[2025/10/01]
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無垢の杉材を用いた木質耐火被覆工法「Tie-KaSOLID®」を実適用
中低層鉄骨造建物の1.5時間耐火を実現、大臣認定を取得
鹿島(社長:天野裕正)は、中低層鉄骨造建物の柱部材に必要な1.5時間の耐火大臣認定を取得した、シンプルかつスリムで自然な木目の美しさを有した木質耐火被覆工法「Tie-KaSOLID」(タイカソリッド、特許出願済)を開発、神姫バス姫路本社ビルに実適用しました。
Tie-KaSOLIDは、鋼管柱を囲うように無垢の杉材「KaSOLID®」(カソリッド)※1をつなぎ合わせて施工する工法であり、表面に自然の木目が現れることが最大の特長です。KaSOLIDは、日本に多く存在しながら商業利用が進まない杉の大径木から切り出した無垢の大型板で、当社が今後様々な用途で使用する予定の材料です。
※1 Kajima Simple and Optimum-cutting Lumber with Intentioned Dimension
開発の背景
近年、脱炭素社会の実現や、ウェルネス志向の高まりを受け、木造木質建築への関心が高まっています。また、建物利用者の快適性の確保が空間設計において重要な要求項目の一つとなってきていることから、内装の木質化のニーズも増加しています。しかし、建物躯体の主要部材である柱や梁に木材を利用するには建物規模やコストなどに課題があり、現状採用できるプロジェクトは限定的です。一方、木材流通の最上流に目を向けると、日本国内には戦後に植林され、伐採適齢期を過ぎて大径木化した杉が数多く残っており、小径な杉に比べて需要が少ないため、それらの有効活用が森林の資源循環の観点からも課題でした。そこで当社は、さらに森林の炭素固定化を促進するためにも、様々な建物において、大径木化した杉を構造部材以外に利用する技術を開発しました。
木質耐火被覆工法「Tie-KaSOLID」の特長
- 一般的な集成材※2よりも木の自然な質感を表現できる厚み60mmの無垢材(KaSOLID)と、厚み6mmの不燃材(ケイカル板)を一体化したシンプルな構成。
- 鋼管柱の1.5時間の耐火性能を確保。サイズ550mmの鋼管柱※3にて2024年12月に耐火大臣認定を取得。
- 無垢の杉材KaSOLIDが化粧材も兼ねており、日本の伝統的な木造建築を彷彿させる親しみやすい外観を実現するだけでなく、スリムな外径の柱にすることが可能。
- コの字形状に一体化した耐火部材を柱の両側から挟み込む極めてシンプルな施工法を採用。上端は鋼管柱に、下端はコンクリート床にボルトで固定する簡易な取付方法であり、作業量・作業時間を最小化。さらに、取り外してのメンテナンスや交換も容易。
※3 サイズ300mmの鋼管柱も、2025年内に同大臣認定を取得できる見込み(性能評価試験は合格)
<無垢の杉材「KaSOLID」>
木材利用を拡大するためには材料コストを抑制することも重要です。一般的に建材として用いられる集成材はコストが導入の課題となることがあります。そこで、中国木材株式会社の協力を得て無垢の杉材KaSOLIDを開発しました。KaSOLIDは、日本国内に多数存在し、商業利用が進まない杉の大径木から、無駄なく大型板を切り出すとともに、部材寸法を標準化して乾燥効率の最適化を図ることで、製材コストを抑えたものです。無垢材ならではの自然な美しさがあり、今後、様々な用途での活用が見込まれる材料です。
今後の展開
鹿島は今後、木質空間などが求められるプロジェクトにおいてTie-KaSOLIDを積極的に提案し、お客様の様々なニーズに応えていきます。さらに、木造木質建築に資する各種技術開発に取り組み、脱炭素社会の実現に貢献してまいります。工事概要
事業主 | : | 神姫バス株式会社 |
建物名称 | : | 神姫バス姫路本社ビル |
所在地 | : | 兵庫県姫路市北条口1丁目17番地 |
用途 | : | 事務所 |
敷地面積 | : | 794.08m2 |
延床面積 | : | 3,405.91m2 |
構造 | : | 鉄骨造 |
階数 | : | 地上7階 |
設計 | : | 鹿島建設株式会社 関西支店 |
監理 | : | 株式会社二神建築事務所 |
施工 | : | 鹿島・神姫バス不動産特定建設工事共同企業体 |
竣工 | : | 2025年9月 |
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