[2020/06/18]
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VOC汚染地下水の効率的な浄化技術「地下水サーキュレーターD3」を開発
特殊な井戸構造で人工的に地下水を効率的に循環
鹿島(社長:押味至一)は、稼働中の工場敷地や工場跡地などにおいて、揮発性有機化合物(以下、VOC)で汚染された地下水を効率的に浄化する微生物処理工法「地下水サーキュレーターD3(ディースリー)」を開発しました。本工法は、独自に考案した二重管構造の井戸の上下深度の片方から地下水を吸水し、もう片方から薬剤を吐出し、さらに隣り合う井戸ではその逆の運転を行うものです。このような循環井戸を複数本設置することで、人工的に井戸間の地下水を循環させ、井戸から地盤に薬剤を広範囲に効率的かつ満遍なく供給して地下水を浄化します。本工法の適用により、井戸の設置本数を削減できるためコストが低減でき、また、井戸の設置間隔を広くできることから稼働中の工場建屋直下の地下水浄化も可能になります。
この度、実際にVOC汚染地下水を有する地盤に対し検証実験を行い、その有効性を確認しました。
開発の背景
VOCによる汚染地下水の浄化技術である微生物処理工法(嫌気性バイオスティミュレーション)は、井戸から薬剤を注入し、地盤中に元々存在する嫌気性微生物を活性化させることで浄化を行います。薬剤が嫌気性微生物に到達することで浄化が進みますが、従来の注入のみによる方法では、地盤条件等により薬剤を一定濃度で確実に供給できないこと、薬剤を到達させるために井戸を密に配置する必要があること、ならびに稼働中の工場敷地での浄化が困難なことといった課題がありました。さらに、2017年の土壌汚染対策法改正により、VOCの一種であるクロロエチレンが新たに特定有害物質に追加され、従来よりも浄化対象範囲が広がる可能性もあることから、低コストなVOC汚染水の浄化技術に対するニーズが高まっています。
本技術の概要と特長
また、確実な地下水の浄化に加え、井戸の設置間隔を広くできることから、設置する井戸数を削減することが可能となり、従来工法に比べて地下水浄化による工場操業への影響を低減できます。
検証実験結果
2019年4~9月に行った循環井戸1本による検証実験の結果、24時間、安定した流量での循環運転が可能なことや、井戸から14m離れた地点でもVOCが浄化されたことを確認しました。このことから、本実験を実施した地盤条件では、従来は数mだった井戸間隔を最大28mで設置できるため、従来の注入のみによる工法に比べて約20%のコストダウンが可能なことが試算され、本技術の有用性が確認できました。
今後の展開
今後、全国各地の稼働中の工場敷地や再開発に向けた工場跡地の浄化工事などに本技術の適用を提案していくとともに、浄化物質の適用範囲拡大に向け技術開発を進めていきます。
プレスリリースに記載された内容(価格、仕様、サービス内容等)は、発表日現在のものです。
その後予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。