[2021/12/23]
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「KTドーム®」工法を実工事に適用
ドーム型構造により柱や梁のない大空間を実現
鹿島(社長:天野裕正)は、米国ドーム・テクノロジー社(CEO:Bradley Bateman)との技術提携により、多様なドーム型構造体の構築が可能な「KTドーム※」工法を開発しました。本工法は、工場製作したドーム型のポリ塩化ビニル(PVC)膜に空気を送り込んで膨らませ、これを型枠として内側からコンクリートを吹き付けることで躯体を構築していくため、施工中に天候の影響を受けにくく、工期の短縮や建設コストの低減が可能となります。2020年3月には、当社の西湘実験フィールド(神奈川県小田原市)において、国内で初めて本工法によるドーム型事務所棟を建設しました。この実績を踏まえ、本年6月から本工法を貯蔵サイロ建設工事(山口県周南市)に適用し、12月16日には膜の膨張を実施しました。その結果、1時間ほどで直径27.5m×高さ28mの大空間が出現しました。引き続き内部躯体を施工し、5ヵ月後の2022年5月にドーム躯体工事が完了する予定です。
今後、本工法の活用範囲を広げ、アリーナなど様々な用途の建物に展開していきます。
※KAJIMA next Technology DOME
開発の背景
近年、持続可能な社会の実現に向け再生可能エネルギーが注目される中、日本国内各地でバイオマス発電が計画され、その材料となる木質ペレットの貯蔵庫建設を検討する機会が増えました。このような中で、穀物やセメントなどの様々な貯蔵庫等のドーム技術を用いた建設に全世界で700件余りの実績を持つ、米国ドーム・テクノロジー社から同技術の紹介を受け、日本への技術導入を検討してきました。その結果、同社の技術は、鋼製サイロやRCサイロといった在来工法に比べ、ドーム型構造体を短工期で施工できることが確認できたため、同社と技術提携しました。その後、建築基準法に基づいて、吹付けコンクリート(特殊な建築材料)を用いた構造の大臣認定を取得し、2020年3月に本工法を用いたドーム型事務所棟を建設しました。
KTドームの概要と特長
- PVC膜が塩害から躯体を守るため、沿岸部においても高い耐久性を確保
- ドームの内側に吹き付けた断熱材が外部の熱を効果的に遮断するため、一年を通じて安定した室内温度を保持
- 内部に継ぎ目がないため粉塵が蓄積せず、また断熱性が高いため結露の発生を大幅に抑制
- このため、粉塵や結露により自然発火する恐れがある木質ペレットなどの可燃性貯蔵物の発火リスクを大幅に低減
- 内部の躯体工事は、PVC膜を膨張後、膜の内側から行うため、天候の影響を受けにくくスピーディーな施工が可能
- 貯蔵量に比例して、建物規模が大きくなるほど建設コストが低減
今後の展開
今回建設するサイロは、1万トン(直径27.5m×高さ28m)の貯蔵量を有します。個別の案件ごとに大臣認定の取得は必要ですが、4.5万トン(直径52m×高さ50.25m)の貯蔵サイロで構造評定の取得実績があるため、同規模までの具体的検討が可能です。
今後は、サイロ用途を含むドーム大型化の検討を進めるほか、無柱の大空間を構築できる特長を活かし、サイロだけではなく、体育館やアリーナなどの施設をはじめとする様々な用途の建物の建設に、本工法を提案していきます。
バイオマス発電燃料貯蔵庫 | 大空間教会 |
直径52m×高さ50m | 直径83m×高さ22m |
工事概要
工事名 | : 株式会社トクヤマ南陽工場ドーム型サイロ建設工事 |
工事場所 | : 山口県周南市渚町4900-4 徳山製造所南陽工場 |
発注者 | : 株式会社トクヤマ |
設計・監理 | : 鹿島建設株式会社 |
施工 | : 鹿島建設株式会社 |
建物用途 | : サイロ(貯蔵量:1万トン)ほか |
建物規模 | : 直径27.5m×高さ28m |
延床面積 | : 594m2(ドーム部分のみ) |
構造 | : 鉄筋コンクリート造 地上1階 |
工期 | : 2021年6月~2022年12月(予定) |
イメージ動画
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