[2016/11/24]
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戻りコンを再びコンクリートに、究極の資源循環を実現
戻りコン再生セメントを使用したコンクリート「エコクリート®R3」
鹿島(社長:押味至一)は、三和石産株式会社(神奈川県藤沢市、社長:中田泰司)、東海大学笠井哲郎教授と共同で、環境省の環境研究総合推進費(3J153001)による研究助成を受け、戻りコンクリート由来のスラッジ再生セメント「Cem R3」(セムアールスリー)と、これを使用したコンクリート「エコクリートR3」を開発しました。全国で年間400万tに達するとされ、現状はほとんどが処分されている戻りコンをコンクリートの製造に再利用するという、他には類を見ない技術です。
鹿島は、環境影響に配慮したコンクリートを「エコクリート®」シリーズとして開発を継続しています。今回開発したエコクリートR3で、資源循環型社会の形成に寄与してまいります。
開発の背景
建設業の工事現場では、受入れ検査に使用した生コンなど、注文したコンクリートの1~2%がやむを得ない理由から使用できず、そのほとんどは再利用されることなく処分されています。首都圏など一部の地域においては、戻りコンの引き取りを有料化する動きが出るなど、環境負荷低減の観点から、その減量・再生が大きな課題となっています。
そこで、鹿島など3者は、建設副産物である戻りコンを再利用したセメントを開発するとともに、究極の資源循環を図る、画期的なコンクリート製造技術の確立に至りました。
「Cem R3」と「エコクリートR3」の特長
Cem R3は、戻りコンのスラッジ(排水に含まれる固形分)を脱水処理した原料を、分級、乾燥、粉砕して製造します。このCem R3を主たる結合材として使用し、高炉スラグ微粉末やフライアッシュなどの副産物混和材を併用して製造したコンクリートが、エコクリートR3です。
Cem R3の製造では、強度に寄与する有効成分(未水和セメント分)をできる限り残存させるべく、戻りコンを短時間で処理することが課題でしたが、再利用時の強度発現に影響を与えることなく水和反応を抑制する新たな添加剤を開発し、処理時間の制限を緩和しました。さらにはスラッジの処理過程で特殊な分級・粉砕処理を施すことで、未水和セメント分を多く残した、高品質の再生セメントを製造する技術を確立しました。
また、Cem R3の品質は、JIS標準の試験方法である比表面積試験を用いて日常的に管理されており、強度が効果的に発現する「比表面積8000cm2/g以下」のみを製品として使用します。
エコクリートR3のバリエーション
エコクリートR3は、Cem R3を20~30%使用する「低含有型」、及び95%程度使用する「高含有型」を揃え、様々なニーズに対応可能です。
■「低含有型」エコクリートR3
Cem R3を20~30%使用する「低含有型」は、関東圏の工場から生コンクリートとして出荷する体制を整備しています。生コンクリートとして出荷するには、その強度発現について特に綿密な管理が必要ですが、Cem R3の比表面積が8000cm2/g以下を満足していれば、普通コンクリート同等の強度が高い信頼性とともに確保されます。鹿島の一部現場においては、既に仮設材としての使用を開始しており、今後本設への適用も視野に入れています。■「高含有型」エコクリートR3
Cem R3と高炉スラグなどで95%程度構成され、普通セメントの使用を極限まで抑えた「高含有型」は、コンクリート製造過程のCO2排出量を約90%削減する、究極の低炭素コンクリートとなります。製造から打設までの時間の制約から、生コンクリートではなく、コンクリート二次製品や、床スラブなどのプレキャスト(PCa)部材として適用します。なお本技術は、内閣府の第14回産学官連携功労者表彰~つなげるイノベーション大賞~において、環境大臣賞を受賞しました。
今後の展開
エコクリートR3は、試験室での基礎検討、長期暴露による耐久性試験や実物大スラブによる曲げ試験、工場での実機製造試験などを経て、品質の安定性を確認済みです。また建築基準法に基づく指定性能評価機関である(一財)日本建築総合試験所の技術証明を既に取得しており、JISに適合することが担保されています。
鹿島は、資源循環型社会の形成に貢献するため、今後さらなる研究と実績の蓄積により、建築物の主要構造部材に対するエコクリートR3の展開を図ってまいります。
プレスリリースに記載された内容(価格、仕様、サービス内容等)は、発表日現在のものです。
その後予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。