[2015/07/14]
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粘性土壌を素早くサラサラにする選別補助材「泥DRY(デイドライ)」を開発
中間貯蔵施設の受入・分別施設で除去土壌から草木などの高精度選別を可能に
鹿島(社長:押味至一)は、福島第一原子力発電所事故に伴い発生した放射性廃棄物の安全な処理のため、積極的な技術開発をおこなっています。
このたび、除去土壌から土以外の草木などを選別・除去する際に用いる選別補助材として、従来品よりも高機能である「泥DRY(デイドライ)」(商標登録出願中)を開発しました。これにより、粘性の高い除去土壌をサラサラな土壌に素早く改質することができ、選別作業効率が格段に向上します。
現在、本材を用いた選別作業を最適化するシステムの構築を進めており、環境省による「平成27年度除染・減容等技術実証事業」として採択されています。
泥DRY(デイドライ) |
泥DRYによる土壌改質効果(左:処理前、右:添加・撹拌後) |
開発の背景
放射性物質を含む廃棄物は、最終処分前に中間貯蔵施設にて最長30年間安全に保管されます。このうち、除去土壌は埋立てにより保管されますが、運ばれてきた除去土壌は、土の他に草、木、根などの有機物が混ざっている状態です。
受入れ許容量に限りがあることに加え、そのまま埋立てを行った場合に考えられる問題として、土壌内の有機物の腐敗によって埋立て後に容量が減少し、埋立地表面が沈下する恐れがあること、埋立てにより嫌気状態となった土壌内に有機物が存在すると硫化水素ガスが発生する恐れがあること等が挙げられます。
これらの解決、すなわち「土壌の容量を減らす(減容化)」「埋立地沈下の防止」「硫化水素ガス発生の抑制」のためには、受入・分別施設にて草木などを取り除き、埋め立てるべき土壌のみを選別することがきわめて重要です。
しかし、除去土壌の半分近くは農地から排出されると予想され、農耕地特有の水を多く含んだ粘性の高い泥土であり、そのまま選別機械に投入すると泥分が付着しうまく機械が作動しないため、事前に粘性の高い土質から扱いやすい砂状に改質する必要があります。
従来、粘性土壌の改質には選別補助材として生石灰などが使用されてきましたが、①改質まで一晩を要するなど反応時間が長い②反応の際に発熱する③浸出水が高アルカリ性となり周辺環境への影響が懸念される④有機物を含んだ土壌に用いるとアンモニアガスが発生し作業環境が悪化する、などの課題も多く、中間貯蔵施設における受入・分別施設での稼働を見据え、より高性能で環境負荷の少ない選別補助材が望まれていました。
「泥DRY」の概要
そこで鹿島は、従来品よりはるかに高性能な選別補助材「泥DRY」を開発しました。高含水粘性土にこの「泥DRY」を添加・撹拌することで、素早く、確実にサラサラの砂状に改質することが可能です。
「泥DRY」の特徴は以下の通りです。
- 粘性土壌への添加後、1~3分撹拌するだけでサラサラの砂状に改質されます。
- 添加量は5~20kg/m3と、従来品(生石灰)より少量で十分な性能を発揮します。
- 無機材料を主体とした、環境に優しい中性の材料です。
- 放射性物質の吸着性能があるゼオライトを配合しているため、汚染土壌に適用することで、放射性物質拡散防止効果が期待できます。
現場での適用・比較実験
当社が除染工事を担当している福島県双葉郡富岡町にて、実際の農地の高含水粘性土を用いた比較実験を行いました。改質前の農地土壌は、網目が10mm角のふるいでふるっても通過しないほどの泥土状態でした。 この農地土壌を撹拌機に0.2m3入れ、従来の改質材である生石灰と今回開発した「泥DRY」をそれぞれ投入し、3分間撹拌混合し比較を行いました。 その結果、生石灰では、120kg/m3の添加で50%が通過するにとどまりましたが、「泥DRY」を用いたところ、20kg/m3添加しただけで、90%がふるいを通過するほど土壌はサラサラの砂状に改質されました。
今後の展開
今後、当社は選別補助材「泥DRY」と適切な混合撹拌・選別装置を組み合わせることで、施設での連続稼働を最適化できる高精度な選別作業のシステム構築を進め、中間貯蔵施設の埋立て土壌の減容化に貢献していきます。 また、粘性の高い土を扱いやすく改質できることは、土壌の放射能濃度分別など機械で土を扱う様々な場面で大いに効果を発揮するとなると考え、「泥DRY」の活用を積極的に提案していきます。
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