場実証と効果
本システムを、国内の山岳トンネル工事で実証した結果、社員や技能者と同等の正確な分析・評価結果を得ることができました。さらに、分析・評価に必要なデータはカメラ画像やセンサ機器から速やかに得られるため、切羽付近に立ち入る時間が短縮され安全性や効率性の向上にも寄与することが確認できました。今後の展開
鹿島は今後、本システムにおける、データの取得、分析・評価および切羽観察帳票作成までの過程の完全自動化を図るとともに、当社が開発した一元管理システム「スマート計測ウォッチャー®」および自動化施工システム「A4CSEL for Tunnel」と連携させることで、山岳トンネル工事における安全性・生産性向上の実現を目指します。(参考)
山岳トンネルの調査・施工・計測データの自動一元管理・可視化・分析により生産性と安全性を向上
タブレットPCを用いた山岳トンネル切羽の「風化変質判定システム」の開発
(2014年1月16日プレスリリース)
より速く、より高精度に地質を評価、切羽崩落事故ゼロへ!
(2018年5月14日プレスリリース)
山岳トンネル工事の6つのステップの自動化・遠隔化に成功!「A4CSEL for Tunnel」が完成!
(2024年7月31日プレスリリース)
プレスリリースに記載された内容(価格、仕様、サービス内容等)は、発表日現在のものです。
その後予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。

