architectural design

私は大学院でデジタルデザインを専攻しました。デジタルデザインは、要求される課題を解くためにアルゴリズムを用い、複雑な形態を生成したり、最適化をしたりする新たな設計手法です。鹿島に入社したのは、デジタルデザインの部署が立ち上がって間もない頃で、デジタルデザインの知見を持った人の採用が始まっていたことが理由でした。新しい分野を自らの力で開拓できることは大きな魅力でした。

ある再開発案件では、通路からの風景がどのように移り変わるか、通路の微地形がどう変化して勾配を形成しているのかを、コンピュータプログラミングでシミュレーションし、データによる統計的な分析とアルゴリズムを用いた特殊な形態生成を行いました。提案したデザインは高く評価され、デジタルデザインの力を改めて実感しました。

建築設計ができる人はたくさんいますが、それに加えてプログラミングができる人はそう多くありません。その違いを設計業務の中で出していければと、日々試行錯誤しています。デジタルデザインは大きな可能性を秘めている世界で、まだまだ学ぶべきことがたくさんあります。この領域を究めていくことで、設計者としてひとり立ちしたいと思っています。

大学院では地震などによる天井落下の際の防止ネットの研究に携わりました。構造設計にも興味があったことから、就職活動では研究と設計の両方に携われる場を志望しました。それが叶うのが鹿島でした。また、社員の方々から感じた柔らかく、温かい雰囲気が自分に合っており、直感的に働きやすい環境と感じたことも入社動機の一つです。

私の役割は建物の安全性の確保を通じて、構造設計のグループを支援することです。これまでインフィニティプール（※1）のスロッシング（※2）解析に取り組み、屋上プールなどでの意匠と安全性の最適な着地点を見出すことに貢献しました。揺れに同調する錘を用いて建物の揺れを抑制させる制震装置の解析にも取り組んでいます。難易度の高い技術に挑戦し、構造の世界を切り拓いていくことに、大きなやりがいを感じています。

• インフィニティプール=プールのふちに手すりなどの視界を遮るものがなく、目の前に広がる海や湖とつながっているように見えるプールのこと

• スロッシング=容器の中の液体が振動によって波打つ現象

自分の解析が本当に正しいのかどうか、常に実験で実証できるとは限りません。確度を上げていくには、多彩な知識の吸収と多様な経験の積み重ねしかないと考えています。解析精度の向上は、不変のテーマです。将来は、今の技術では実現不可能なことも可能にするような技術を開発し、｢解析のプロ｣と呼ばれる人材に成長することが目標です。

建築物の構造力学を専攻したことから、原子力施設に携わりたいと考えました。原子力の施設や構造物は、構造設計やFEM（Finite Element Method=有限要素法）解析、地震応答解析など、より高度な理論、解析が求められます。「構造」の技術者として成長できる分野と思ったのです。鹿島は原子力分野で多くの設計・研究実績があり、ここなら自分の力を発揮できると考えました。

私は原子力施設の構造検討を担当しています。印象に残っているのは、入社1年目、新規施設の設計業務に携わったことです。原子力施設の安全性確保の「最後の砦」と呼ばれる設備で、先輩方の指導のもと、地震応答解析から応力解析、部材設計までの設計プロセスの流れを学ぶことができました。現在は液状化の影響考慮した地盤や土木分野の解析などにも、土木設計本部や技術研究所の専門家の協力を得ながら取り組んでいます。

構造は、地震動など実際の現象を数値に置き換え、理論的に精緻に解明していくところに面白さがあります。解析モデルやシミュレーションを通じて仮説を立て検証していく、そのプロセスこそが原子力施設の安全を担保することにつながっていきます。今後は構造の世界を究めていき、信頼される構造エンジニアへと成長したいと考えています。