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プレスリリース

[2014/07/01]

1.1MB

鹿島の室内カビエンジニアリング技術

計画・設計段階から施工中・竣工時までの総合的対策技術を確立

I.カビの発生と成長リスクを予測評価
II.カビの生えにくい建材データベース
III.カビかどうかを 1~30分で診断
IV.塗るだけ防カビ剤「モールセーフ®

 鹿島(社長:中村満義)は、カビの発生から建物を守る、総合的な室内カビエンジニアリング技術を確立しました。カビは生き物であり単一のツールで抑制することが困難ですが、建物の計画・設計段階から施工中・竣工時まで、各段階で展開できる一連の対策を確立し、それらを相互に活用することで、より効果的に室内カビの発生を制御します。
 今後、美術館や医薬品施設、学校など、より良い空気環境を必要とする施設はもちろん、建物用途を問わず非空調の地下室や多湿環境など、防カビのニーズが高い場所へのソリューションとして、幅広く提案していきます。

室内カビ制御のための4つの技術

室内カビ制御のための4つの技術

開発の背景

 近年、気密性の高い建物が増加したことや、地下居室・半地下建物の増加などから、室内カビ汚染の問題が顕在化しています。場合によっては施工中や竣工後間もない時期にカビが発生することもあり、別途カビ除去工事が必要となる場合も散見されます。
 計画・設計段階での対策としては、防カビタイプの建材使用や、除湿・換気設備の増強などが一般的に考えられますが、最近では地球温暖化や夏期の集中豪雨などの影響から、特に非空調の居室や地下倉庫などにおいてはカビの発生を避けられない場合があり、施工中・竣工時までを含めた、総合的な防カビ対策技術が求められていました。
 そこで鹿島では、I.予測評価、II.建材選定、III.測定診断、IV.対策技術 の4つを柱とする、計画・設計段階から施工中・竣工時まで、段階に応じて相互に活用できる室内カビエンジニアリング技術を確立しました。

I.予測評価 「カビ成長予測技術」(計画・設計段階)

 建物の仕様や建材の種類、また施設の使用条件や温度・湿度などから、予めカビの発生と成長リスクを予測する新たな評価手法を構築しました。温度や湿度についてはその実測値、あるいは当社開発の「キャナリープラン®※1で解析した計算値を本評価手法に入力するだけで、カビの発生や成長を予測でき、計画・設計といった初期段階におけるカビの予防対策が可能になります。
 本評価手法を用いることにより、除湿や換気等の対策を施した場合の効果を定量的に比較・検討しながら、カビ発生リスクが高い場所に適切な提案をすることが可能になりました。

※1「キャナリープラン」:鹿島が開発した、室内の空気質・温湿度・換気性能・省エネ性を総合的に評価する計画ツール

施設使用条件(1~4)・期間最大温湿度とカビ成長(菌糸長)の関係(倉庫での事例)

施設使用条件(1~4)・期間最大温湿度とカビ成長(菌糸長)の関係(倉庫での事例)

II.建材選定 「カビ耐性建材選定技術」(設計・施工段階)

建材のカビ耐性を評価する試験(カビ抵抗性試験:ISO846)は、結果を得られるまで1.5ヵ月~2ヵ月と時間がかかること、また、建材ごとに評価方法が異なることが課題でした。そこで、使用頻度の高い内装建材を対象にして、カビの生えにくさを4クラスに区別したデータベース(50種類)を構築しました。
 さらに、データベースに無い建材については、建材選定まで時間の猶予がない場合にも対応できるよう、建材そのものがもつ表面のpHや、含水率などの物性値から、カビ耐性を30分で評価する簡易評価法を併せて開発しました。
 カビ耐性の評価にかかる時間を劇的に短縮することで、設計・施工段階での充分な建材比較・選定を容易にし、カビ発生リスクの低減に寄与します。

カビ耐性建材の評価フロー

カビ耐性建材の評価フロー

III.測定診断 「カビ迅速診断技術」(施工段階)

一見してカビに見える汚れも、錆びや化学的な変質であることもあり、カビかどうかを判断して対策を行うには調査を行わなければなりません。従来の調査には汚れを採取して培養する方法しかなく、1週間以上の時間がかかり、また誤認識する場合もあるなど、課題がありました。
 今回鹿島が開発した「NAD※2法」、「ATP※3法」という評価手法は、カビが生き物であるが故に保有する化学物質を利用したもので、NAD法では約30分、ATP法では約1分という短時間で、その場でカビかどうかを判断できる現場支援ツールです。このツールを使えば誰でも簡単に調査ができ、施工中現場での迅速な初動対応や、誤った処置の回避を可能にします。

※2:ニコチンアミドアデニンジヌクレトチド
※3:アデノシン三リン酸

「NAD法」と「ATP法」の診断フロー

「NAD法」と「ATP法」の診断フロー

IV.対策技術 「防カビ対策技術」(施工段階・竣工時)

 カビが施工中や竣工時に発生してしまうと、建材や換気設備などで対策することが困難という問題があります。これを解決すべく、建材表面に直接塗布できる防カビ剤「モールセーフ」を三愛石油㈱(社長:金田 凖)と共同で開発しました。
 通常の防カビタイプの建材(塗装や壁紙)が有効薬剤を予め練り込むのに対し、「モールセーフ」は建材の表面に直接塗布するので、建材表面の防カビ性能が更に高まります。また、一般的な市販の防カビ剤と違い、「モールセーフ」は主成分のアルコールに2種類の有効薬剤を添加しており、より多種類のカビに効果を発揮するよう工夫されています。
 ほぼ無色透明の液体でローラーや刷毛で簡単に塗布でき、ほとんどの内装材の表面に使用することができます。またVOC等の化学物質の放散も少ないので、室内環境への影響もほとんどありません。

防カビ剤 「モールセーフ」

防カビ剤 「モールセーフ」

「モールセーフ」の塗布状況

「モールセーフ」の塗布状況

今後の展開

 カビによる品質劣化が懸念される美術館、倉庫、医薬品工場、良好な空気環境を求める学校、病院、加湿を行う食品工場、印刷工場、多湿環境の地下室、エントランス、集合住宅など、防カビのニーズは極めて多種多様で高いものがあります。鹿島は、このほど確立したカビエンジニアリング技術の幅広い適用によって、これらのニーズに応えていく方針です。

プレスリリースに記載された内容(価格、仕様、サービス内容等)は、発表日現在のものです。
その後予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。

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