[2016/02/15]
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水理実験施設を更新、多様な波の再現が可能に
水路実験の性能および汎用性が大幅に向上
鹿島(社長:押味至一)は、このたび技術研究所(東京都調布市)において、海洋・水理実験棟内の水理実験施設である「マルチ造波水路」を更新しました。
これにより、再現できる津波波形の高さが2倍になるなど実験性能が大幅に向上し、より再現性の高い、多様な水理実験を行うことが可能となりました。
更新の背景
鹿島技術研究所 海洋・水理実験棟は1975年に建設され、海洋開発に必要な建設技術を確立するための様々な実験を行っています。
主な施設として、平面水槽と水路があり、波浪(風波)・津波・流れ等を実験室内で再現し、防波堤・護岸・洋上風力発電基礎などの臨海・海洋構造物に対する様々な水理模型実験を行ってきました。
このうち、マルチ造波水路で行う実験については、1990年代後半より、ポンプ式の津波造波・環流装置を用いて実施しています。ポンプ式装置は、沖合で発生する様々な津波波形を再現できる点、および陸上へ進行した際の津波の変形を再現できる点において大変優れており、忠実な実験を行うことが可能です。
鹿島は本装置をいち早く採用し、実験により導き出された津波波力評価式が、2011年3月11日の東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)以前に発行されたガイドライン(※)へ掲載されるなど、業界をリードする成果を上げてきました。
このたび、あらゆる想定に対応できる再現実験のニーズが高まってきたことから、より精度・汎用性の高い施設とするべく、マルチ造波水路の更新を行うこととしました。
※「津波避難ビル等に係るガイドライン」 2005年6月 内閣府
更新のポイント
今回の更新では、津波造波・環流装置は引き続きポンプ式を採用しています。ポンプの能力を高めたことで、1/100縮尺実験において最大20m相当の津波高が再現できるようになりました。 これにより、東日本大震災で観測された二段型(コブ型)波形の再現実験、さらに、今後発生が懸念されている南海トラフ地震の想定津波高による実験も可能になりました。また、水路幅を従来の0.7mから1.2mへ広げたため、これまでより大きな規模の模型を用いた実験が行えるようになり、汎用性もさらに向上しました。
今後の展開
港湾・海洋構造物に係る研究開発では、水理実験と数値解析の両面からの検証を行うことが不可欠です。
今回の更新を経て性能が向上したマルチ造波水路を積極的に活用することで、海洋・港湾構造物や、津波防潮堤をはじめとする陸上設置構造物に対する波の影響や作用を把握し、安全な海洋・港湾構造物の建設技術確立や沿岸域の防災・減災対策に役立てていきます。
■海洋・水理実験棟について
海洋・水理実験棟の主要施設である平面水槽・水路のうち、平面水槽は水槽幅が広いため、例えば、防波堤で囲われた港内部における波浪伝達の実験など、広いエリアでの波の動き・作用を検証する実験等に使用しています。 一方、水路では、防波堤等の断面模型を用いた実験を行っています。実験では、模型に圧力計・分力計を取り付け作用する波の力を計測したり、護岸を越える水量を計測するなど、構造物に与える影響を検証しています。
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