[2017/05/17]
838KB
クレーンを使用せずに幅15mの型枠を自動で一括スライド
大分川ダム建設工事 洪水吐減勢工への適用
鹿島(社長:押味至一)は、世界的な型枠メーカの日本支社であるDoka Japan(ドカジャパン)社製のセルフクライミング装置に、従来からダム現場で使用されている大型の型枠部材を組み合せた新たな型枠機構を開発しました。このほど、大分県で施工中の大分川ダム建設工事において、幅15mの型枠を自動で一括スライドさせることに初めて成功、コンクリート打設作業を完了しました。
この技術は、次世代の建設生産システム「A4CSEL®」をはじめとする、鹿島の自動化施工技術のひとつであり、建設業が抱える将来の担い手不足という課題への対策とともに、生産性と安全性の向上にも大きく寄与するものです。
開発の背景
建設業では、熟練技能労働者の不足や若年層の入職者不足による技能労働者全体の高齢化という、将来的な課題があります。加えて、年々減少傾向にあるものの、建設業における労働災害の発生件数は他産業に比較して依然として多い状況にあります。
ダムなどの大型構造物を施工する際、コンクリート打設作業においては型枠をスライドさせて建て込む作業が必要ですが、飛来落下・墜落転落災害のリスクや、クレーン作業とダンプトラックによるコンクリート運搬が錯綜するなど、安全面において課題がありました。また、とび工や溶接工など特殊技能作業員の確保も必須でした。
そこでこれらの課題を解決するため、クレーンを使用せず、油圧により自動で型枠をスライドさせる技術の開発に着手し、このほど現場に適用しました。
クレーンレスでの型枠スライド
一般的に、コンクリートダムの堤体で1ブロック(幅15m)の型枠作業を行う場合は、幅3mに5分割した型枠をクレーンで吊り上げて建て込みます。今回大分川ダムの洪水吐減勢工において、コンクリートダムでの適用を目指し、油圧ジャッキで型枠を上昇させる機能をもつセルフクライミング装置に、従来からダム現場で使用しているメタルフォーム(鋼製型枠部材)とシャタリング(大型壁型枠部材)を組み合せた新たな型枠機構を開発、幅15mの型枠を自動で一括スライドさせ、コンクリート打設を行いました。
またこの型枠機構は、セルフクライミング装置が外側から型枠を保持する構造のため、従来の打設面から型枠を固定するセパレータが不要となり、溶接作業の必要がなくなりました。
従来の型枠スライド作業との比較
従来のクレーンを用いた作業と比較した場合、本技術には以下のような特長があります。
- 1班あたりの作業員が5名(クレーンオペレータ含む)から3名となり、40%の削減
- 1ブロック幅15mの型枠作業(脱型から建込みまで)の時間が280分から220分に21%短縮
- 溶接工・とび工(型枠大工)・クレーンオペレータなどの特殊な作業員でなくても施工が可能
- 型枠作業のための足場が躯体に常に固定されているため、高所でも安全に作業可能
- コンクリートダム堤体に適用した場合、打継面でのクレーン作業がなくなるため、コンクリートを運搬するダンプトラックとの錯綜がなく、安全性が向上
今後の展開
鹿島は今後、ダム堤体のコンクリート打設において、3ブロック(幅45m)の型枠スライド作業で、全く人力を必要としない「全自動化」を目指します。
また、この型枠機構の他現場への転用なども視野に、コスト削減を追求しつつ、大型コンクリート構造物への幅広い普及展開を図っていきます。
工事概要
工事名 | : 大分川ダム建設(一期、二期)工事 |
発注者 | : 国土交通省九州地方整備局 |
工事場所 | : 大分県大分市大字下原地先 |
工期 | : 2013年9月~2019年3月 |
施工者 | : 鹿島・竹中土木・三井住友特定建設工事共同企業体 |
工事諸元 | : ロックフィルダム、堤高:91.6m、堤頂長:496.2m、堤体積378万m3 |
プレスリリースに記載された内容(価格、仕様、サービス内容等)は、発表日現在のものです。
その後予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。