Technology

超高層百六十二m解体への挑戦

さまざまな課題をクリアする新しい解体工法を開発

交通の結節点であり、日々多くの人が行き交う浜松町。今回の工事はこの場所で、超高層ビルを解体するというものです。その高さは、解体される建物としては国内最高の162m。また、新幹線が往来する線路など、重要なインフラ施設にも近接しているため、解体ガラの外部への落下や風散・飛散の防止、近隣への粉塵飛散、騒音等に関する対策を通常以上に徹底する必要があります。一方、ビル最上階に重機を乗せて解体する工法では解体ガラの落下リスクや最上部での粉塵の飛散リスクを避けられません。また、建物をブロック状に解体して吊取っていく工法では解体ガラの落下や粉塵の風散・飛散リスクは低減できるものの、コストの増加や工事期間が長くなるといった問題がありました。そこで今回の解体工事では、これらの問題をクリアする新しい解体工法を開発しました。

切って/吊って/下ろす鹿島スラッシュカット工法®

従来の工法
鹿島スラッシュカット工法®

まず、建物内部で床を先行して切断し、大きなブロックに分割。そのブロックを最上階からクレーンで吊り上げます。そして、ビル内部に設けた12mx9mの巨大な揚重開口を使ってブロックを地上に下ろし、地上で小さく解体します。粉じんが発生する切断作業は天井・外壁で囲まれた建物内の密閉空間で完結。建物最上階の解体フロアでは、躯体を溶断し、大割ブロックをクレーンで吊って地上に下ろす作業のみを行います。外部への飛散・風散・騒音といったリスクを可能な限り排し、周辺の安全に配慮した工法です。

新開発コンクリートを斜めに切断

建物内部でコンクリートの床を切断解体する場合、切断後に落下しないよう階下から支保工で支え続ける必要があり、その設置・撤去作業が大きな負担となります。今回の工事では斜めにスラブを切断できる「斜め切断カッター」を開発しました。これにより、切断後から隣接するスラブが荷重を支えるため、階下にスラブの落下を防ぐ支保工を存置する必要がなく、先行して下層階の床解体に着手することが可能となり、エ期短縮を実現します。

新工法を実現させる新技術

スラブ切断兼吊上げ治具新開発
4点自動吊上げ装置新開発
ジッパー付外周シート

新しい工法で挑むこの工事には、鹿島の知見を生かしたさまざまな新技術が採用され、効率的な施工に寄与しています。「スラブ切断兼吊上げ治具」は、スラブの切断時に必要な荷重受けの機能と、吊上げる際に必要な曲げ破壊を防止する機能を兼ね備えた治具。本治具を用いることで、ブロックを大型化でき揚重回数の削減につながるなど、作業効率が向上します。「4点自動吊上げ装置」は、重心がブロックの中心にない大割ブロックを、水平な状態で揚重するための装置。本装置により作業員の高所作業を低減するとともに、地上階に吊下す際の大割ブロックの姿勢を遠隔操作で制御し、安全な姿で着地させることができます。また、搬出作業時間も短縮されます。「ジッパー付外周シート」は、超高層建築特有の強風対策として採用。強風が予測される際は速やかにジッパーを開け、風圧を低減します。

工期短縮5日で1サイクル

せり下げ足場に囲われた最上階での作業。2,500m²の1フロアを「スラブユニット」「大梁ユニット」「鉄骨ユニット」「外周ユニット」「コア部ユニット」の極力大型のブロックに割り付け、解体・吊り下ろしを行う工程を組みました。通常7日間かかる1フロアを5日間で解体する効率的な工法により、工期短縮を実現。超高層ビルを安全かつシステマティックに解体します。ユニットの割付と切断・吊り取りステップは建物の構造解析を基に検証。万が一地震等の災害が起きても安全に解体工事を進めることができます。

未来を創る高層ビルの環境配慮型解体

スラブ切断ノロ水脱水装置
CO2削減型の溶断

コンクリート床をカッターで切断する際に発生する「ノロ」。コンクリートの粉末と水が混ざった汚泥です。産業廃棄物のため適切に処理する必要がありますが、「スラブ切断ノロ水脱水装置」でろ過・脱水することで固化させ、廃棄物量を削減します。さらに、ろ過・脱水後の排水を循環させ、切断作業で再利用します。溶断には水素とエチレンの混合ガスを使用します。これによりCO2発生量はアセチレンから約70%、プロパンガスから約85%削減可能です。

本工事における環境シミュレーションの結果

鹿島スラッシュカット工法® 在来工法
粉塵

建物頂部では粉塵飛散を伴う作業が無いため、粉末飛散がない

建物頂部に解体重機を載せて躯体を粉砕するため、粉塵発生量と拡散量が多い

飛散量 0mg/sec 飛散量 40mg/sec
騒音

建物頂部に騒音発生源の解体重機がないので上方から騒音が発生しない

建物頂部で稼働する重機が多いため、上方から近隣ビルに騒音が伝播しやすい

0db 18.9db
CO2排出 建物を大割ブロックで切断する工法のため、重機稼働台数が少ない 躯体を粉砕する解体重機と解体材を集積する重機が必要

ホーム > 技術とサービス > 世界貿易センタービルディング解体 > 技術