[2015/08/19]
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洋上風力発電用の海上作業構台「Kプラットフォーム コンボ」の開発
風車の組立から解体までをサポートする可変式の作業構台
鹿島(社長:押味至一)は、今後建設の増加が予想される洋上風力発電用の海上作業構台「Kプラットフォーム コンボ」を開発し、さらに、これを利用した洋上風車組立工法も併せて開発しました。
Kプラットフォーム コンボは、日本国内の洋上ウインドファーム計画地として想定される、港湾区域内での建設条件に合わせた作業構台です。基礎の構築から風車の組立、メンテナンス、最終的な撤去作業までを、用途によりアタッチメントを取り換えることで対応できます。これまで欧州で洋上風力建設に用いられていた大型SEPに対し安価に建造できることも大きな特長です。
※SEP:Self Elevating Platform=自己昇降式作業台船
開発の背景
世界各国で再生可能エネルギーへの転換が急ピッチで進んでおり、風力発電の市場規模が拡大しています。日本での風力発電システム市場規模は、運転開始ベースで2014年度に740億円、2015年度には1,000億円に達するという試算があります。その後も新規導入量の増加に伴って市場成長が続き、2020年度には2,800億円にまで拡大すると予想されています。なかでも、国内の陸上における風力発電適地の減少に伴い、洋上風力発電が注目を集めています。
洋上風力の市場が先行している欧州では、一つのウィンドファームに設置される風車の基数が多いことに加え、港湾から数10kmも離れた遠方のサイトに風車を輸送して設置するため、多量の風車を積載して現地まで航行しそのまま設置できる大型のSEPを用いることが一般的です。さらに、近年はより効率的な発電を行うために風車が大型化し、必要とされるSEPも大型化する傾向にあります。
一方、現時点の日本国内の洋上ウィンドファーム計画においては、港湾区域内での建設計画が多く、施工環境の面から大型のSEPは適していません。また、風車の数も少ないため事業費の面からも高額なSEPを投入することが困難なケースが多いのが現状です。
鹿島は、「SEP-KAJIMA」を用いた様々な大型海洋設備の施工実績があり、仮設の作業構台であるJEP(Jumping Elevating Platform)の施工経験も豊富です。また、日本で初めてとなる気象条件の厳しい外洋における洋上風力の設計施工「銚子沖洋上風力実証施設」を完成させた経験をベースに、今回、国内の洋上風力サイトの建設条件に合わせた海上作業構台Kプラットフォーム コンボを開発しました。
Kプラットフォーム コンボの概要と特長
国内の洋上風力サイトは、作業基地となる岸壁から設置場所までの移動距離が数km以内と短いこと、設置する風車が10~20基程度と少ないこと、設置場所の水深が比較的浅いこと、波浪条件が比較的穏やかな期間が多いことなどの特徴が挙げられます。そこで鹿島は、大型SEPのようにエンジン等の自航装置を搭載せず、作業構台だけのシンプルなKプラットフォーム コンボの開発に至りました。
Kプラットフォーム コンボはクレーンを搭載した仮設の作業構台で、作業構台本体は、1~2基の風車の組立に必要な最小限のコンパクトな設備となっており、水上移動時にはフロータに作業構台を載せて、別の船で曳航します。これにより、大型SEPに比べて建造費用を大幅に抑えることができます。
またKプラットフォーム コンボは着床式の風車建設を対象としており、モノパイルやジャケット、重力式など、様々な形式の着床式基礎に対応可能です。施工は風車1~2基ずつとなりますが、移動距離が短く、波浪条件も比較的穏やかである場合では、大型SEPと同等の施工速度が確保できることを確認しています。
なお、本技術に関する一連の特許は既に出願しています。
Kプラットフォーム コンボでの洋上風車組立ステップ
- Kプラットフォーム コンボを岸壁へ接近させ、作業台の脚を下ろして着床させ、搭載クレーンにより風車部材を積み込む。
- 積込み完了後作業台の脚を上げ、フロータを設置して曳船によりKプラットフォーム コンボを作業海域へ曳航する。
- 先行して施工済みの基礎部へ進入し、作業台の脚を下ろして着床させる。
- その後、作業構台を上昇させ、フロータを離脱させる。
- 搭載クレーンにより風車を組み立てる。
- 組立完了後フロータを着装し、作業構台を下降させる。
作業台の脚を上げた後、次の風車部材の積込みのために曳船により岸壁まで曳航する。
今後の展開
Kプラットフォーム コンボは風車の組立工事だけでなく、基礎施工にも適用できるため、今後は基礎の施工と風車組立を同じ作業構台を用いて施工する効率的な工法を確立していく方針です。また、建設後も、アタッチメントを取り換えることで、風車のメンテナンスや最終段階での撤去作業にも適用することが可能です。
鹿島は、日本の気象条件や施工条件に合わせた効率的な洋上ウインドファーム建設に新たな方式を提案するだけでなく、風車の運用時、メンテナンス、さらには、将来の解体作業までをも見据えた洋上風力発電設備のライフサイクルをトータルで支援する体制を整えていく方針です。
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