[2014/09/04]
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山岳トンネルの切羽崩落を予測する「切羽ウォッチャー®」を改良
飛躍的な長距離化・高精度化を実現
従来型よりも長距離計測を可能にし、ターゲット用塗料も新たに開発
鹿島(社長:中村満義)は、山岳トンネル工事において、レーザ距離計で切羽の変動を常時観察し、切羽崩落の危険性を高精度に予測する「切羽ウォッチャー®」を2012年に開発しましたが、このほど、より高精度なレーザ変位計と、凹凸のある切羽においても安定して機能する反射塗料を新たに開発しました。 これにより、従来の2倍以上という長距離での測定が可能となり、盛替え回数の大幅な削減と切羽崩落予測の更なる高精度化を実現しました。鹿島は今後、新システムを切羽の不安定化が懸念される山岳トンネルに積極的に適用していく方針です。
開発の背景
鹿島が2012年に開発した「切羽ウォッチャー」は、高精度レーザ距離計を回転制御装置と組み合わせることで、1台のレーザ距離計で切羽の複数点の変位を計測し、切羽崩落の可能性や崩落に到るまでの時間をリアルタイムに予測することができるシステムです。突発性崩落の可能性がある地山にも対応ができるため、これまで6箇所の現場に適用してきました。
しかし、従来の「切羽ウォッチャー」の測定可能距離は約40mであり、盛替え回数を減らすためには、より長距離測定が可能なシステムが必要でした。また、ターゲットとなる反射板を用いることで高精度に計測できますが、切羽に都度反射板を設置するのは手間がかかるとともに、切羽に接近して設置する行為は安全面にも課題が残ることから、より簡易かつ安全にターゲットを設置する方法も求められていました。
改良を加えた「切羽ウォッチャー」の概要
これらの課題に対処するため、鹿島は、従来よりもレーザ光が強く回転制御装置なしでトンネル切羽面3点の計測が可能な三方向レーザ変位計を、明治コンサルタント株式会社(社長:山川雅弘 札幌市中央区)、株式会社レクザム(社長:岡野晋滋 大阪市中央区)と共同で開発しました。また、簡易かつ安全に切羽面への塗布が可能で、ターゲットとして安定して機能する反射塗料を、株式会社小松プロセス(社長:松浦宏明 石川県能美市)、公益財団法人鉄道総合技術研究所(理事長:熊谷則道 東京都国分寺市)と共同で開発しました。
今回開発した三方向レーザ変位計は、光量が多く、1台で3方向にレーザを照射できるため、従来必要だった回転制御装置なしで複数点の長距離計測が可能となります。また、ターゲットとして機能する塗料は、光が入射方向にそのまま反射する再帰性反射塗料と呼ばれるもので、レーザに効率よく反射する輝度や、切羽に確実にとどまる粘度等の仕様を今回新たに決定しました。この再帰性反射塗料を用いることで、計測された変位量のバラつきが抑えられます。
光量の多い三方向レーザ変位計と再帰性反射塗料を組み合わせることで、計測可能距離も100mと従来の2倍以上の長さに延長でき、盛替え回数を削減することができます。また、100m離れた場合でも変位量の誤差が±0.3mmと高精度で計測できることを確認しています。
更に、切羽への安全な塗布方法も考案し、ローラ式なら2m以上、スプレー方式なら5m以上離れて塗布することが可能となりました。
現場への適用
従来システムに比べて、長距離計測を高精度に行える改良を加えた新しい「切羽ウォッチャー」を、現在施工中の三田坂トンネル(三重県伊賀市)において貫通100m手前の坑口部に適用しました。その結果、高精度化を確認できたとともに、計測可能距離が従来の2倍以上を達成したことで、盛替え回数も従来システムに比べ半分以下に大幅に削減されました。
今後の展開
鹿島は、今回改良を加えた新しい「切羽ウォッチャー」を、全国の山岳トンネル現場に積極的に適用し、更なる山岳トンネル工事の安全な施工を推進していく方針です。
工事概要
工事名 | : 一般国道422号三田坂バイパス道路改良(三田坂トンネル(仮称))工事 |
発注者 | : 三重県 |
工事場所 | : 三重県伊賀市諏訪~伊賀市三田 |
工期 | : 2012年12月~2015年8月 |
施工者 | : 鹿島・日本土建・廣嶋特定建設工事共同企業体 |
工事諸元 | : トンネル延長1,528m、掘削工法NATM方式・発破掘削 |
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