2025年12月16日
2025年度日本建築学会技術部門設計競技にて「最優秀賞」を受賞
鹿島建設株式会社
日本建築学会が主催する「2025年度日本建築学会技術部門設計競技」において、当社の建築設計本部による提案が「最優秀賞」を受賞しました。
本競技は、建築を取り巻く社会課題をテーマに掲げ、その課題解決に向けたアイデアを競う、歴史ある設計競技のひとつです。
提案イメージ
設計課題概要
本年度は「職人たちの腕がなる新たな施工技術とデザイン」という課題が設定されました。
日本の伝統建築技術は、左官や大工などの職人や技能者たちによって支えられてきました。しかし、高度成長期以降の効率化や画一化により、こうした技術の伝承が危ぶまれています。また、技能者の減少により建築施工の省人化が喫緊の課題となっており、触覚伝達による技能作業の自動化も進展しています。本設計競技では、伝統技術と現代技術を融合させ、AIやデジタルツインを活用しつつ、職人の卓越した技術やデザインを再構築する建築の提案が求められました。
提案内容
”記憶の木” ― 高強度再生木材を用いた補強によるRC造建築の長寿命化
東京都大田区にある、築約60年を迎えるRC造3階建ての公共施設(児童館/高齢者施設/保育園)を既存建物として選定し、建設業界の抱える「大工職人の減少と技術伝承」「脱炭素化」「木造密集地域問題」「RC公共施設の老朽化」という4つの課題に対して空間デザインを兼ね備えた複合的な解決へのシステムを提案しました。
老朽化により解体が必要とされるRC造建築に対して、解体した木造住宅の廃材から生まれる高強度再生木材を活用した細い部材を用いて、職人の手と技術により軽やかに補強することによって、RC造の公共施設を機能更新・価値向上させながら長寿命化し、地域コミュニティの活性化へ寄与します。
また、本提案は従来の耐震壁や鉄骨ブレースなどの一般的な補強方法と比べて部材が小さく軽いため、少人数で施工することができ、中規模RC建築補強工事への職人の参画を可能とします。
評価された点
伝統技術の伝承を柔軟な発想で捉え、補強技術と意匠性を併せ持つ形で可視化した点が大変ユニークであると評価されました。また、既存の新技術による現実的な提案と、理想的な要素を取り入れた夢の提案という両者の要素を併せ持ち、どちらかに偏らず巧みにバランスを取っている点が高く評価されました。さらに、大量に排出される建設廃材への対応や、高度成長期に建設されたRC造公共建築物への対応をはじめ、近年の建築をめぐる様々な社会的課題を背景に、広い視野で課題に取り組んでいる点も好感を得ました。

大工職人の負担を軽減できる小断面の高強度再生木材によるRCフレーム補強
※入賞作品については、下記URLよりご確認ください。
2025年度日本建築学会技術部門設計競技(PDF:269KB)
2025年度日本建築学会技術部門設計競技 入選作品一覧(PDF:135KB)
