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プレスリリース

[2016/10/27]

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PC構造物の施工管理、維持管理に資する
「光ファイバーを用いたPC張力計測システム」を開発

~東北復興支援道路 相馬福島道路 月舘高架橋に適用~

 鹿島(社長:押味至一)は、光ファイバーを用いたひずみ計測技術を応用し、PC(プレストレストコンクリート)に使用するPCケーブルの張力を計測する技術を、住友電工スチールワイヤー株式会社(兵庫県伊丹市、社長:鳥井博康)、ヒエン電工株式会社(大阪市、社長:山鳥剛裕)と共同で開発しました。
 この計測技術を、国道115号月舘高架橋上部工工事の内ケーブルと外ケーブル(※)に適用し、PCケーブルの緊張作業時の張力、ならびに定着後や施工完了後の導入張力(コンクリートを圧縮する力)の分布まで、現場で精度よく計測できることを確認しました。
 本技術を適用することで、従来困難であったPCケーブルの張力管理を、施工時から維持管理まで的確に行うことができるため、PC構造物のより確かな品質確保に向け、幅広く展開していきます。

※内ケーブル・・・コンクリート内に埋設し緊張するPCケーブル。
 外ケーブル・・・箱桁の内側などで、露出した状態で緊張するPCケーブル。エポキシ樹脂やシース管(ダクト)で
 被覆して、錆などを防ぐ。

国道115号月舘高架橋上部工工事 PCケーブル緊張作業時(2016年1月撮影)

国道115号月舘高架橋上部工工事 PCケーブル緊張作業時(2016年1月撮影)

開発の背景

 PC構造物の品質と耐久性を確保するためには、施工時に所定の張力がPCケーブルへ確実に導入されるとともに、供用中も必要な導入張力が維持されていることが重要です。従来、施工時には油圧ポンプの圧力値とPCケーブルの伸びから張力を間接的に評価する手法しかなく、さらに定着後においては、PCケーブル全長にわたって導入張力を計測する手段が確立されていないという課題がありました。
 そこで、鹿島など3社は、20年以上の実績をもつ光ファイバーによるひずみ計測技術に着目、光ファイバーとPCケーブルを一体化することで、PCケーブルの張力を任意の位置で直接計測できる技術を開発しました。
 また光ファイバーを人が出入りできる場所まで延ばしておけば、供用後も随時、導入張力の計測が可能となり、PC構造物の維持管理の高度化、効率化にも寄与します。

光ファイバーによるひずみ計測技術

 光ファイバー内に入射した光は伝播しながらあらゆる方向に散乱しますが、この散乱光の波長は、光ファイバーに生じているひずみによって変化します。そのため散乱光を分析すれば、光ファイバーがどこでどの程度ひずんでいるか、その位置と大きさを把握することができます。

本技術の概要

 本技術は、PCケーブルの製作工場で光ファイバーをあらかじめPCケーブルの全長にわたって組込み、一体化します。この一体化したPCケーブルを緊張した際、光ファイバーに生じるひずみを計測することで、張力の分布を評価します。
 今回、PCケーブルに光ファイバーを直接組込むタイプ(裸線型)と、内部充てん型エポキシ樹脂被覆PCケーブルの被覆内に光ファイバーを埋設するタイプ(ECF[Epoxy Coated and Filled]型)の2種類を開発しました。なお両タイプ共に、橋梁への適用を想定した各種実験により、その計測性能を確認しています。

計測技術のイメージ図

計測技術のイメージ図


光ファイバー組込み式PCケーブル

光ファイバー組込み式PCケーブル

適用事例

 国道115号月舘高架橋上部工工事のP1橋脚の内ケーブル(延長約13m)およびP1-P2間の中央連結下床版ケーブル(延長約36m)に裸線型、P2-P4間の外ケーブル(延長約183m)にECF型のケーブルを適用し、緊張作業時の張力、ならびに定着後の導入張力の分布を計測しました。この結果両タイプともに、PCケーブルの全長にわたって張力の分布が精度よく計測できることが確認されました。またP1橋脚の内ケーブルでは、光ファイバーを定着部から箱桁内部まで延長し、供用中でも計測できる位置にて再計測を行ったところ、PCケーブル全長にわたって導入張力の分布を計測でき、維持管理にも適用できることが確認できました。

計測結果の例

計測結果の例


光ファイバー組込み式PCケーブルによる計測状況(P1橋脚 内ケーブル)

光ファイバー組込み式PCケーブルによる計測状況(P1橋脚 内ケーブル)

今後の展開

 本技術を利用することで、従来困難であった定着後のPCケーブル全長にわたる導入張力の分布計測が可能となりました。PC構造物の健全度を効果的に把握できるため、維持管理、さらには大地震発生後の二次被害の防止や応急復旧対策にも大いに寄与するものと考えています。
 また今後は、斜面や法面の崩壊防止に用いるグラウンドアンカーへの応用も視野に、さらなる開発を進めてまいります。

工事概要

工事名  : 国道115号月舘高架橋上部工工事
発注者  : 国土交通省 東北地方整備局
工事場所  : 福島県伊達市月舘町御代田字扶桑畑地内
工期  : 2014年9月5日~2016年10月31日
施工者  : 鹿島建設株式会社
工事諸元  : PC6径間連続ラーメン箱桁橋 延長462m

プレスリリースに記載された内容(価格、仕様、サービス内容等)は、発表日現在のものです。
その後予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。

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