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プレスリリース

[2014/07/30]

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火災時の高度な避難シミュレーションシステム
「人・熱・煙連成避難シミュレータ PSTARS」の開発と展開

 鹿島(社長:中村満義)は、火災時に刻一刻と変化する熱や煙が人の避難行動に与える影響を考慮した高度な避難シミュレーションシステム「人・熱・煙連成避難シミュレータ PSTARS(※1)」を開発しました。今までのシステムは、人の行動と火災による熱・煙の流動を別々にシミュレーションしていたため、実際には熱や煙で大きく変化する避難動線を踏まえた避難安全性の検討が困難でした。多くの避難者を潜在的に抱える都心部の再開発案件、鉄道関連施設、スタジアムなど大規模かつ複合用途化した施設は避難動線も複雑化してきており、避難安全設計の計画も複雑になっています。こうした施設計画にあたってこのPSTARSを活用することで、データ作成の省力化や計算の高速化によってスピーディに分析することができ、人や火災の動きを3次元の動画で示すことが可能であるため、事業者や関係者へ強い説得力・訴求力も有しています。

※1 People, Smoke, Temperature, And Radiation interaction evacuation Simulator on Sim-Walker

人・熱・煙連成避難シミュレータ PSTARS イメージ

開発の背景

 近年、首都圏において、駅改札内の大規模集客施設(エキナカ)や、オフィス・ホテル・劇場・店舗などが積層した高層ビルなど、従来見られなかったような複雑・大規模な複合施設が計画されています。
一方、韓国大邱地下鉄放火火災(2003年)や9.11テロ(2001年)を契機とした大規模火災の想定や、超高齢社会と多様性社会がもたらす、災害時要支援者(老人、幼児、障がい者など)の避難困難性など防災的課題が顕著になっています。このためには、建築基準法・消防法の法令基準を上回る詳細かつ高精度の避難安全検証が必要になってきました。避難時間だけでは見えない混雑の危険性や火災に応じた避難状況の違いを視覚化することが重要になっています。

システムの概要と特徴

 当社では人間の行動について、ひとりひとりの挙動や相互作用を細かく再現できるマルチエージェント型の避難シミュレータを開発し、防災計画や歩行空間の検討等に活用しています。「駅改良工事など施工中の歩行空間の安全性・円滑性の動的再現」を目的とした、歩行者シミュレーションシステム「Sim-Walker」を実用化するなど、土木・建築両分野で共通ロジックのもとに開発を進めてきました。
 火災現象については、多くの国で標準的に用いられているFDS(※2)で解析した熱煙流動の結果を避難シミュレータに反映できるよう高度化しました。熱や煙、燃え拡がりが避難行動に与える影響を時刻歴で計算し、人の避難行動に与える影響を考慮し、下記のような火災現象特有の避難行動の再現を可能にしました。

※2 FDS(Fire Dynamics Simulator) 米国立標準技術研究所(National Institute of Standards and Technology、NIST)にて開発された火災シミュレータ

  • 火災による熱や煙を避け、迂回するもしくは引き返す
  • 火災により発生した煙の濃度によって、避難する速度が低下
  • 避難出口近くで放射熱や煙濃度が一定以上になると、その出口は使用できなくなる

火災現象特有の避難行動の再現

 火災による熱に関しては、人が受ける熱の限界値以上の領域では、人は迂回もしくは引き返しの行動をとり、煙に関しては、薄い煙の中での見通しの悪さ(減光係数)により速度が低下したり、濃い煙の中では歩行が困難になり動けなくなるといった現象を再現しています。また、避難出口に通ずる領域で、熱や煙のどちらかが限界値を超えた場合、避難者はその出口が使用できない現象も再現しています。
 火災現象については、法令上の火源の設定だけでなく、火災の起きた室の用途や可燃物の立体的な置かれ方などを考慮した「燃え拡がり」を予測することも可能です。
 また、運動能力・判断力が低下した避難者(老人、障がい者など)の想定に加え、火災という特有の環境異変に対して、個人差を考慮した下記のような反応なども再現しています。

  • 火災による煙や火炎を見て、もしくは騒ぎや警報を耳にして避難を開始する
  • 他の人が避難する光景を見て避難を開始する
  • 上記のような避難のきっかけにもかかわらず、行動を開始するのが遅れる人もいる
  • 避難の際、人が集中している方の経路を選ぶ人と、それとは逆の経路を選ぶ人がいる

シミュレーションの比較

今後の展開

 本システムは自社開発のため、現地条件に応じた歩行行動ロジックの追加や高度化等の改良が容易に行うことができます。今後、さらなる実績の積み重ねとシステムの改善を進め、火災時の歩行者の安全性・円滑性に配慮した施設計画立案等に役立て、より安全な施設を提供していきます。

プレスリリースに記載された内容(価格、仕様、サービス内容等)は、発表日現在のものです。
その後予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。

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