[2014/08/06]
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トンネル覆工用中流動コンクリートに用いる混和剤を改良し、現場に適用
ブリーディングを抑制して覆工コンクリートをさらに高品質に
鹿島(社長:中村満義)は、BASFジャパン(社長:ヨルグ-クリスチャン シュテック、東京都港区)と共同で、トンネル覆工用中流動コンクリートに用いるブリーディング抑制型の特殊混和剤「マスターグレニウム6500RB」を開発し、これを道路トンネルの覆工コンクリート工事に初めて適用しました。
今回開発した混和剤は、適度な流動性と材料分離抵抗性を与えることでトンネル覆工用中流動コンクリートを製造することができる混和剤に、ブリーディングを抑制する機能を付与したものです。
気温が低い冬期の施工や、保水力の小さい骨材を使用した場合などにおいて懸念される過剰なブリーディングを抑制して、均質かつ密実な覆工コンクリートの構築を実現します。
開発の背景
トンネル覆工用の中流動コンクリートは、スランプフロー35~50cmで、一般的な覆工用コンクリートと高流動コンクリート(締固め不要のコンクリート)の中間的な軟らかさ(流動性)を持つコンクリートです。型枠バイブレータの軽微な振動で確実に充填させることができるため、特にコンクリート打設作業が難しい鉄筋区間やトンネル天端部の施工に適し、品質向上に有効です。
鹿島は、高性能AE減水剤と増粘剤を一液にした特殊混和剤を利用して中流動コンクリートを製造する技術を2011年に開発・実用化しています。
一方、コンクリートの打設後にコンクリート内部の水が分離して上昇する現象を「ブリーディング」と言いますが、トンネル覆工においてはコンクリートを層状に重ねながら高い位置まで打ち上げるため、コンクリート内部にある水などの軽い成分が分離上昇し、ブリーディングが生じやすくなる傾向があります。
こうして生じたブリーディング水は、トンネル天端部に溜まって抜けにくく、過剰なブリーディングが発生すると天端部の品質を低下させる原因となります。特に、気温が低くコンクリートの硬化が遅い冬期や、微粒子が少ない細骨材(砂)を使用した場合などにおいてこの懸念がありました。
ブリーディング抑制型特殊混和剤による中流動コンクリートの品質向上
この課題に対処するため、鹿島とBASFジャパンは、トンネル覆工用中流動コンクリートの製造に用いる混和剤の技術をさらに発展させ、コンクリート内部の水を均等に保持する成分を配合することで、ブリーディングを抑制する新たな混和剤の開発に成功しました。本混和剤は、コンクリートの配合を変更することなく、従来型混和剤と入れ替えるだけでブリーディング抑制の機能を付与できます。また、JIS A 6204「コンクリート用化学混和剤」に適合しています。
外気温が10℃程度の環境において従来型混和剤との比較試験を行ったところ、ブリーディング量を約60%低減できることを確認しました。また、施工性や圧縮強度などの性能は従来型の混和剤と同等であり、中流動コンクリートの性能を活かしつつブリーディングを抑制し、高品質な覆工コンクリートを構築することが可能になりました。
現場への適用
三重県発注の「主要地方道一志美杉線道路改良 矢頭峠トンネル(仮称)工事」において、トンネル延長1,637m全線の覆工に適用した中流動コンクリートのうち、2013年12月~2014年2月の冬期に施工した延長110.5mの区間に、この新たな混和剤を初めて適用しました。
脱型後の覆工表面を確認したところ、ブリーディングによる側壁部の砂すじや側壁部と天端部の間の弱部・色むらは発生しておらず、美しい仕上りとなりました。また、硬化後に表面透気試験を行った結果、均質、かつ密実な覆工コンクリートが実現したことを確認しています。
今後の展開
鹿島は、従来型混和剤に加え、今回開発したブリーディング抑制型混和剤を用いた中流動コンクリートを山岳トンネルに積極的に展開し、更なる覆工コンクリートの品質向上を推進します。
工事概要
発注者 | : 三重県 |
工事名 | : 主要地方道一志美杉線(矢頭峠バイパス)道路改良(矢頭峠トンネル(仮称))工事 |
工事場所 | : 三重県津市一志町波瀬 ~ 津市美杉町下之川 |
工期 | : 平成23年10月~平成26年12月 |
施工者 | : 鹿島・日本土建・勢和特定建設工事共同企業体 |
工事諸元 | : NATM、トンネル延長1,637m、掘削工99,380m3、コンクリート工13,191m3 |
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